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ソムニウム~夢~

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夢をモチーフにした詩と短編小説です。
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2020年5月の記事一覧

ソムニウム(14)裸足の旅

ソムニウム(14)裸足の旅

数人の仲間と旅をする
気候の暖かい都市を巡る
歩いてワープしまた歩く
北アフリカのカスバで靴を盗られる
まあいいやと思って笑う
まあいいよと仲間が言う
ベトナム北部の山間の寒い都市へワープする
みぞれの道を裸足で歩く
ひんやりした感触が爽やかだ
橋の上で民族衣装を着た壮年の貴族の女性と出会う
その人の家に招かれる
長毛の猫が何匹もいて暖かい部屋で眠っている
朝になってその家の人達と大きな食堂で食事

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ソムニウム(13)オリオンの三姉妹

ソムニウム(13)オリオンの三姉妹

かつて友人だった作家に
自分が作った作品を
どう思うか訊いてみた
かつての友人は不機嫌になり
もうつきあえないと去っていった
後ろ姿が手紙になった
三枚の刃がついたハサミで
ざくざくとそれを切り刻んだ
眉間が虚空とつながって
瞬くように青く輝く
三角形の輪郭が三つ
智慧の環のようにカチャカチャと
重なったり組み合ったり離れたりした
キャキャキャ、キヤキヤ、キヒリクと
金属的な声がした
オリオンの三

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ソムニウム(12)平屋の日本家屋

ソムニウム(12)平屋の日本家屋

ガ・ギシ・ガリゴリ・ゴ・キリリ

平屋の日本家屋に住んでいる
この家にはお客が泊まっている
東ヨーロッパから来た人たちで
黒髪の青年と金髪の女性とアフリカ系の少年だ
昼間にステイし夜になると出かけ
朝になると戻ってくる
彼らが家を出た後に
姿の見えない『いつもの奴ら』と
和室の広間で料理して食べたり
居間で小便をしてみたり
色んなことをして一晩遊ぶ
朝までに掃除が終わらない

ガ・ギシ・ガリゴリ・

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ソムニウム(11)沼とオートバイ

ソムニウム(11)沼とオートバイ

 
 バイトしていた居酒屋に、
 置いていたオートバイを取りに行く。
 苦手だった板長が出てくる。
 会話を噛んで笑われる。
 オートバイは部品が壊れている。
 居酒屋の裏が工場になり、
 工員が出てきてレストアが始まる。
 死んだ父親も出てきて見ている。
「バイクが修ったら親父も乗れば」
 と話しかけると父親が微笑む。
 すると山奥の村にいる。
 道の真ん中で数人の村人と石橋蓮司が騒いでいる。

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ソムニウム(10)シャム双生児と緑の蛾

ソムニウム(10)シャム双生児と緑の蛾

 洞窟の中にいた。
 シャム双生児の女性になっていた。
 片方の自分の肩の上に、
 白髪白髭白装束の大柄な老人が手をおいた。
 老人の姿にはカーキ色の軍服が重なって見えていた。
 日本軍の軍服だ、と思ったところで目が醒めた。
  醒めた。
   醒めた。
    醒めた。
     五回続けて夢から醒めた。
 ベッドの横にローチェストがあって、
 ラップ音が激しく鳴っていた。
 一番下の引き出しを

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ソムニウム(9)皆既月蝕

ソムニウム(9)皆既月蝕

 ダンボールの空箱の山を登っている。
 こういうところを歩くのは得意だ、と思って進む。
 登っているつもりで降りている。
 大理石の床に立っている。
 そこは中国の奥地の大都市で、
 日本と中国が共同で作った迎賓館の中にいる。
 別れた妻とそっくりの女性が建物の中を案内する。
 ベランダに出ると高原が広がる。
 夜になって皆既月蝕が始まる。
 月蝕は青白く美しい。
 口の中に豚の角煮の食感がする。

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ソムニウム(8)黒い牛

ソムニウム(8)黒い牛

 江戸の町並みを歩いていた
 大きくて真っ黒な牛の群れを連れて
 和服とは異なる着物を着た
 屈強そうな男たちの一行がやってきた
 町人たちに向かって
「牛をとれ、連れていっていいぞ」
「とらないのか」
 と声をかけながら歩いていた
 男たちは目の光が強く
 髪と肌が艷やかで
 生命力に溢れていた
 町人たちは畏れて近寄らなかった
 侍たちも
「構うな、通せ」
 と言いながら一行から距離を置いてい

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ソムニウム(7)古代魚の庭園

ソムニウム(7)古代魚の庭園

 爆撃を受けて荒れ果てたコンクリートの街にいる。
 瓦礫が転がる道の上を滑るように飛んでいく。
 かさかさに乾き切って一滴の水もない。
 半壊した倉庫に入って床下の換気口に吸い込まれる。
 きらきらきらと闇が光る。
 ぴうぴうぴうと風が鳴る。
 和洋折衷の古い洋館の大きな庭園のパーティに着地する。
 華やかに着飾った客たちが朗らかに語らっている。
 いくつも小さな池があってすべてに橋がかかってる。

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ソムニウム(6)エーテル・バー

ソムニウム(6)エーテル・バー

 繁華街のバーへ行く。
 空気も雰囲気もすごく悪い。
 カウンターでビールを飲む。
 両隣の客に服を脱がされ、尖ったモヒカンに整髪される。
 オレンジのアクセントが入った金色に輝くモヒカンだ。
 背後から腕が伸びてきて革ジャンを着せられる。
 こういうことじゃない、と憮然とする。
 存在の芯から酔いたいのだ。
 バーテンに手招きされて、カウンターの内側へ入る。
 奥に躙り口があり、這うようにしてく

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ソムニウム(5)ミンタカと緑の龍

ソムニウム(5)ミンタカと緑の龍

 地下のスタジオでヨガのレッスンを受けている。
 インストラクターはインド系の女性だ。
 黒い髪をシニヨンにまとめ、褐色の肌で、黒目が大きい。
 鳩のポーズを決めたまま、じっとこちらを見つめている。
 ミンタカ、という言葉が浮かぶ。
 彼女の名前なのだと思う。
 マンションの隣人の部屋へ遊びにいく。
 自分の部屋と鏡写しのレイアウトだ。
「前の家から持って来た」と言って、隣人が網戸を指差す。
 三

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ソムニウム(4)天空バス

ソムニウム(4)天空バス

 入り組んだ路地を歩いていた。
 何かがこちらへ飛んできた。
 手でつかむと小さなUFOだった。
 大きな目玉がついていて、ギョロリとそれがこっちを見た。
 角を曲がると黒い煙が出ていた。
 どんどん増えて、どろどろ濃くなり、あっという間に路地を埋めた。
 道を戻って全力で逃げた。
「ガソリンを撒いた」という声が聞こえた。
 あはは、あはは、と笑っていた。
 路地の外へ出て「危ない、逃げろ」と大声

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ソムニウム(3)シリウス

ソムニウム(3)シリウス

 冬の夜空に青い星を見た。
 きらきらと冷たく輝いていた。
「あの星はもともと赤かった」とオートバイを走らせながら思った。
 星はどこまでもついてきた。
 家に戻ると宅急便が届いた。
「すでのもけどとおのらかスウリシ」
 箱には少女が入っていた。
 首から上のない体だった。
 どうしよう、と胸に手を当てると、ズブリと沈んで何かを掴んだ。
 引っぱると母親の頭が出てきた。
 少女の首に当てたが合わな

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ソムニウム(2)ジェットコースター

ソムニウム(2)ジェットコースター

 公園に行くと砂場で自分が燃えていた。
 すっかり炭化して中身が空になっていた。
 遊んでいた女の子が、片手で持ち上げて振り回した。
 抜け殻がパリパリと崩れて散った。
「脱皮したんだな」と思い、嬉しくなって自転車で走った。
 白い歩道をすいすい進んだ。
 園服を着た幼稚園児が一列に並んで歩いていた。
 近寄ってみると子供は一人で、残像を残しながら、同じところを何度も歩いていた。
 自転車を止めて

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ソムニウム(1)鳥

ソムニウム(1)鳥

「がっかりだ!」
 と耳元で怒鳴られ、頭を平手で叩かれた。
 痛い!と思った瞬間に、高い空を落ちていた。
 さっきまでの自分から引き剥がされて、ここへ放り出されたのがわかった。
 何度か雲を突き抜けると、眼下に大きな川が見えた。
 長い橋がかかっていた。
 水は透き通ってきらきらと光っていた。
 水面が迫って頭から落ちた。
 沈んで水を呑み、もがいて浮かんだ。
 無数の死体が川面にみっしりと浮いて

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