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10秒で読める小説

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100作書けたので、次の目標は150作!ってことでボチボチ書いていきます。
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#小説

【10秒で読める小説】懐かしい味

【10秒で読める小説】懐かしい味

僕は日本で人気カレー店を営む、インド人だ。

「ここのカレーは本場の味なのに、なぜか懐かしいんだよな」
客はみな、不思議そうに言う。

「アリガトウ、ゴユックリ」
と笑顔で言い、僕は厨房に戻った。

日本人である僕の妻が、仕込み用の鍋をかき混ぜながら呟く。
「肉じゃがをリメイクしたカレーが、こんなに流行るとはね」

【10秒で読める小説】目印

【10秒で読める小説】目印

「顔覚えるの苦手なんですぅ」と言っていた新人さんが何かを落とした。
見ると自作の座席表だ。

名前を間違えないよう努力してるんだな。
と思ったが名前とともに何か書いてある。

「偽造髪」「Vネック」「ホクロ毛」「アゴワレ」等々。

僕はホクロ毛に二重線を引き、宝毛と書いて彼女の席に紙を置いた。

【10秒で読める小説】破局の理由

【10秒で読める小説】破局の理由

「母が反対しているから結婚できないわ」
そう言って彼女は僕から去った。

納得いかなかった僕は占い師に相談した。
「僕には覚悟があります!
収入も安定してます!
なのに何が気に食わないんでしょう」

占い師はつぶやいた。
「サンマが視えます…あとおろし大根」

「あ、家に招待された時、魚を綺麗に食べれなかったからか」

【10秒で読める小説】クレーマー

【10秒で読める小説】クレーマー

コンビニでバイトしていると、年配男性が店長にクレームを言い出した。
「店内が寒い。暖房もっと入れろ」
「ドアの開閉が多いもので…」

「あとバイトへの時給が低すぎだ。もっと払ってやれ」

たまらず俺は割り込んで、年配男性を引っ張って行く。

「客を装って待遇改善を図るのはやめてくれよ、爺ちゃん」

【10秒で読める小説】タマゴ

【10秒で読める小説】タマゴ

「さっきコレ出産してん」

オカンはそう言ってダチョウの卵のようなものを見せた。
「俺もう二十歳やで?下らん冗談やめろや」
そう答えてから、オカンの腹が凹んでいるのに気付いて、面食らった。

「ひと月温めたら赤子が出てくるで」
「ハァ?なんでわかるねん、そんなこと」
「二十年前にも同じ事があったからなぁ」

【10秒で読める小説】ヒーローの正体

【10秒で読める小説】ヒーローの正体

マジやば!

同級生の冴えない男子がヒーローの正体だったなんて。
ギャップにやられた私は、駆け寄ってキスした。悪者に襲われかけているというのに!

途端に彼の筋肉は萎んで細ガリの姿に。
「君のキスで、ヒーローになる呪いが解けたよ」
ヒーローは呪いだったの!?
いやそれより、この悪者どうすんの!?

マジやば!

【10秒で読める小説】夢の欠片

【10秒で読める小説】夢の欠片

夢はパティシエ。
叶えるために娘ちゃんは保育園で練習してるんだね。
エプロン代わりの上着のポケットに、夢の欠片を詰め込んで。
ドングリはチョコレート、綺麗な小石はキャンディだってね。素敵だね。

もう手遅れなんだけど、もっと早く知っておけば良かったって、思わずにはいられない。
そしたら、夢の欠片が洗濯機を壊すこともなかったはずだから。

【10秒で読める小説】あの、バレバレです…

【10秒で読める小説】あの、バレバレです…

金星人を名乗る女の声が響く。

「お前は我々の観察対象に選ばれた。
他言すれば命はないぞ。
私はお前の周囲の誰かに、そっと成り済ましている。お前には誰が私だか、見抜けまいがな」

「──朝ご飯やでー!」
階下からのオカンのダミ声に起こされた。
変な夢やったなぁと台所のドアを開けると、

「早うせんと遅刻すんで」

割烹着姿の金髪美女が言った。