マコイが描く『わたしのぼうし』ーー大人の読書感想画展#6
今回ご登場いただくのは、マコイさん。
イラストレーターとして活躍され、書籍の装画でも人を惹きつけるマコイさんの絵の魅力は、その大胆でおおらかな構図の貼り絵。ほとんどの場合、下書きなしに、おもいつくままに紙を選んで切っていくそうです。
マコイさんが今回選ばれた絵本は『わたしのぼうし』(佐野洋子・作・絵 1976年刊)。
子どもにとってかけがえのないものとの別れを、透明感のある独自のタッチで詩情豊かに描いた本作は、『100万回生きたねこ』で知られる佐野洋子さんの初期の代表作です。1976年の刊行後、小学校の教科書にも掲載され、長く読み継がれてきました。実はこの絵本、今年の6月、46年の歳月を経て、装い新たに刊行されることになりました。原画全点を高精細の機械でスキャニングし、現在の印刷技術で木漏れ日のようなやさしい色彩をより美しく再現しました。
(内容)
わたしは、赤い花のついたお気に入りのぼうし、おにいさんは青いリボンのついたぼうし。ふたりはどこに行くときも、ぼうしをかぶっていました。
ところがある日、わたしのぼうしが、汽車の窓から飛んでいってしまい……。
大切なものを失い、新しいものをすぐに受け入れられない女の子と同じような気持ち、みなさんも一度は抱いたことがあるのではないでしょうか。女の子の揺れ動く気持ちを感情豊かに描いた本作。マコイさんは、どのように感じられたのでしょう。
マコイさんの感想画とコメントはこちらです。
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ーマコイさんの作品とコメントー
わたしには、2つ年上の兄がいて、絵本の兄妹のように、どこに行くのも一緒でした。特に虫捕りによく行きました。それで、子どもの頃この絵本を見た時、まるで自分のようだ!と、ドキドキしてずっと記憶に残っていました。何回も虫捕りの場面が出てきて嬉しく思いました。
夏休みに高原に旅行に行った夜、兄は網を持って虫捕りに出かけました。わたしは夜で連れて行ってもらえなかったので、うらやましい思いで、林に消えていく兄の後ろ姿を見送りました。絵本の中のお兄さんの後ろ姿と、私の兄が重なるのです。その時の事を絵にしています。(絵の右側です)
黄色いちょうちょが女の子の新しい帽子にとまるシーンは、
『あなたの帽子 素敵よ』そう言っているようで、印象的でとても好きです。
大切なお気に入りのものを、不覚にも失くしてしまう時、わたしは大人ですが、がっかりくよくよして、女の子のように大きくうなだれてしまいます。
でも、楽しい事も、ちょっぴり怖かったけど大丈夫だった事も、びっくりした事も、女の子のように、経験や記憶はいつまでも色あせない思い出として残っているのです。
だから、その事を忘れないで、いつまでも悲しまないで、顔を上げて元気を出してね、そんな風に、背中をそっと押してくれるように思える絵本です。
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佐野洋子さんにも大好きなお兄さんがいらしたとか。この絵本は、ぼうしとの思い出、お兄さんとの思い出、いろいろな思い出が折り重なって、見ている私たちの心に響くのかもしれません。
マコイさん、素敵な作品をありがとうございました!