サイコパス社長に出会い、逃げるまでの100日間の話【第四章】
第一章〜最終章まで一覧⇒ サイコパス社長に出会い、逃げるまでの100日間の話
サイコパスの誕生
この仕事を始めて二か月半に差し掛かろうとした頃だった。
私と友達、二人で電話をする時間を設けた。
日々怒鳴られ、泣き、どれだけ疲れていても、不満を吐き出す時間は必要だと思ったからである。
わざわざ話をするために時間を取るのはお互い珍しかった。
友達は「あの人、サイコパスだと思う」と話した。
サイコパス?
サイコパスって何!?
インパクトのあるキーワードであることは間違いない。
すぐさま、ネットで調べた。
サイコパスとは、反社会性パーソナリティ障害という障がいであるということを知った。
“サイコパス”といえば単に危険な人のことを指す総称だと思っていたけれど、障がいとして実在することに驚いた。
文章中にはこう書いてあった。
良心が欠如しており、他者に冷淡で共感性が無い。平然と嘘をつき、表面は魅力的。
間違いないと思った。
何らかの発達障害なのかと考えていた時期もあったけれど、サイコパスであるということがわかり腑に落ちた。
そこで、このサイコパスとはどうすれば会話が成り立つのかということについて調べ始めた。
ところが、どの人の文章にもこれといった対処法が詳しく書かれていない。
「逃げろ」とだけ、書かれてある。
私たちはもしかして関わってはいけない人間に遭遇しているのではないかということに、ここでようやく気づいた。
隙を見計らって男性社員に電話をした。
日常的に積もった鬱憤が溜まっていたのか、彼はひとりで多くのことを語っていた。
この人は口下手ではなく、私と同じように社長と会話ができなかっただけなのかもしれない。
ただ「僕のことは別にどうでもいいよ」と言い、気遣いから出てきた言葉というよりは、自分の感情を捨てている様子だった。
心が死んでいるように思えた。
今度は隙を見て今度は女性社員に電話をすると
「数か月前までは社長が男性社員に当たり散らしていた」という話題を持ちかけてきた。
それは友達から聞いたことがある。
男性社員がリモートワークに移る、まだ事務所で仕事を教わっていた際には「死ね」と激しく罵倒し、何をしても否定しかしない状態であったそうだ。
彼女の言い分ではこうである。
「彼が社長からそういった叱りを受けるのは、彼が30代でこれからもっと厳しい世界でやっていくためには必要なことであると社長が言っていた。だから仕方が無い」とのこと。
罵倒と叱りは違うのでは...と思ったが、彼女は社員と会話したあらゆることを悪気なく社長に報告していた。
(無理矢理聞き出されていたという可能性も高い)
この女性社員はマインドコントロールされていたように思う。
あまり妙なことを話すわけにはいかないと思った。
おせっかいかもしれないが、私はこの二人に「サイコパスって知っていますか?」とでも言ってみようと思い連絡を取ったのだが、感情を捨て、マインドコントロールされている状態ではとてもじゃないが聞き入れられる雰囲気ではないと察した。
社員二人は、あの人が何かおかしいということに気づいてはいないのだろうか。
交際相手を変えていくサイコパス
深夜までサイコパスと会話をしていた中で、嫌な話がある。
「僕と結婚して、お願い!」とサイコパスは度々言うのだ。
「できません」と私は返事をする。
「どうしてできないだなんて言うの!?それじゃあ希望が持てないでしょ!もっと他の返事の仕方を考えなさい!」云々と言われ、怒鳴られる。
何の希望なのかわからない。
ちなみに忘れているかもしれないがサイコパスは結婚しており、家族がある。
断ったことに対し「全部君が悪いんだよ!!」と罵られる。
結婚できないと断った私は悪いのか。
できることなら、断ったことについて悪くないと思いたい。
「そうだね、できたらしようね~」などと言い、うまく会話を交わさなければならないことはわかっていても、この人はサイコパスであることに間違い無い。
言葉通りに受け取るサイコパスには表面上でも「しようね」などと言ってはいけないことはわかっていた。
なぜ結婚なのかと問うと
「恋愛は自由であり、誰に好意を寄せようが、その気持ちに対して法では裁くことができない」からだそうだ。
“サイコパスはどんどん交際相手を変えていく傾向がある”というのを、複数のサイトで読んだ。
無理矢理この妄想話に付き合わされ、明るみに出ていない数々の被害者が過去には沢山いるのではないか、と思うとゾッとした。
続き ⇒ サイコパス社長に出会い、逃げるまでの100日間の話【第五章】
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