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「猫」は妖怪より描くのが大変! 絵描き・石黒亜矢子さんの「猫・化け猫・猫又」ばなし

猫って、不思議な生き物です。言葉は通じないけど、感情が伝わってくる。でも、何年一緒にいても、わからない部分がある。あの絶妙な距離感が、わたしたちを惹きつけます。
「猫の日」に向けて、その魅力を味わい尽くしたい。この特集では、そんなあなたのために、作家さんやポプラ社メンバーによる「ねこがたり」を一週間にわたってお届けします。

■連載第3回目は、絵描き・絵本作家の石黒亜矢子さん

一度目にしたら忘れられない独特の世界観と、おどろおどろしいようで、実はくすっと愛らしいキャラクターたちが、唯一無二の魅力を放つ作品を多数発表されています。
中でも、「猫」が登場する絵本やコラボグッズが大人気! そして日頃から、SNSでも愛猫をたくさん紹介されています。
これはぜひ、絵描き目線での「猫」についてお伺いしたい!  と今回、お願いしたところ、意外……でも納得な「猫・化け猫・猫又」にまつわる楽しいお話が伺えました。最後の描き下ろし絵も必見です!

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私は、いわゆる「普通の猫」を描いているようであまり描いていない。
モブではまあまあ登場させているが、メインで描く事は殆どないような気がする。猫メインの自著の絵本では『猫かるた』や『おおきなねことちいさなねこ』くらいではないだろうか。

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『猫かるた』岡林ちひろ・文 石黒亜矢子・絵

しかしこれも擬人化させていて普通の猫ではない。
反面、「普通じゃない猫」はそりゃもうたくさん描いている。
猫型妖怪の二大巨頭「猫又」「化け猫」だ。
「尻尾が分かれている→猫又」「分かれていない→化け猫」の違いしかわからないで描いている、永遠のにわか妖怪絵描きです。

作・絵の初絵本も化け猫が主人公のばけねこぞろぞろだし、近々では猫又最強力士が主人公の『どっせい!ねこまたずもう』だ。
ちなみに次にポプラ社さんから出る絵本はやっぱりまた猫又の家族が主役。

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左/猫又 右/化け猫 しっぽに注目!
(左/『どっせい!ねこまたずもう』 右/『ばけねこぞろぞろ』より)

さて、そんな私が「猫を描く時に大切にしていること」は、「化け猫みたいにならないようにすること」だ。
なぜなら、高確率で下記のような図式になってしまうから。

私のかっこいい=世間の怖い
私の可愛い=世間の可愛くない
私の綺麗=世間の気持ち悪い

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石黒さんの「化け猫」「猫又」たち
(上/『ばけねこぞろぞろ』 下/『どっせい!ねこまたずもう』より)

これが妖怪だと何の問題もないのだが、普通の猫となるとそうもいかない。
なので、一度仕上げた猫を時間を置いて何回も見て、ちゃんと可愛くなるまで眉間のシワを消したり、牙を隠したり、目を丸くしたりという描き直しの作業が生まれる。

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「普通(寄り)の猫」たち(『猫かるた』より)

普通の猫というのは、妖怪を描くより大変なのであった。
猫大好き!

ポプラnoteコラム

画・石黒亜矢子

■プロフィール

石黒亜矢子
1973年生まれ。千葉県在住。
妖怪や創造の生き物、動物を描く。
著書に『平成版 物の怪図録』(マガジンハウス)、『ばけねこぞろぞろ』(あかね書房)、『いもうとかいぎ』(ビリケン出版)、『おおきなねことちいさなねこ』(好学社)、『えとえとがっせん』(WAVE出版)『おろろん おろろん』(偕成社)『つちんこつっちゃん』(好学社)などがある。
2020年AKOMEYA東京でのコラボ商品を発売、グラニフで定期的にコラボTシャツを発表。
日本国内外で精力的に個展を開催、作品を発表している。
現在、オリジナルグッズの販売サイトも運営中。

■紹介書籍

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写真左上から
『ばけねこぞろぞろ』作・絵 石黒亜矢子(あかね書房、2015年)

『おおきなねことちいさなねこ』再話・絵 石黒亜矢子(好学社、2016年)

『猫かるた』文・岡林ちひろ 絵・石黒亜矢子(白泉社、2017年)

『どっせい!ねこまたずもう』作・絵 石黒亜矢子(ポプラ社、2018年)

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