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《好きなこと》と《得意なこと》 ── 日本語学科留学生のキャリアプラン面談 (エッセイ)

日本語を専攻する韓国人留学生(4年生)のキャリアプランについて相談に乗って欲しいと依頼され、リモート会議(ZOOM利用)でインタビューを受けました。
下記のリモート講義で知り合った学生です。

彼女が日本語を専攻しようと思った動機は、日本のマンガやアニメが好きだったから、とのことでした。マンガやアニメの日本語を韓国語に翻訳する仕事に就きたい、という希望を持っています。韓国の大学の日本語学科に在籍し、日本には1学期間、短期留学した(といってもリモートになってしまった)という状況です。
現在は両親と住んでいる彼女は、今年6月の卒業後は自活可能な仕事を持ち、親から独立した住環境で暮らしたい、と考えています。


Q1.就職について:《翻訳》という仕事を、会社に就職して行うか、フリーランスで行うべきか、迷っています。会社に就職するメリットとディメリットについて教えてください。

A1.会社という組織の中には上司や同僚がいるので、困った時や判断に迷った時に相談することができるのがメリットです。組織の中で、一般的な仕事の進め方を学ぶこともできます。
フリーランスの場合はひとりで判断しなければならないことが多いので、仕事を始めたばかりの人にとっては負担が大きいかもしれません。
ただし、会社で他の人と一緒に仕事をすることが苦手で、むしろ人間関係がストレスになる人もいます。そういう人は、フリーランスの方がいいかもしれません。ただ、フリーランスも誰かから仕事をもらうわけなので、コミュニケーションは必要です。自分はどうなのかよく考えて、そこも含めてどちらが向いているか考えるといいでしょう。

Q2.もし翻訳関係の会社に就職したら、ビジネス文書の翻訳のような仕事になるかもしれません。自分のやりたい仕事(マンガやアニメの翻訳)ができないのはディメリットではないでしょうか。

A2.それはその通りです。マンガやアニメという《好きなこと》を仕事にできるのが一番幸せなことかもしれません。
ただ、あなたの《得意なこと》は何か、と考えると、それは《日本語》と《韓国語》であり、《両者間を翻訳する能力》ですよね。自分が《得意なこと》を仕事にするのが一番効率よく収入を得ることができる、と私は思います。
特に、あなたが親から独立したい、と思っているのなら、安定して収入を得ることは重要です。
あなたの《得意なこと》を使ったビジネス文書の翻訳の仕事も、《好きなこと》である、マンガやアニメの翻訳に生きるのではないでしょうか。
例えば、《好きなこと》は週末に行い、そこからフリーランスの仕事を拡げていく、ということもできるかもしれませんよ。


この《Q&A》面談が役にたったかどうかはわかりません。
けっこうジジイっぽいことを言ったようにも思います。
でも、若いんだから《好きなこと》に挑戦してみたら、と青春ドラマのようにたきつけることはできませんでした。

私自身もかつて、月曜から土曜(たいてい休日出勤していた)まで会社で《得意なこと》を仕事にして収入を得て、日曜日に《好きなこと》をしていました
でも、会社の中でいくらか責任が重くなると、《好きなこと》を続けるのは難しくなっていったなあ ── ZOOM面談から《退出》した後、彼女には言わなかった(言えなかった)部分をひとり、脳裏で反芻しました。

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