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【短編小説】薄着だったので

 ジェシーとトムは家がお隣同士。二人はとっても仲良しで、トムはよくジェシーのおままごと遊びに付き合っていた。ある日、ジェシーは台所から本物の包丁を持ち出して、トムと一緒に遊び始めた。
 トムはノースリーブのシャツに短パン。ジェシーは長袖のワンピースという格好であった。ジェシーが本物の包丁で、にんじんに見立てた枝を切るフリをするのを見て、トムも「僕もやりたい!」と言いだした。ジェシーはトムに包丁を貸すのを嫌がり、トムはジェシーから包丁を奪おうとした。
 その結果、ジェシーはトムを切りつけてしまったのである。
 爆発するような泣き声に、双方の両親がかけつけた。幸いトムの怪我はかすり傷。しかし一歩間違えれば大惨事である。
「お宅は一体どんな教育をしているの!」と、トムの母親は怒った。
「包丁を無理に奪おうとしたあなたの子供にも非があるのでは?」と、ジェシーの母親は反論した。
「そもそも包丁が持ち出されなければ防げた事故だ」とトムの父親が言うと、
「包丁が持ち出されたとしても、薄着でなければ防げた事故だ」とジェシーの父親が言い返した。
「何だって!?」トムの母親が金切り声を上げた。「もういっぺん言ってみな、薄着がなんだって!?」
「何度でも言ってやるさ」ジェシーの父親が挑発した。
「まだ六月だってのに、ノースリーブを着せるからこうなるんだ。これからうちの子には怪我をしてもらいますと言ってるようなもんじゃないか。うちの子はそうならないように、ちゃんと長袖の服を着させている。子供にも薄着を着せるあなたたちには危機管理の意識が足りないんだ」
「お前……! 自分の娘が余所の子に怪我をさせたというのに、よくもまぁそんなことが言えるもんだ!!」
 トムの父親が吠えた。

 さて、親同士が言い争っていたものの、手当が終わったトムはジェシーと遊んでいた。トムはジェシーと遊んでいるうちに、小屋を発見した。小屋の中には小さな拳銃があった。その小屋の持ち主は既に亡くなっていたので、小屋も拳銃も特に誰のもの、というのはなかった。
 トムは興味本位でその銃を手に取った。するとジェシーが「私も触りたい!」と言った。
 トムはジェシーに拳銃を渡すのを嫌がり、ジェシーはトムから拳銃を奪おうとした。
 その結果、

 鋭い銃声に二人の両親が駆けつけると、ジェシーが倒れている。近くにはショックで硬直しているトムと、拳銃が一丁。
 ジェシーの父親がすぐに救急車を呼んだ。みんな救急車に乗り込んだ。救助隊が懸命に処置をする。そんな彼らのすぐ傍で、ジェシーの母親はトムの両親に向かって、「お宅は一体どんな教育をしているんだ!」と怒鳴った。
 それを聞いたトムの父親は、肩をすくめてこう告げた。

「あなたの娘さんが薄着でなければ防げた事故かと……」

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)