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【超短編小説】本人は幸せなので
「読みました」のメッセージで埋め尽くされたディスプレイに思わず彼女の口元が歪む。今日も力作に対して「反応」が届き、彼女はありがとうございます、とブログ上で返事を打つ。小説は他人に読まれてこそ初めて価値が生じる。閲覧数は所詮ページが開かれた数をカウントしているだけなので、中には途中で読むのを辞めたとか、間違えてタップしたとか、そういったこともあるだろう。故に正確な数字ははじき出せない。読まれてこそだ。読まれてこそなのだ。だから彼女は読了に価値を見出す。自分のサイトに「閲覧者が最後まで小説を読んだときに自動でメッセージを送信する」仕組みを仕込んでおいたので、彼女は彼女の小説の価値を正確に把握していた。
「読みました」「読みました」今日も七つの新規通知に「小説の閲覧ありがとうございます! よろしければ感想もいただけると幸いです!」と返事を記したが――。
サイトを開設してから今日に至るまでの五年間、
彼女の作品に「感想」が届いたことは一度も無い。
気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)