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ECサイト運営の鍵!Paul Smithが示すプラットフォーム選定の重要性

オンラインショップを立ち上げる時、必要となってくるのがECプラットフォームです。

ECプラットフォームとは、オンラインのショップを作る上での土台となるシステムです。
ECプラットフォームに売りたい商品の写真や名前、商品の説明、色やサイズなどのバリエーション、価格などを登録して初めてオンラインで商品を売ることができます。
購入者が商品を購入した際の決済方法を設定したり、返金・返品処理の管理、配送業者と連携して商品発送の管理などもおこなえるのが、ECプラットフォームです。

最近は実に様々なECプラットフォームが提供されています。
売りたい商品のジャンル、どんな購入者層をターゲットにしたいか、日本国内だけに売るのか海外にも売りたい(越境EC)のか、自社サイトだけでなく他のECモールにも紐づけて販売したいかどうか、利用料金や手数料の値段…などなど、それぞれの特徴を吟味して、自身、もしくは自社の商品や希望に合ったECプラットフォームを選ぶ必要があります。

今回は、日本でもお馴染みの英国アパレルブランドPaul Smith(ポール・スミス)が、ECプラットフォームを一新したニュースを紹介します。



Paul Smith、Eコマースとデジタル卸売のカットを一新

出典:DIRECT COMMERCE

イギリスを代表するデザイン会社、Paul Smithは、ファッションとライフスタイルに特化したEコマース・プラットフォーム、Centra(セントラ)と提携し、オンラインDTC(*1)、デジタル卸売、実店舗の垣根を取り払い、シームレスでグローバルなブランド・プレゼンスを確立する。

グローバルな視野を持つ英国企業であるPaul Smithは、ノッティンガムの小さなショップから始まり、現在では世界60カ国以上に130以上の店舗を構えるまでに成長した。

Paul Smithは2022年にデジタルフラッグシップを変革し、エージェンシーパートナーのLimesharpがデザインしたヘッドレスフロントエンドに移行し、店舗でのショッピング体験を模倣した、ブランド表現とストーリーテリングに富んだオンラインストアを構築した。しかし、商品ページ以外のカスタマー・エクスペリエンスは、チェックアウトに時間がかかるなど、平坦なものではなかった。一方、Paul Smithチームは、既存のEコマース・プラットフォームのせいで、ビジネスの合理化とスケーリングにいくつかの課題を抱えていた。

当初、マルチソースの在庫とグローバルな店舗からの出荷を可能にする受注管理ソリューション(OMS)(*2)を探していたPaul Smithのデジタル部門責任者であるHannah Bennett氏は次のように説明する。

「OMSソフトウェアへの投資を検討していましたが、プラットフォームをアップグレードする必要があり、開発チームがその機能を構築してサポートする必要があることに気づきました。私たちはファッション・ブランドですから、ソフトウェアの構築やメンテナンスではなく、ソリューションの統合が必要なのです。

Centraを検討する際、サードパーティのロジスティクスとサプライチェーンを統合するOMSが即座に決め手となりましたが、ホールセールの管理方法を統合し、ロイヤリティやVIPプログラムで市場を拡大し、新しい言語や通貨を以前よりもはるかに迅速に導入することができ、そのすべてを1つのサイトと一元化されたシステムで行うことができるなど、運用面でのトータルパッケージが採用を決定づけました。」

当初はDTCのみにフォーカスしていたCentraへの移行は、Paul Smithのデジタルビジネス全体の総点検へと変わった。Paul Smithの何千ものグローバルホールセールパートナーは、Centraのデジタルホールセールショールームにアクセスできるようになり、個々の価格設定、グローバルな税金計算、配送管理など、DTCと同様の消費者向けショッピング体験を通じて、購買プロセスを近代化することができるようになった。 すべてのB2BオーダーがCentraを経由するようになり、エンドツーエンドプロセスが高速化されたことで、Paul Smithは開発リソースをEコマース開発に振り向けることができるようになった。

Paul Smithの商品データチームは、CentraのPIM機能(*3)によって、よりリッチな商品説明の作成や、コアとなる商品アトリビューションの再設定に集中することができるようになり、より早く商品を市場に投入することができるようになった。さらに、Paul Smithは、マルチマーケットに対応できる拡張性を備えているため、新しいマーケット用に新しいストアビューを作成する必要がなく、コンテンツの重複をなくし、ローカライズされた通貨、言語、支払いオプションによって、カスタマーエクスペリエンスを向上させることが可能になった。

サイトのスピードと信頼性も向上した。Paul Smithは、2024年4月にDTCチャネルを稼動させて以来、ダウンタイムを経験していない。同社は現在、サイトがクラッシュすることなく、販売期間の最大化に集中することができ、商業性の向上に最大限の力を注いでいる。

さらに、リプラットフォームによって、開発チームはメンテナンスから機能強化へと移行することができるようになったとBennet氏は説明する。

「チームはもはやプラットフォームのメンテナンスに時間を費やしていません。システムをアップグレードして管理するだけで、年に2、3か月はかかっていましたから。今はメンテナンスよりも、新機能や製品の強化に集中しています。」

今後、CentraのOMSは、実店舗ネットワーク全体でグローバルなShip-from-Storeソリューションを導入するために使用され、顧客ができるだけ迅速かつ持続的に最寄りの店舗から注文を受け取ることを可能にする。

Source:Paul Smith refashions the cut of its eCommerce and digital wholesale(DIRECT COMMERCE)

*1:Direct to Consumerの略。メーカーが中間流通を介さず自社のECサイトなどを通じ、商品を直接消費者に販売すること。
*2:Oder Management Systemの略。注文を受けた時、どの在庫拠点からいつ出荷するか、商品の受注から配送までを一括管理できるシステム。
*3:Product Information Managementの略。商品情報管理。製品をさまざまな流通チャンネルで販売するために必要なすべての情報を管理するプロセスまたは関連するソリューション。

おわりに

今回Paul Smithが採用した新しいECプラットフォーム「Centra」は、主にアパレル系ブランド商品のオンラインストア構築と運用を得意としています。

Paul Smithは、それまではMagento 2というECプラットフォームを利用していました。
しかし、システムの構築や運用には四苦八苦していたようです。
Paul Smithの社内開発チームは、サイトのメンテナンスとプラットフォーム内のカスタム機能の構築で手一杯で、時間の経過とともに広がっていくUX(*1)とUI(*2)のギャップに対応する時間もスキルもありませんでした。

*1:ユーザー・エクスペリエンス。ユーザーが商品やサービスを通じて得られる体験。
*2:ユーザー・インターフェース。Webサービスやアプリケーションなどでユーザーの目にふれるすべてのもの。

また、ストアで世界中のユーザーにサービスを提供する上で、Magentoでは複数のストアフロントを構築する必要があり、コンテンツも重複していたため、ローカライズが困難でしたが、それぞれの通貨や支払い方法の切り替えが簡単になり、個々の市場で完全にローカライズされたショッピング体験を提供できるようになりました。

さらに、Paul SmithはB2B(Business to Business)の卸売にも力を入れたかったため、今回のECプラットフォームの一新でB2Bにもスムーズに対応できたようです。

新しく生まれ変わったPaul Smithのオンラインストアでは、ECプラットフォームCentraに以下のテクニカルスタックが構成されています。

・ECプラットフォーム:Centra
・卸売プラットフォーム:Centra
・フロントエンドパートナー:Limesharp
・フロントエンドフレームワーク:Nuxt
・CMS:Storyblok
・決済方法:Adyen
・デリバリーエクスペリエンス:Ingrid
・メール自動化とCRM:Klaviyo

今回の内容は、Magentoが悪いという意味ではありません。
Magentoは世界で3番目に利用者が多い、人気のECプラットフォームの1つです。

ただ今回は、MagentoではPaul Smithが思い描いていたオンラインストアが運用できなかったというわけですね。
ECプラットフォーム選びは、本当に重要ですよ。


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