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妖精事件は夜霧の中で

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妖精事件は夜霧の中で まとめ
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【必読】オリジナル作品について【注意書き】2023/03/31更新

2023/03/31作成  目を通していただきありがとうございます。やまももぽんすけです。  こちらの記事は、当アカウントで連載しているオリジナル作品「妖精事件は夜霧の中で」と「他、妖精事件は夜霧の中で以外の作品」の注意書きとなります。  読者様、これから読もうとしている方、気になっているけど内容が不安という方に読んでいただきたい記事でございます。  ※作者の私が不安  少々長くなりますが、これも書き手と読み手が気持ち良く創作が楽しめるよう、お互いの自衛のためご協力をお願い

妖精事件は夜霧の中で ~【短編】【記念日】きねんび

こちらは数年前に書いた『本編を書くと決まっていなかったときに書いた』短編です。 基本的な設定、性格は変わらないものの本編と辻褄が合わないところや時系列が違います。 エルネストとシャロンがイチャイチャしているお話。ご了承ください。 【記念日】きねんび  物事や過去の出来事を記念する日。広義には週間・月間も含まれる。  今日はとても素敵な日。 「こっちこっち!ほら、エル!」  花びらが舞う空。ふわり。舞い上がる花びらと共に彼女の、シャロンの金髪が揺れる。 「うわ引っ張るな

妖精事件は夜霧の中で ~【12話】【harbor】ハーバー

【harbor】ハーバー  港。又は隠れ場、潜伏所。  海が陸地に入り込んでいる地形を利用したり、船が安全に停泊できるようにした場所。  そして旅行客の乗降、貨物の積み卸し、取引をする場所である。  都会に夢を膨らませる田舎者が最初に踏み入れる場所でもあるが、ならず者が獲物を選ぶ場所でもあることを忘れてはならない。  エルネスト達がアノニマス・ファイブの殺人鬼2人と対峙し、決着がつかないまま逃げられた後。つまり時刻はとうの夜。  宝石都市エーデルシュタインの豪奢な屋敷。クリ

妖精事件は夜霧の中で ~【11話】【見るなのタブー】みるなの‐たぶー

【見るなのタブー】みるなの‐たぶー 「見るな」と言われると人間は誰しも興味を抱いてしまうもの。  好奇心を抱いたばかりに取り返しのつかない結果になることはたくさんある。  でもそれは必然?偶然?それとも運命? 「先に俺に手ぇ出したんだろーが!今更乗り換えるんじゃ……っねぇぞ!」  剣戟。重なる3つの金属音。  ソフィとカイルが死の化粧師ギディオンと対峙する反対側で、エルネストとジョシュアが爆炎怪人ジャックのラウルと対峙していた。 「うるせぇ!!オレはイラついてんだよぉソ

妖精事件は夜霧の中で ~【10話】【都市伝説】としでんせつ

【都市伝説】としでんせつ  その時代に広がったとみられる口承の一種。根拠が曖昧で不明であるものを指す。  都市伝説は、人々から人々へ。人々による人々における人々が人々のために「普通の人々」によって人々に語られ、人々に信じられる。  そしてそれは時として、真実を作り出す。  オパルス区東。  空は既に藍色になり、辺りも静かだった。  時刻は20時手前。  ただでさえオパルス区は人通りは無く静かで薄暗い。人は住んでいるが、空き家や廃墟が多い特殊な区。  貧民区の人間が住み着いて

妖精事件は夜霧の中で ~【9話】【バラバラ殺人】ばらばら‐さつじん

【バラバラ殺人】ばらばら‐さつじん  死体を部位ごとに分割したり、分割した死体の一部を破壊すること。  殺人と死体損壊の一般的呼称であり、動機によっては猟奇殺人に分類されることがある。  自称・化粧師の殺人鬼は芸術家を気取っているため、美しくない殺人は嫌いなのである。  グラナード総合病院。隔離病棟の一室。   「はぁ」  開け放たれた窓。夜の海のように、暗く青い空。金色の三日月が浮かぶ幻想的な夜。  心地良い風が病室に吹き渡ると、花瓶に挿された花が揺れる。 「あーあ。な

妖精事件は夜霧の中で ~【8話】【break the ice】アイスブレイク

【break the ice】アイスブレイク  氷を解かすこと。初対面の人同士が出会う時、その緊張を解す為の手法。  場を和ませ、コミュニケーションをとりやすい雰囲気を作り、相手に積極的に関わってもらえるよう働きかけることを指す。  しかし、それはあくまで相手の氷を解かす行為。自分自身の氷は決して解かすことは無い。  レピエール学園。正式名称は私立レ・ピエール・プレシウーズ学園。  長い歴史がある学園であり、王族がいた時代では王立レ・ピエール・プレシウーズ学園だったが、王族

妖精事件は夜霧の中で ~【7話】【villain】悪役

【villain】悪役  彼らは物語を彩り、主役を引き立たせる重要な存在。悪役は魅力的でなければならない。  そして悪は誰にでもどこにでも存在するもの。正義よりも身近で親しく魅力的である。  意識してみなよ。ほら、今までの人生で自覚している悪を数えてごらん?  宝石都市エーデルシュタイン。またの名を犯罪都市エーデルシュタイン。  色鮮やかな輝きを放つ宝石都市とは打って変わって、裏には血と欲と憎しみが満ちている。  犯罪は数多くあり、また犯罪は常日頃から行われていた。そして、

妖精事件は夜霧の中で ~【6話】【afternoon tea】アフタヌーン・ティー

【afternoon tea】アフタヌーン・ティー  某国の喫茶習慣。午後4~5時頃に紅茶と共に軽食や菓子を楽しむ茶会。  伝統的には上流階級における社交行事であり、紅茶と食事の相性、礼儀作法、食器や飾られている花など、教養と社会的地位を表したもてなしの場として催されていた。  しかしこの宝石都市では午後3時~5時までの休憩時間。教養や地位などが関係の無いお茶会に過ぎない。  「なんでこんなことになるかなぁ……」  背後から聞こえるジョシュアの声。その声は酷く疲弊し、悲壮

妖精事件は夜霧の中で ~【5話】【serendipity】セレンディピティ

【serendipity】セレンディピティ   素敵な偶然に出会うこと。また、何かを探しているときに、探しているモノとは別の価値があるものを偶然見つけること。  希望は、いつだって絶望と隣り合わせ。それを決して忘れないで。 「おらぁっ!」  瞬。光。  耳が痛くなるような、重く響く音。  エルネストとジョシュアが同時に相手へ斬り掛かってもすぐに跳ね除けられる。  宝石に覆われた腕。なんとか壊してもすぐに修復されてキリが無い。 「エル!」 「わかってる。いつも通りだ。お前

妖精事件は夜霧の中で ~【4話】【MacGuffin】マクガフィン

【MacGuffin】マクガフィン  登場人物への動機付けや話を進めるために用いられる作劇上の概念のこと。  この物語でいう妖精。しかし、それは仮初の神にとってはただの舞台装置である。そう、例えば巫女と呼ばれた女の子とか。 「そういえば」  帰路、ジョシュアが思い出したように口を開く。 「今日から買い物の量が増えるってヴァレリアさんが言ってたな」 「買い溜めか?」 「新しい節約術?」  アパートの管理人ヴァレリアは1人暮らしのはず。エルネスト達は定期的に、ヴァレリア1

妖精事件は夜霧の中で ~【3話】【magic hour】マジックアワー

【magic hour】マジックアワー 昼と夜が移り変わる時刻。 或いは逢魔時。魔物に遭遇するとも言われている。 誰かがいるようで居ない。でもそれはきっと、気のせいでは無い。ほら、一緒に逃げよう。  幼い頃から、わたしは追いかけっこが嫌いだった。  誰かに追われている感覚だけで身体中が見えない何かに捕まえられそうになる。  あの日の夕暮れ時。  まだ妖精保護機関の傘下にあった田舎の研究所でわたしは過ごしていた。 「おにいちゃん、わたしお外いきたい」 「ごめんな、シャロン

妖精事件は夜霧の中で ~【2話】【開演】かいえん

【開演】かいえん  音楽・演劇・演芸などの催し物を始めること。  対義語は終演。しかし、この舞台は終焉。命の終わりを辿る物語。 「昨日の犯人さー、やっぱりお兄さんだって。殺害動機は……身体を使って稼いたお金で母を救いたくなかった?……うーん」 「風俗反対派か」 「いやー、母親にバレたくなかったとかじゃない?可愛い妹がいろんな男の人とエッチしまくってたらそりゃ――って、おいおい。学園の図書室でする話じゃないだろ!」 「いやお前がしたんだろ」  殺人事件があった翌日の昼下がり

妖精事件は夜霧の中で ~【1話】【運命劇】うんめい‐げき

【運命劇】うんめい‐げき  個人の意志と運命の力の戦い。あるいは運命に翻弄される人々の姿を題材とした演劇。または劇文学。  多くは主人公を破滅させ、悲惨な結末を示す。  しかし、それでも。主人公は運命を否定する。  月夜に躍る影。夜霧の中を揺らぐ人影。 軽い足音。騒がしい足音。忙しない足音がその場を支配する。 「また殺人?今週に入ってもう3件よね?」 「女が野郎に殺されたってよー。浮気とかそういうのじゃねーか?」 「まだ犯人は捕まってないんだって」  ごくありふれた殺人