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創作短編集

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私が書いた創作短編をまとめたマガジンです。 今後記事が増えたとき、こちゃこちゃするかもしれないと思ってまとめてみました。
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2023年8月の記事一覧

【短編小説】未熟な果実

 近隣地域の小学校に通っていた生徒を一堂に会して作られたようなコミュニティには「Y中学校…

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【短編小説】おふくろの味

 レストラン経営者のN氏は、昔懐かしの味をテーマにしたフェアをすることにした。題して「お…

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【短編小説】石膏像

 美術の授業は苦手だった。僕には小説の方が明らかに向いていた。美術室のど真ん中に居座る石…

5

【短編小説】ふさわしくなかった

 誰だって美人になれるという化粧品の謳い文句は嘘ではなかった。外見で物事を判断する男たち…

7

【短編小説】海、ひとりぼっち

 海の夢を見ました。海というのは僕の同級生だった女の子の名前です。当時はみんな、彼女のこ…

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【短編小説】見栄を張る #4

 こちらの続きです。 「ラスター!」  思わず声を荒げたノアだったが、ラスターは涼しい顔…

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【短編小説】見栄を張る #3

 こちらの続きです。  ラスターは細長い石を自分の指に添えるようにした。右の人差し指。ラスターの指よりも細く華奢だ。 「ドラゴンの中で、石化の術か何かを使えるやつは――」  ラスターの言葉は続かなかった。ノアが全力でラスターを突き飛ばしたのだ。右の洞穴から一直線に飛んできた魔力の塊。それがもはや予測の答えである。ラスターは体を強かに打ち付けたがそれどころではなかった。 「ノア!」 「俺は平気!」  質量のある何かが奥で蠢く音がする。僅かに地面が揺れているのが分かる。人の悲鳴

【短編小説】見栄を張る #2

 こちらの続きです。  ニリーアは商業都市アルシュの北側にある小さな自治領だ。北西部には…

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【短編小説】見栄を張る #1

 数日前。  商業都市アルシュ。ギルド本部。  ギルドからの緊急招集によって呼び出された魔…

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【超短編小説】尻を笑う猿

「次のニュースです。N国で虐殺が起きました。左手で文字を書いた男性が、処刑されたようです…

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【短編小説】どうして?

 ※人を殺害する描写があります 「どうして?」  ノアがそうするようにして、ラスターは優…

7

【短編小説】ずっと死んだまま

 ――X高校第七十三期生同窓会会場。 「遅くなりました」  あきれるぐらいに広いホテルの大…

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【短編小説】優しさというものは

 K氏は友人のN氏と一緒にX公園の散歩道を歩いていた。 「いやあ、あの時は本当にすまなかった…

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【超短編小説】本人は幸せなので

「読みました」のメッセージで埋め尽くされたディスプレイに思わず彼女の口元が歪む。今日も力作に対して「反応」が届き、彼女はありがとうございます、とブログ上で返事を打つ。小説は他人に読まれてこそ初めて価値が生じる。閲覧数は所詮ページが開かれた数をカウントしているだけなので、中には途中で読むのを辞めたとか、間違えてタップしたとか、そういったこともあるだろう。故に正確な数字ははじき出せない。読まれてこそだ。読まれてこそなのだ。だから彼女は読了に価値を見出す。自分のサイトに「閲覧者が最