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知れば絵本の魅力2倍増し! 石黒亜矢子『ねこまたごよみ』制作裏ばなし&裏設定集
2月22日「ねこの日」は盛大なパレードでお祝いし、弥生にはおひにゃさまの座をきそう「ひにゃまつり」。霜月には「またたびまつり」を楽しんで、師走には目玉チキンで「クリスニャス」!
そんなとびきり奇妙で愉快な、妖怪・ねこまたの1年を描いた絵本が誕生しました。石黒亜矢子さん作・絵、『ねこまたごよみ』です。
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この絵本の刊行を記念して、石黒亜矢子さんにインタビューをさせていただきました!
どうやって描いているの? などの制作裏ばなしと、絵本がもっとおもしろくなる絵本裏設定の2本立てです😽∬
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石黒亜矢子(いしぐろあやこ)
1973年、千葉県生まれ。絵描き。妖怪や創造の生き物、動物を好んで描く。
著書に『ばけねこぞろぞろ』(あかね書房)、『いもうとかいぎ』(ビリケン出版)、『えとえとがっせん』(WAVE出版)、『どっせい!ねこまたずもう』(ポプラ社)、『おろろんおろろん』(偕成社)、『つちんこつっちゃん』(好学社)などがある。
国内外で、個展も精力的に開催。二児の母。愛猫家だが、今は爬虫類に夢中。さらに実は、子犬にも興味津々。
聞き手:ポプラ社 担当編集 上野萌
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◎制作裏ばなし のまき
①絵本の構想とラフづくり
――今回の作品、実は元絵があるんですよね。
そうでしたね。その絵で作ったファイルがあって、それを見た上野さんが「この絵本が読みたい」と言ってくれて。それなら描けそうだぞ、とイメージが広がりました。
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師走「クリスニャス」や、長月「じゅうごにゃ」の絵の元になっています
あともともと、かこさとしさんの『くまちゃんのいちにち』のような幼児向け生活絵本を…というスタートだったこともあって、この作品のように「とにかく登場する物に細かく名前をつけたい」というのも、頭の中にありました。
結局、赤ちゃん絵本とはぜんぜん違う方向になりましたけどね!
――このいちいち入っている言葉が、この絵本のミソですよね。ちょっと人間の物とは違いすぎるものもありますけど……。
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あくまでもねこまた界の話なんで。ねこまたの世界ではこれが「たけのこ」なんだなと思って笑ってもらえたらいいと思います!
――今回の絵本は、ねこまたの五つ子ちゃん家族を主人公に進んでいきます。おかあさん・おとうさん・五つ子ちゃんもみんな性格がちがって、その違いを眺めるのも面白いのですが…もしかしてこれは、石黒さんのご家族がモデルなのでしょうか?
それ、すっごくいろんな方に言われるのですが、全く意識していませんでした! でもたしかに、ねこまたとうさんは伊藤(漫画家の伊藤潤二さん)に似ているかも……? イメージはサザエさんのマスオさん。活発なお母さんと心配性のお父さんです。
②つづいて楽しい鉛筆下絵!
――全体のコンセプトや流れが決まったら、「下絵」に入っていただきました。すべて鉛筆で書かれていて…はじめて拝見したとき、細かさに仰天しました!
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この下絵が一番、楽しいんですよね。
かなりの時間をかけて、猫又家族の12か月をじっくり順に描いていたら、子どもだった自分と両親との記憶がどんどんと蘇ってきました。
夏休みのことや、下校途中の金木犀のにおいや、学校での防災訓練とか……。部活の球拾いのときに、ぼんやり入道雲を眺めていた時妄想していた「空魚」を、文月に登場させたりもしました。
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――「ひにゃまつり」は実は「おひにゃさまコンテスト」を兼ねていたり、微妙に人間と違うのがこの作品のおもしろさですが、こういった設定はどの段階で考えていらしたんですか?
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うーん、もう完全に描きながら、ですね。月ごとの行事や植物・食べ物のリストをもらったので、それをも元にしながら、その場で思いついた物を追加していきました。
前段階のラフのときに、だいたいここにこれを配置しよう…というのはふわっと決めておいて、下絵で細かく描き込んでいく感じです。
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③ついに墨入れと着彩。これが大変!
このあとはただただ、つらかったですね(笑)もうあとは、下絵をなぞっていく、という作業になるので。半分写経してるような気分になりました。
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絵本実寸よりかなり大きく描かれています。
画材は墨と水彩絵の具と顔料
細かい描き込みがされた季節の絵本や図鑑的な絵本は昔から大好きですけど、自分がやるとなると話は違いますね。こんなに大変な絵本になるとは…! だって最初はシンプルな赤ちゃん絵本としてスタートしていたのに、気づいたらどんどん描き込みが増えていました。
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――各月それぞれ変化があって、最初に原画を拝見したときは、想像以上に色鮮やかで驚きました。とくにカバー絵は、表紙から裏表紙まで繋がっていて、1枚絵としても本当にすばらしいです。
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――実はこのカバーについては、今回デザインいただいた大島依提亜さんから「絵本の中の描き込みが伝わる表紙がいいよ」とご意見をいただいて、当初の案から大きく変わったんですよね……!
今思うと、ほんっとうに変更してよかったですよね! 表紙を一番に描いちゃったから、ぜんぜん中身と雰囲気違うし…(笑)
中の雰囲気を出すならばと、本の中に登場するねこまたたちを散らばらせて、そして季節感を出すために、桜とか紅葉とか行事の小物を入れていったら、自然に賑やかになりました。
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これはこれで妖怪っぽさが出ていて素敵ですが、ぜんぜんちがう雰囲気になっていたかも⁉
――では最後に、読者のみなさんへのメッセージをお願いいたします!
この絵本はとにかく頑張って描きました。なのでぜひいろんな人に見ていただきたいです。
子どもは楽しく、大人は懐かしい気持ちに浸れる絵本になったのではないかと思っているので、自由に想像して読んでもらえたらと思います!
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◎絵本裏設定 のまき
さてここからは、Twitterの『ねこまたごよみ』公式アカウント(@nekomata_goyomi)でも投稿していた絵本の裏設定。
この場でも改めて、お聞きしちゃいます!
細かい絵のひとつひとつに、実はいろんな「裏」が秘められているのが、石黒さん作品の魅力……。
石黒さん曰く「その場で思いついただけ」ということですが、ちょこっと登場しただけの子にも、いろんな背景があると思うと…楽しくないですか?
この裏設定話だけでも十分おもしろいですが、絵本とあわせて読んでいただくと一層世界観を楽しんでいただけると思います!
①毎月ひそんでいる「月猫又」
「各月を司る猫又です。町内会長みたいな役割かな。1年間烏帽子をかぶる以外は、ふつうに生活しています。でももし妖怪が襲ってきたら、率先して戦わなきゃいけないというミッションを持っているので、実は命がけです」
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右上から左横へ順に、1月~12月を司る、普段着の月猫又たちです
②毎月登場する忘れんぼ
「クラスにもいますよね。ついついなくしたり、忘れたりしちゃう子。言われたこともすぐ忘れちゃう。でもおっとりしていて憎めない子です」
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なくしものは、その月のどこかにちゃんと隠れていますよ
③床下の大猫
「床下に、いい具合の隙間があると出没するあやかしです」
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④梅雨のオタマガエル
「梅雨の時期、カエルになりきれず巨大化したオタマガエルが出没します。いつもお腹が空いていて油断するとパクリと食われてしまうので要注意」
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⑤屋台の鬼
「顔がない方が前を向いている時は安全ですが、顔がある方が前を向いた時には要注意です」
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⑥九尾の狐のお面売り
「白と赤はいいけど、黄色い狐のお面を買うと、狐が憑依しちゃいます。」
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⑦かえるとび
「かえるのジャンプにあわせて、タイミングを合わせてうまくとばないと飲み込まれます。」
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⑧消防エレファント
「頼もしいレスキュー3にゃん隊をお手伝いしている象さん。やれるのは火災の消火だけじゃないぞ! 瓦礫の下敷きになったねこまたも、そのpower trunkで助けてくれます」
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⑨食猫植物
「ねこまたの好きなにおいを漂わせて誘い、パクリといくので要注意です」
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⑩ねこまた界の植物
「いちょうは古代からある木なので埴輪っぽく。きんもくせいは中性的。
ひまわりは夜行性で、夜になると目が光ります」
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⑪ライオン丸
「樽のお腹の中で熟成されたまたたびジュースを口からと吐き出して、ねこまたたちに提供しています。ジュースがライオン丸の唾液と混ざり合うことで芳醇な香りのジュースとなります」
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⑫ねこまた界のお肉
「ねこまたはもちろんお肉大好きです。妖力により蠢く肉を食します。滋養強壮作用があるいい肉ですが、普通の猫が食べたら妖怪化してしまうので要注意」
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⑬クリスニャスツリー
「クリスニャスツリーには、ネズミやスルメ、クッキーなどの本物の食べ物のオーナメントを飾ってあげてください。そうしないとお腹が空いてねこまたを襲う危険があるので、これも要注意です」
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⑭イエティ
「冬になると、雪山から街に降りて来ます。ねこまたを食べる習性はなく、案外なかよくやっており、安全です」
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いかがでしたでしょうか? みなさんにも、この愉快でおかしな「ねこまた」世界のとりこになっていただけたら嬉しいです。
石黒亜矢子さん、楽しいお話をありがとうございました!
★「ねこまたごよみ」公式Twitterでは、今後も「こよみ」にあわせて、ねこまたたちの姿をご紹介してまいります! よろしければぜひフォローお願いいたします😽∬
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★石黒亜矢子さん記事「ねこがたり」もぜひご覧ください!
(文・編集部 上野萌)