#小説
【10秒で読める小説】懐かしい味
僕は日本で人気カレー店を営む、インド人だ。
「ここのカレーは本場の味なのに、なぜか懐かしいんだよな」
客はみな、不思議そうに言う。
「アリガトウ、ゴユックリ」
と笑顔で言い、僕は厨房に戻った。
日本人である僕の妻が、仕込み用の鍋をかき混ぜながら呟く。
「肉じゃがをリメイクしたカレーが、こんなに流行るとはね」
【10秒で読める小説】タマゴ
「さっきコレ出産してん」
オカンはそう言ってダチョウの卵のようなものを見せた。
「俺もう二十歳やで?下らん冗談やめろや」
そう答えてから、オカンの腹が凹んでいるのに気付いて、面食らった。
「ひと月温めたら赤子が出てくるで」
「ハァ?なんでわかるねん、そんなこと」
「二十年前にも同じ事があったからなぁ」