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「出来ないという」思い込みがパフォーマンスを下げる


はじめに

「どうせ○○○だからできないよ」

この言葉、今まで何千回、何万回耳にしてきましたか?

忌まわしいこのセリフは、予告なしに、しばしば私たちの日々の生活に静かに忍び込んできます。

その一方、

「私はできる!」

このシンプルな言葉には、山のような困難さえも乗り越える魅力的な力がありますよね。いつもこの言葉をお守りのように抱きしめていたいものです。

ところが、時には、人々の期待や、あるいは「こうあるべきでしょう」という謎の固定観念によって、その自信がぐらぐらと揺らぐことがあります。

例えば、女性は数学や科学が苦手だというイメージ。

これに対してプレッシャーを感じると、テストの点数にも影響が出てしまうという研究があります。

また、入試などで田舎から都会の大学を受験する学生。
入試問題とは関係なく都会の華やかな風景に圧倒され、
「田舎者にはつらい」と感じてしまい本番に力を発揮しきれないかもしれません。

こういったプレッシャーは、ステレオタイプの脅威と言われるものです。
自信をくじき、やる気をそぎ、学ぶ楽しささえ奪ってしまう。

最悪の場合、自分の能力を疑い始め、新しいことに挑戦することを恐れるようになってしまうことも。

まさに、やる気ばり下がりに至る病

今回はこのステレオタイプの脅威とは何かを分析し、実際に私たちの身近なところに打開策があることをお伝えします。

君の名は?

ニューヨーク大学の准教授であるジョシュア・アロンソン氏は、スタンフォード大学の心理学者、クロード・スティールとともに、「ステレオタイプの脅威」として知られる現象を明らかにしました。

彼らは、1995年に『Journal of Personality and Social Psychology』誌に掲載された論文で、黒人の学生に、自分たちが受けているテストは「実験室での問題解決課題」であると告げられた場合、白人の学生と同等の成績を取ることを発見しました。

ところが、黒人学生が、テストが「知的能力を測るものだ」と告げられると、同じ試験でも白人の学生よりもはるかに低いスコアを取ったのでした。

この研究は、社会的評価という思い込みが、これらの学生のパフォーマンスに影響を与えるということを明らかにしました。

以後、様々な形でこの実験が行われました。アジア人・女性などの例が有名ですね。数学科の優秀な女性でも、テスト前にジェンダーに関する質問をされた場合、やはりパフォーマンスに影響が出るという研究もあります。

しかし、これは特定の人種や性別に限ったことではないようです。

SATの数学パートで高得点を獲得した白人男性の数学・工学専攻者という、数学に自信のあるグループを対象にした実験では、

「なぜアジア人は数学の能力テストで他の学生より優れているように見えるのか」

について調査していると告げられると、数学のテストの点数が下がりました。このステレオタイプの脅威というのは誰に対しても猛威を振るうようです。

そんなたった1回か2回の暗示でパフォーマンスが変わるのかよ

というもっともなツッコミが飛んできそうですが、その通りです。

実際、変わらない実験もかなりあったと思います。そもそも変わらなかったら論文になっていないし。僕自身も、1回か2回では強靭な学習モチベーションを崩すのは難しいと思います。

ただ、もしこれが日常生活の中で無意識のうちに刷り込まれていたらどうでしょうか。

例えば、学校。あからさまに「特別進学コース」と「頑張ろうコース」と分けている場合。生徒たちは、「どうせ俺ら普通コースだから」と、勉強のモチベーションを失っている現象が日本全国津々浦々で報告されています。

脳科学的な見地からの説明はこうなる

これまで見てきたステレオタイプの脅威というのは文化心理学的な説明でしたが、脳科学的にはどのようなことが言えるのでしょうか。

脳画像を使った研究からは、「できないよ」という脅威にさらされた場合、

感情調節(背外側前頭前皮質)と社会的認知・処理(内側前頭前皮質)
に関連する脳領域が活性化するようです。

https://www.active-brain-club.com/ecscripts/reqapp.dll?APPNAME=forward&PRGNAME=ab_brain_detail&ARGUMENTS=-A3,-A201905,-A20190508154342522,-A

このことは、例えば試験の最中に数学の問題を解くための脳部位よりも、感情を調節し、ステレオタイプに関連して自分自身について考えるための処理が増大することを示唆しています。

脳波研究では、パフォーマンスのための重要な認知資源であるワーキングメモリ能力が低下することが明らかになっています。

やはり、問題を解くために必要な力がどこかに行ってしまうようです。

脳科学の研究から、ステレオタイプの脅威は感情調節、ワーキングメモリ、そして実行制御に関与する部位の脳活動を妨害するらしいです。

このことは、ステレオタイプの脅威が、勉強するとか挑戦するモチベーションに影響を与えるだけでなく、そもそものとしてテストのパフォーマンスに重要な認知プロセスを直接損なう可能性があることを示しています。

簡単に言ってしまうと、無意識のうちにイライラしながら試験を受けている感じですね。なんか気になってしょうがないという状態で頑張る状況です。

社会心理学的見地からも、脳科学的見地からもステレオタイプの脅威はヤバいもののようです。

「できない」と思ってしまう環境からの脱出だ

こんな危険な「思い込み」のお化けからどうやって逃れればいいのでしょうか。

もちろん、ステレオタイプの脅威を与えない環境づくりが大切です。日本の文脈では、女性の理系進出や地方の生徒への手厚い支援など。

(この問題は非常に難しく、ポスコロ関係の人々からは「そういうまなざし」が原因なのだとお叱りを受けそうなのでこれ以上は書きません)

そして、ステレオタイプの脅威が「思い込み」のお化けなので、私たちはより強い「思い込み」で武装することができます。

ヒントは、意外にも身近に。

我らがヒーロー、小島よしおさん登場です。

さぁ、みなん、ご唱和ください

ステレオタイプの脅威?

そんなの関係ねー

そんなの関係ねー

そんなの関係ねー

はい、おっぱっぴー

どうでしたか?

思い込みお化けはびっくりして成仏したことでしょう。

みなさまよき日をお過ごしください。

おっぱっぴー

【一応、参考】


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