帯広空港からの最終便③
☆ 雲海の朝
トマム星野リゾートの1番の目玉は、早朝に臨む雲海体験だ。前日の雲海予報は「40%」
「でもあまり予報は当たらないんです。もし出たら、早起きして行く価値は十分にあります。ぜひ!」
説明を受けた。
「ええっ朝4時起き!ムリ。私パスして良い?」
「一応行ってみようよ」
「嘘でしょ?」
いつもは寝坊の夫が、半分支度を済ませて私を起こす。
4時半。
「(雲海)見えるってよ」
「ん〜行くか…」
ロープウェイ乗り場までシャトルバスで5分。沢山の人が並んでる。スタッフもテキパキ笑顔だ。
「ここで働く人達は、なんてこんな早起きなの?」
久しぶりに乗るロープウェイは、想像以上に遥か先まで上がって行き、雲海を抜けた山頂の駅へと到着する。
ドンヨリ曇った朝だったのに、山頂の展望テラスは見事に晴れ渡っている。星野リゾートは、ここトマムをドラマティックの他では味わえない景観を声高に謳ってる。
寝ぼけ眼のままでも山頂に辿り着け、眩しい白い椅子が用意してある。手を伸ばすだけで、誰もが簡単に絶景が撮れる。
ここの雲海は、飛行機の上から見るのとはまた違う。もう少し低い位置に出る雲海は、山々をも取り込み、空と緑とを混じり透かせた何とも美しい光景を生む。
◎ 雲カフェ
◎ もっとワクワク
展望台から少し歩くと、インスタ映えスポットがある。
☆ レストランhaluの朝食ビュッフェ
10人の列に並ぶ。「絶対食べてください」スタッフのおすすめは大当たり。出来たてのローストポークの薄いスライスに、山わさびがこんもり。華やかで上品な香りの、何とも忘れられない丼でした。
バターってやつは本当に美味い。十勝バターは中でも高級品。既にお腹がはち切れそうでしたが、シメの一切れだけは外せない。ウットリしながら、珈琲と食す。
◎ 気球
緑の大地に気球は似合う。「うわぁ〜」見てるだけで気持ちが上がる。
☆ 十勝平野、士幌町へ
「やっぱり…どうしても行きたいな」
私が言い出し、トマムから十勝平野の士幌町へ。予定の帯広とは方向が全く違う。で、やはり遠い。東京ドーム358個分?その尺度、もう訳分からん。日本で1番広い公共牧場へ。
☆ ナイタイ高原牧場
道が合ってるのか、心配なまま走る。もうかなりの距離だ。すると突然、ナイタイ高原牧場の入口らしき看板があり、入る。
「やった〜」
「合ってた(ホッ)」
そこに、ザツな矢印看板
「 ⬅︎ ナイタイテラスまで10km」
えっ?牧場入口から10kmも行かなくてはテラスカフェにたどり着かない?
呆れながら走りだすと、まぁ素晴らしい、感動のパノラマドライブだ。ゆるいカーブとアップダウンが360度の黄緑の世界を案内するように誘い、まるで楽しませてくれてるみたい。よく知ってるんでしょう、ツーリングライダーたちも景色を堪能しながら優雅に走る。これぞ北海道、たまらない。来て良かった。おすすめです。
◎ ナイタイテラス
新スポット記事、いくらなんでも遠過ぎると軽く流し見してた。でも建築雑誌の情報って意外と外さない。感心。
整備された広い駐車場のベンチで楽しげに寛ぐおじさんライダー達も。
「良いとこだろ!(ナイタイテラスを指さし)こーんな洒落たの、前はなかった。アイスと、便所だけ。なーんもなかったんだから」と笑う。
公営の牧場なので、観光客誘致に大きな予算をかける決断がつかなかったんだと思う。地方あるあるで、やたらPR下手なので、まだ知名度は低く、採算は到底合ってないと思うが、でも素晴らしいものは素晴らしい。本物嗜好の観光客は、きっともっともっと来ます。
◎ 日本一美しい景色のトイレ
◼️ 帯広へ
この日の目的だった六花の森ガーデンへと慌てて戻る。高速道路で帯広までもかなり距離はあるが、帯広市街を通り越してまだ先へ50分?遠い、慣れたけど(笑)
☆ 六花の森ガーデン
六花亭と言えば、可愛い花の絵の包装紙でおなじみ、北海道を代表する銘菓。甘いもの好きの我家の六花亭への信頼度は厚い。(私達はもうそんなに食べられませんが)我家の若者たちに大人気のバターサンド一択で、よく購入。冷蔵庫を開ける度に娘たちはシビアに数をチェックしてます。
六花の森ガーデンは、比較的新しい施設で、この店名になって、包装紙にも描かれている六つの花(エゾりんどう・他、耳馴染みのない北海道の野花)を配した派手さのない庭園。その中に木造小屋がギャラリーとして点在し、訪れた人は素朴な庭を歩きながら見て回る。
ギャラリーは無人で、坂本直行という六花亭の包装紙の花の絵を描いた地元画家のデッサンや、登山の絵とかで展示は地味中の地味。包装紙の柄の派手な小屋だけは人気。
坂本氏は、北大で酪農を学び、趣味は登山と絵画。経営していた牧場を潰してしまった後、絵を描いてた時に、六花亭の社長からのちょっとした冊子の表紙絵を無償で引き受けて、その縁で社長から直々に自社の包装紙のデザインを任され大好評に。長年愛されるラッキーで(六花亭にとってもゲンのよい)稀有な画家だ。
◎ 六 'sカフェ
◎ 出来たてバターサンド
併設の工場(現在見学不可)が近くにある。六花亭ファン必見だ☆
◎ 六花亭ランチ
お腹が空いて、白く清潔感溢れるカフェで遅いランチタイム。
スイーツだけだと思ってたら、とても美味しい。旅の御馳走の豪華さに少し疲れていた私達にピッタリ。
夫は十勝牛のビーフシチュー、私は唐揚げ定食。醤油の味が立ったサクサクの唐揚げと、ジャガイモの食感が絶妙なポテトサラダ。
六花亭は、駅や空港はしかり、北海道の各所に店舗を構えていて、どこも繁盛している。だけど、北海道以外には店舗を出していない。出せば絶対繁盛するのは間違いないのに、そこは『北海道の六花亭』なのである。北海道土産には六花亭、誇りがあるんだな。全国のスーパーやデパート、物産展にオンラインではジャンジャン売りまくるが、地元帯広を愛し、北海道を愛す。有名絵画は買わず、地元の無名画家をサポート、全国区ビジネスとは一線をかくす。
あちこち行って気づいたのだが、六花亭はどの店でも、空港店でも、見てすぐにわかるような観光客にも必ず聞くのだ。
「お客さま、ポイントカードをお作りしますか。」
「えっ?は?(まさか?)いえ、結構です。」
ありえん(笑)でもいつになるかわからないけど、また来て欲しいのだ。全然あぐらをかかない六花亭にビックリ。我家の小さな株はグングン上昇。
(あ、順番が…後から帯広本店がまた登場します)
☆ 六花亭アート
ヴィレッジ・中札内美術村
のんびりしてたら3時など、とうに過ぎて閉まっていた。六花の森ガーデンから車で10分、六花亭が、中札内市と大林組とで作った美術村複合庭園。その地域に根ざした施設作りは日本建築学会賞(業績部門)に輝いた。カシワの林の中に北海道の画家達の美術館やレストラン、公園で構成されている美しい村だ。
見事に誰もいないウッディな村内を散歩していると、スタッフ発見。私は制止したのに(いつもは内気な)夫がキビキビ。
「あ、ちょっと聞いてみるわ」
六花の森で貰った《お楽しみプレゼント引き換え券》を渡しに行き、可愛い六花亭の保冷バッグを2つ貰ってニコニコ戻って来た。
「ほら」
「すご!」
◎ 六花亭・帯広本店
(帯広駅前通り)
またまた六花亭?そうです。パティシエを娘に持つ我家、ここまで来たら本店に行かないわけにはいきません。50分かけて市内に戻って、日曜で賑わう夕方の帯広繁華街に車を駐めて急ぎ足で向かう。
「あ、まだやってるぞ」
「うわ、間に合った〜」
先ほど貰った保冷バッグをむんずと出し、購入した生ケーキや和菓子をギュウギュウに詰めた。飛行機で東京まで無謀にも持って帰ろうと決めた。パティシエを含むスイーツ大好き娘たちの嬉しい悲鳴が、ただただ聞きたくて。
○ 2階のカフェ(間に合わず)
◎ ばんえい競馬場
後ろに荷物のようなソリをつけて走る、雪国の歴史や文化の見える荒々しくも素朴な競馬。全然別物、異文化の北海道だ。残念ながら、時間が足りず、レースは楽しめなかった。
○ 馬の資料館
○ とかちむら(競馬場内)
○ 道の駅(競馬場内)
じゃがいもが(多種)やたら美味しくて、箱で郵送すべきだった。(メロンしかなかった)デパ地下のとも味が違う。とうもろこしも買いそびれてしまって大後悔。
◎ 夜のとかち帯広空港
カーナビで空港のレンタカー屋まで向かう。ローカル空港の周りがこんなに暗いとは知らなかった。レンタカー屋の看板は見えるが、あまりに真っ暗で、入口が全くわからない。なんだかわけわからん空地でUターンして、ようやく無事返却。
20:35 JAL帯広発の最終便で、羽田空港まで。
羽田空港の外に出たのが22時半。夜だというのに、モワッとした息苦しいほど熱い空気が、全身を包む。この暑さ、思い出した。
「うっわ〜こんなだったっけ。もうマニラ(空港に間違って着いた)かと思った〜」
「やっぱり夏は北海道だ。全然違うな〜」
たった3日で、すっかり北海道に慣れていた。当たり前じゃなかった、爽やかな私たちの夏。
こんな年になっても、旅先で初めての感覚や驚きが沢山あった。経験する出会いは、ざわめきと共に心満ちるものだ。
また出かけよう。
いつも冒険者でいる自分を、ポケットに忍ばせて、時々確かめてはニヤニヤしながら歩いていたい。
①➕②➕③、長くかかりました。もうすっかり秋(苦笑)
読んでいただき、ありがとうございました。
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