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英語を《勉強》から《日常》にシフトするため、工学系の学生に《おススメ》していること (3)《MANGA》もおススメ!

米国ミシガン州の大学町に住んでいたころ、日本からの訪問客に、
「何かいいお土産はありますか?」
と相談されることがありました。
誰へのお土産なのかを尋ね、小学生から高校生ぐらいのお子さんに何か買いたい、という人がいたら、ダウンタウンの《Vault of Midnight》という本屋に案内しました。

そこは本格的な(というか、マニアックな)《MANGA》専門店で、いわゆるアメリカン・コミックスも種類豊富ですが、1階中央の特等席棚を占めているのが、《Japanese MANGA》でした。
たぶん、今もそうでしょう。
手塚治虫「Buddha」のような古典から、「Slam Dunk」のようなロングセラー、それに、日本でも出版後間もない新作までそろっていました。
もちろん、ナレーションも吹き出しの中も、すべて英訳されています。


「子供さんが日本語で既に読んでいるマンガでもいいし、これから読むであろう、少し年上向きのマンガでもいいと思います。楽しんで読んでいるうちに、英語の方にも親しみを感じて、《馴染んで》いくかもしれません」
そう薦めると、客人は興味を示し、買っていかれました。


これまで、英語に《馴染んでいない》学生には、
《➀自分が楽しめるテーマで英語の「書き物」を読む》
ことを、語彙に自信のない学生には、
《➁子供の頃に夢中になった本を英文原書で読んでみる》
ことを、おススメしてきました。
でも、そもそも日本語での、《楽しみとしての》読書習慣のない学生には、いずれの《おススメ》もスルーされてしまいます。

《読書》というのは、文字という《記号》の配列から《意味》を読み解き、《想像》によって脳内に《情景》などを思い浮かべる行為です。
幼い頃から、文字情報より映像情報で育ってきた世代の中には、「《意味》を読み解き、《想像》する」のが苦手な人はいるものです。
そうでなくても、音声付きの動画映像は、誰にとっても、時間的効率の高い、《楽チン》な情報媒体です。

「英語の書き物」に、なお抵抗感を感じる学生には、
「《MANGA》もおススメ!」
と言っています。

いや、そもそも、私自身が《MANGA》愛好家でもあります。
今持っている《MANGA》は、手塚治虫の「ブッダ」「Ode to Kirihito(きりひと賛歌)」、石ノ森章太郎の「Cyborg 009」、井上雄彦の「Vagabond」などです。



中でも、特に気に入っており、また、英語で読む価値の高そうなシリーズが、「美味しんぼ(Oishinbo)/A la Carte」です。

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ご存じのように、雁屋哲(原作)・花咲アキラ(作画)の「美味しんぼ」に登場するエピソードを、「SAKE」「Ramen and Gyoza」「Sushi and Sashimi」など、料理のカテゴリーに大別して単行本化したものです。

《MANGA》は楽しめればそれでいいので、あまり《勉強》的なことを言うつもりはありません。
ただ、英語に《馴染む》という観点で、日常生活で使われる《口語的》表現が、《MANGA》にはよく出てきます。特に、科学技術論文のような《文語的》書き物にはあまり出現しない、《仮定法過去》《仮定法過去完了》で使う助動詞、《would》《could》《might》が頻繁に出てきます。
これらの助動詞は、工学系学生の《読み物/書き物》にはめったに現れません(投稿論文に出てきたら、間違いであることがしばしば)。けれど、口頭発表(Oral Presentation)は口語ベースであり、特に質疑応答の中では、使う(と真意が伝わりやすい)場面が出てきます。

例えば、下のページ左上の吹き出しでは、海原雄山が、《would》を使って、
「(料理について説明するより)食べてみた方がわかりやすい《だろうな》
と言っています。
こんな《シーン付き英語》を眺めているうちに、なんとなく感覚的に身についてきます。

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もうひとつ。
その下に出てくる《Dish》は、以前、「中学英語の呪い」シリーズで挙げた、《単語&和訳 1対1対応型単語帳問題@中学英語》では、
  Dish = 皿
と憶えたはずです。
でも、この場面のように、多くは、
  Dish → 料理
と使われます。
居酒屋で取り皿が欲しい時は、
"Can we have an extra plate?"
と、空の皿は通常、《Plate》を使います。

ついでにもうひとつ。
外国人と食事、特に和食を食べていて、
「これは何ですか?」
と尋ねられることがしばしばあります。
そんな時にも、この《MANGA》に出てくる、魚の名前や料理法など、《日常英単語》が力を発揮します。

《MANGA》も、《読書》同様、辺りに迷惑にならなければ、ぜひ、声を出して読んでみてください。特に《吹き出し》部分は、芝居のセリフのように。

もちろん、吹替なしの映画を目と耳で楽しむのもいいのですが、《文字情報》《意味》のリンクという観点では、《読書》《MANGA》は連続性が強いと思います。
もちろん、《英語キャプション付きの映画》は、《MANGA》と連続性があります。

今は《MANGA》は紙の本もネットで買えるし、電子版なら即座にダウンロードできます。でも、日本語の《マンガ》に比べると、割高ですよね。
私が講師を務める大学では、プロパーの先生に頼んで、図書館に、
「Oishinbo/A la Carte」シリーズを購入してもらいました。活用されているといいのですが。

結論(3):《読書》はどうも、という人はもちろん、《マンガ》が愛読書です!という人にも、より《Burden-less》な英語版《MANGA》をおススメします。


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