マガジンのカバー画像

創作短編集

304
私が書いた創作短編をまとめたマガジンです。 今後記事が増えたとき、こちゃこちゃするかもしれないと思ってまとめてみました。
運営しているクリエイター

2022年9月の記事一覧

【短編小説】「私の絵はもうどこにもない」-エリック・ハイドの苦悩と絶望-

(この番組は二〇××年五月二十日に放送されたものです)  U美術館所蔵。「天空よりの祝福…

【短編小説】井の中へ泳ぎに来た蛙

 ――切っ掛けなんて些細なことで、それを無関係のフォロワー数人を巻き込む騒動にしたのは高…

【短編小説】清く澄んだ水底にて

 飼っていた金魚が全滅した。飼い始めてから僅か一週間後のことだった。友人がインスタグラム…

【短編小説】受験生と悪魔の賭博

 玄関のチャイムが鳴った。A氏が素直にドアを開けると、お高そうなスーツを身に纏った青年紳…

【短編小説】画家と少年

 青年画家は自分という存在がまだこの都会になじんでいないことを自覚していた。例えばこの街…

【短編小説】すごい感情移入

「それでね! その後どうなったと思う!? テリーがデヴィッドのことを庇ってゾンビに食べら…

【短編小説】私の手紙、先生の日記

 先生の日記が読みたいと言った。先生は「ええっ?」と言って眉をハの字にして笑った。困っているときの笑顔だ。  私はもう一度「先生の日記が読みたい」と同じ事を言った。先生は頭をポリポリと書いて「日記っていうのは、他人に見せるものじゃないと思うなぁ」と言った。私はすぐにスマートフォンを取り出して有名人のブログを見せた。 「今はこうやって、世界中の人に日記を公開するのが主流なんですよ?」  先生は「あはは」と声を出して笑った。 「僕もブログを始めればいいのかな?」と先生が言ったので

【短編小説】辛い男たち

 ある男は辛かった。いっそ死んでしまいたいとさえ思っていた。するとそこに別の男がやってき…

【短編小説】薄着だったので

 ジェシーとトムは家がお隣同士。二人はとっても仲良しで、トムはよくジェシーのおままごと遊…

【短編小説】淺海リクを殺したのは誰だ

 私は淺海リクが同人誌を出すと聞いたときには、特に不安を感じなかった。リクは自分の印刷物…

【短編小説】花弁をこじ開ける

(注:この文章は静物画「花弁をこじ開ける」のカンバスの裏に書かれた文章の欠損部分を、フレ…

【短編小説】ご丁寧な自己紹介

 R大学マンガ研究サークルは、サークル誌の原稿作業も終わり、あとはコミケに向けて各々体調…

【超短編小説】お前が悪い

 交通事故があった。歩道のない見通しのよい直線道路で、乗用車が歩行者を巻き込んでしまった…

【短編小説】ダンボール箱の子猫

 都市と言うには見窄らしく、田舎と言うには栄えていた町で、僕たちは育った。毎朝登校班を組んで学校に行き、授業を受けて、友達と遊んで、帰りは変質者情報が出ない限りは友達と一緒に帰った。僕らはいつも五人でつるんでいて、その中のリーダー格がNという女だった。Nはこのグループを自分のものだと思い込んでいて、僕たちが何をして遊ぶかは彼女の裁量によって決まった。「今日は鬼ごっこをしよう。あんたが鬼ね」といった具合にして。  僕は彼女の正義に隠れた粗暴さに薄々気がついていたが、実害がなかっ