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Alibaba傘下の南アジアEコマース大手Daraz、メモで人員削減を発表

アジアのEC市場といえば、世界的に注目されるのはやはり中国。
次いで日本、韓国、台湾といった、いわゆる極東地域です。
ここ数年EC市場の成長がめざましい東南アジアもよく話題に上がります。

今日の話題は南アジアです。
仕事柄、世界各国のEC情報にアンテナを張り巡らせていますが、南アジアは盲点でした…。
自分、まだまだ修行が足りません…。


どの国が南アジア?

南アジアとはどの辺りの国をさすかご存知ですか?
外務省によると、南アジア地域はインド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブの7か国のようです。ちなみに世界銀行では、この7か国の他にアフガニスタンを加えて8か国としています。

パンデミック前の2019年の情報ですが、南アジアのEC事情について調査したレポートを見つけたので、まずはこのレポートをベースに南アジアのEC事情をざっくりおさらいします。
とにかくパンデミックは、世界各国でEC市場を急激に成長させた、いわゆる起爆剤でした。そのためパンデミックの前と後で状況は大きく変化していることを念頭に、以下、ご参考までにご覧ください。

南アジアのEC事情(2019年時点)

インドはEコマース企業にとって約200億ドル規模を誇る最大市場のひとつに浮上した。この地域では多くの国内新興企業も台頭しており、この分野で非常に好調な業績を上げている。インドのオンライン市場では、Flipkart、Amazon、Snapdealが大半のシェアを占めている。

パキスタンのEコマース市場は、主にAlibabaや Darazのような国際的大手がサービスを提供している。 30歳以下の若い世代が65%を占め、技術的な知識を持ち、インターネットの普及率が高まっていることが、パキスタンの買い物行動に革命をもたらしている。

バングラデシュの消費者は、オンライン・ショッピングのニーズに対して、ソーシャルメディア・ウェブサイトのFacebookをより多く利用している。バングラデシュのEコマースの業界団体であるバングラデシュEコマース協会(e-Cab)は、2017年にはFacebook上に700のEコマースサイトと約8,000のEコマースページがあると推定している。バングラデシュの主要なEコマース・プレーヤーは、Daraz Bangladesh、bikroy.com、clickbd.com、bagdoom.comである。

スリランカ市場は、Kapruka.com、Daraz.lk、WOW.lk、Takas.lk、MyDeal.lkなどの企業が支配している。注目すべきは、Darazを除けば、他はすべて自国企業であり、すべてB to Cの形式で運営されていることである。現在、スリランカでは企業間電子商取引のウェブサイトは運営されていない。また、AmazonやAlibabaといったグローバルなEコマース・プレーヤーは、スリランカには進出していない。

ネパールはEコマース分野の歓迎において近隣諸国に遅れをとっている。ネパールのオンライン・スペースで事業を展開しているのは、ほんの一握りのプレーヤーにすぎない。ネパール人はオンラインで商品を輸入することが認められていない。しかし、オンライン販売の成長を促進する様々な指標は、ネパールでは小幅ながら機能している。

E-commerce and Developing Countries: The South Asian Experience(eTrade for all)

南アジア地域のEC成長率は国によって大きく異なり、先進的な技術を持ち、市場が大きく成熟しているインドが非常に速く広く成長できているのに対し、他の国々は大きく遅れをとっています。

インターネットの通信速度は、満足できるレベルにはほど遠い地域が多く、Eコマース分野の障害となっています。インターネットやモバイルの利用における男女格差や都市と農村の格差も懸念事項のひとつと言えます。
南アジア諸国は、長年にわたって成長を続けてきたにもかかわらず、Eコマース業界を規制し、買い手と売り手の利益を守るための包括的な政策を持っていない場合が多く、特にネパールやスリランカのような小国では、デジタル・インフラの強化に多くの取り組みが必要です。

南アジア最大のECプラットフォーム「Daraz」とは

さてそんな南アジアですが、上記の各国のEC利用状況で、個人的に目新しい名前を見つけました。

それはDaraz

例えば東南アジアでポピュラーなECプラットフォームというと、ShopeeやLazadaですが、Darazは知りませんでした。

Daraz(ダラズ)は、ドイツに本社を置くRocket Internet社により2012年にパキスタンで設立されました。
パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、ネパールの主要EC会社に成長し、2015年からAndroidおよびiPhoneユーザー向けのモバイルアプリサービスを開始しています。
Darazでの取扱い製品は、家電製品、家庭用品、美容、ファッション、スポーツ用品、食料雑貨など多岐に渡り、代金引換を含む複数の支払方法を提供しています。

Darazは2018年に中国のAlibabaグループに買収され、現在はAlibaba傘下でサービスを提供しています。

ちなみにAlibabaがRocket Internet社からECプラットフォームを買収するのはこれが2度目で、1度目は2016年のLazadaでした。

おさらいがだいぶ長くなりました…。
さて、それでは本題です!

Alibaba傘下の南アジアEコマース大手Daraz、メモで人員削減を発表

Alibaba傘下のECプラットフォームDaraz Groupは、「より合理的で機動的な構造を採用する」ため、グループ全体の人員削減を発表した。臨時最高経営責任者(CEO)のジェームズ・ドン氏は火曜日、ロイターが見た従業員への社内メモの中でこう述べた。

このメモには、人員削減の影響を受ける従業員の数については触れられていない。Darazは、パキスタン、バングラデシュ、ネパール、スリランカ、ミャンマーでの事業で影響を受ける従業員の割合や絶対数についてはコメントを避けた。

「不本意ではあるが、Darazファミリーの多くの大切なメンバーに別れを告げることになる」と、従業員へのメモには記されていた。

昨年、Darazはロイターに、Eコマース市場が厳しい市場環境、ウクライナ危機、サプライチェーンの混乱、インフレの高騰、税金の上昇、政府補助金の減少などの要因により従業員を11%削減する前に、同社の地域全体で3,000人を雇用していたと述べた。

「さまざまな解決策を模索する努力にもかかわらず、我々のコスト構造は依然として財務目標を下回っている。市場において前例のない課題に直面しており、事業の長期的な存続と継続的な成長を確保するためには、迅速な対応が必要だ」とドン氏は述べた。

また、付加価値の高い商品を多様化し、商品カテゴリーを拡大し、プラットフォーム上の販売者の業務効率を改善することで、消費者体験を積極的に向上させることに注力する予定であると付け加えた。

Eコマース・グループは1月、退任したビャルケ・ミケルセンCEOの後任として、ジェームズ・ドン氏を暫定CEOに任命した。

パキスタンとバングラデシュは同グループにとって最大の市場だと、退任するミケルセンCEOは昨年述べている。

2012年にパキスタンでオンラインファッション小売業として設立されたDarazは、その後2018年に中国のインターネット大手Alibabaに買収された。

同社はEコマース、物流、決済インフラ、金融サービスの4つの主要分野をカバーしている。3000万人以上のバイヤー、20万人のアクティブなセラー、10万以上のブランドを抱えていると同社はロイターに語った。

Source:Alibaba's South Asian e-commerce giant Daraz announces layoffs in memo(Reuters)

おわりに

先述したように、パンデミック以降、世界各国のEC市場は急激に成長しています。
しかしそれは単に、様々なECプラットフォームが急増しているということだけではなく、それに追いつくべく、特に今までインターネットや物流インフラが整っていなかったいくつかの国や地域が国を挙げてそれらの整備に力を入れ始めています。
それでもまだ追いつかない国や地域は存在します。

また一方で、数多あるECショップは、今も世界のどこかでNew Openすると同時に淘汰され、Closeしていくのも目まぐるしく繰り返されています。

世界銀行は今年1月、「Global Economic Prospects」の中で、南アジア地域の2023年の実質GDP成長率(推定)を5.7%と発表し、前回(2023年6月)の見通しから0.2ポイント下方修正しています。また、今後の見通しについては、2024年の成長率がわずかに鈍化し5.6%になると予測しています。

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