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ソムニウム(8)黒い牛


 江戸の町並みを歩いていた
 大きくて真っ黒な牛の群れを連れて
 和服とは異なる着物を着た
 屈強そうな男たちの一行がやってきた
 町人たちに向かって
「牛をとれ、連れていっていいぞ」
「とらないのか」
 と声をかけながら歩いていた
 男たちは目の光が強く
 髪と肌が艷やかで
 生命力に溢れていた
 町人たちは畏れて近寄らなかった
 侍たちも
「構うな、通せ」
 と言いながら一行から距離を置いていた
 牛の群れはどこからか
 溢れるように湧いたもので
 男たちは群れに寄り添い
 牛と人間を縁づけようとしていた
 彼らが通り過ぎてから
「なぜ、とらなかったんだろう」
 と後悔の気持ちが湧いてきた
 引き返して走ったが
 見つけることができなかった
 次こそ牛をとろうと決めたが
 二度と出会うことがなかった


(終わり)

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