【短編小説】僕に死に方を教えてくれたおじさん
僕は死に場所に河川敷を選んだ。河川敷には大きな木が一本生えていて、そこでなら首を吊りやすいなと思ったのだ。人通りがまばらな朝、散歩だと適当なことを言って親を騙し、僕は河川敷に向かった。うっすらと霧が出ていたが、僕には関係のないことだった。僕は持ってきた紐でわっかを作り、死ぬ準備をした。そのときだ。
「なんだ兄ちゃん、あんた死ぬのか」
僕はこの時悲鳴を上げそうになった。霧の向こうからぬぼっと出てきたおじさんは、この辺りに住んでいるホームレスだ。僕は「止めないで下さい!」と言