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ソムニウム(10)シャム双生児と緑の蛾


 洞窟の中にいた。
 シャム双生児の女性になっていた。
 片方の自分の肩の上に、
 白髪白髭白装束の大柄な老人が手をおいた。
 老人の姿にはカーキ色の軍服が重なって見えていた。
 日本軍の軍服だ、と思ったところで目が醒めた。
  醒めた。
   醒めた。
    醒めた。
     五回続けて夢から醒めた。
 ベッドの横にローチェストがあって、
 ラップ音が激しく鳴っていた。
 一番下の引き出しを開けると、
 緑色の大きな蛾が何十羽も羽化していた。
 あわてて閉めたが、一、二羽外へ出てしまった。
 どうやらすべての引き出しの中で、
 蛾がみっしりと羽化したようだ。
 布団とベッドを片付けてから処理しよう、
 と考えながら、起き出して洗面所で歯を磨いた。
 鏡に映った自分の両目が、
 大きくなって輝いた。


(終わり)

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