アキラ師

元男娼。 Real Life 4 Real People The Suburbia主宰 記事は2007〜2021年までのアーカイブと、新しく書いたものが混在しています。2021.11.01start

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      お前をレスキューしてやるよ。そんな日々のこと。R18

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    血管をなぞるように理解する夜④【2015年】

    18歳で東京に移り住んでも、最初の2年くらいは基本的にアパートと新宿のごく狭い地域しか知らなかった。 まだ幼かった俺は、時間を見つけてはあちこち探検するような性格はしていなかった。心に病気を抱えていたので、新しい環境では毎日同じことを繰り返すのがやっとだった。 だからほんの狭い世界で怯えながら生きていた。目線を外して遠い景色を見ることすら怖かったのだと思う。 電車も毎日決まった路線と駅しか使わなかった。いつも決まった地下鉄の入り口から階段を降り、決まった号車に乗り込み、決

      • 【Love Rescue】血管をなぞるように理解する夜③(2015年)

        20代の終わり。俺はまた結婚しようとしていた。 記憶が薄いガキの頃から家族というものに恵まれず、家族のような形だけの環境で育った。 その家族のような「箱」には、愛とか安定とか当たり前とか永遠というものは存在せず、あったのは暴力と絶望と貧困。明日の朝もおはようと言える、明後日もおはようと言える、10年後もきっとおはようと言える、そういう期待を許してくれる「箱」が家族なのだろうとずっと考えて育ってきた。 18歳から夜の世界にいて、22歳の時に普通の大卒のやつらと同じ年で、就職

        • 【Love Rescue】血管をなぞるように理解する夜②(2015年)

          18歳の冬のはじめ。生まれ育った八戸の街でのこと。 当時付き合っていた女の子と、海の見える高台に向かった。さっきまで吹きすさんでいた雪が止み、青空が広がろうとしていた。 「アキラのそのジーンズなんだけど。」女の子が俺に言う。 「うちのお父さんが駅でアキラを見かけたみたいで、その穴が開いたズボン、気に入らないみたい。」 「そうか。別に構わないけど。」 俺はその当時、ジーンズを一本しか持っていなかった。 中学二年の時に、実の母親が俺に買ってくれたリーバイス501だった。

          • 師匠との付き合い方

            ほんの若いころ、俺にも師匠という存在がいた。 アダルトのビジネスでのことで、まあ仕事のノウハウを持っていて、それを学ぶために弟子になったはずだった。 しかし「師匠」は本当に無能で(笑)教えてくれるノウハウは薄っぺらかった。何を教えてもらっても奥行きがない。 わざと薄い情報を渡されて、俺は試されているのかと思ったほどだ。まるでベスト・キッドのラルフ・マッチオのように。 しかし、本当に何も持っていなかった。なんなら師匠自身のビジネスが全然上手くいっていなかった。 自分のビジネ

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            【LoveRescue】血管をなぞるように理解する夜①(2015年)

            例えば20歳のとき。 あてもなく東京に出てきた俺には金がなかったので、夜の仕事を続けていた。俺がいた世界は今どきのように決してカジュアルなものではなく、カッコいいものでもなく、もっと暗闇の中で欲にまみれた青紫色の世界だった。 そこでは過去の記憶と金と死が支配していた。目つきが悪く金を狙おうとする男と、笑っても目が死んでいる派手な女と。苛立ちと乾いた笑いで誤魔化す過去の話と。 たった来年のことさえ、それは予定ではなく、寝てみる夢に過ぎなかった。来年は、死んでいてもおかしく

            過去を拒む人たちと、未来の約束をする

            夜の仕事の女性たちと、多くの時間を過ごす仕事をしてきた。日が暮れる頃から早朝まで、女性性を濃縮したような人たちと。 正直なところ、夜の女性たちは決して論理的な思考の持ち主ではない。不特定多数の男の前で服を脱ぐ仕事に論理など要らない。頭のネジが数本外れていて、計画性が全くなく、おまけに想像力も乏しい。深いことを考えずその場の気分で行動する人たちがやる金もうけが風俗嬢なのだ。 しかし勘違いされないように言うが、彼女たちの多くは優しい。そして明るく、多様性を受け入れている。他人を

            ぎこちなく眠る深夜2時に

            「見て、私の顔。幸せそう。」   そう言って、俺に写真を見せた。それは春、桜が満開に咲く公園で笑顔で映る女性の姿。撮影したのは俺。   俺は自分の怒りがコントロールできなくなって、彼女を責めていた。なぜ怒ったのかなんて分からないし、たぶん、大したことじゃないのだろう。きっと俺はひどい言葉を彼女にぶつけたのだと思う。もう別れると騒いだのだと思う。 「別れたくないよ」 そう彼女は言い、俺に写真を見せたんだ。   俺はその写真を見て心で泣いた。申し訳ないと、ごめんと

            あなたから教わるとは、自分と向き合うということ

            最近、コロナ禍になってから久しぶりに居酒屋に行った。 友人であるフランス料理店のオーナーシェフと、ちょっとした親睦会で知人数人で飲もうということになった。 会場は最近オープンしたちょっと小洒落た居酒屋というか小料理屋というか。知人の女性が店主だったので俺が予約をした。 親睦会の当日、店はそこそこ混んでいた。コロナ禍でこれだけ客が入っているのはなかなかいいねという話をしながら、生ビールを飲んでお通しをつまんでいた。 しかし、料理がなかなか運ばれてこない。乾杯から15分が過ぎ

            伝わらないことでも伝わっていく

            とても生きづらそうな後輩がいる。 20代はじめの女性。 名の知れた名門私立高校を卒業し、誰もが優秀だと認める某国立大に進学したという。 ここ数年一緒に仕事をしているが、とにかく有能な女性だ。 コーヒーを飲みながら雑談をしているとき、彼女は「生きづらいんですよね」とこぼした。 俺はどう生きづらいのか質問するのだが、彼女からはっきりした答えはない。何か答えはあるはずなのに、言うのを控えているように見えた。 しかし、 「コミュニケーションが難しくて」 彼女はそう言ったのだ。

            男とは加害者である。

            男性とは、加害者である。 それはその人が何をしたというレベルの話ではなく、もっと数千年に及ぶ歴史の上に立つ、男性という存在の根源的な意味で。 例えば人間が人を殴らなくなったのは、この日本でもほんの30年のことだろう。今の50歳代以上は、日常的に暴力行為を目撃していたと思う。 些細な喧嘩で他人を殴る男、子供を好き放題殴る教師、指導と称して選手を殴る部活顧問、言葉が不自由なのか殴らないと部下に仕事を教えられない上司、とかね。 現代では少なくともまともな知性の人たちは他人を殴っ

            【Love Rescue】ドーナツ④

            店を出るともうすっかり陽が暮れていた。元町の夜の華やかな明かりの中に俺はいた。俺が住んでいる東京と比べたらほんの少し空気が違う気がしたのは、近くに海の気配を感じたからかもしれない。 ほなみさんは俺の腕に手を回した。「細いと思っていたけど、意外と筋肉質なんだね」 俺が筋肉質だったわけじゃない。毎日ろくなもんを食べてなくて痩せこけていただけなんだけど。 俺はてっきりラブホテルに行くものだと思っていたけど、歩いて着いたのは山下公園と海が見える老舗のホテルだった。俺はそんなホテ

            【Love Rescue】ドーナツ③

            次の日の朝は、曇り空なのにひどく蒸し暑かった。 朝5時から隣の部屋からはまた女の喘ぎ声が聞こえた。喘ぎ声と、ベッドが動く音、男が何かしゃべる声。 俺はベッドに転がって、ずっと天井を見ていた。 毎朝考えてしまうのは、あの高校時代の彼女のこと。昼はバイトで忙しいし、夜は夜で知らない街をぶらぶら散歩しているだけで気が紛れていた。でも、朝になれば考えてしまう。朝になれば俺の心は無防備で、心が切り裂かれそうになってしまう。それはきっと、高校時代はきっと朝起きたら真っ先に考えるのは

            【Love Rescue】ドーナツ②

            東京で初めてやったバイトは、アパートの近所にあったダイエーだった。当時は球団さえ持っていた会社が経営する巨大スーパーだったが、18歳の俺がする仕事は野菜と果物の品出しだった。ダンボールから茨城産のサツマイモとか取り出しては陳列する。勤めて30分でこんなバイトを始めたのを後悔した。やる意義を全く感じないつまらない仕事。奴隷がやる仕事だこんなの、そう思った。 一方でこのつまらない仕事に意欲を燃やす若い社員がいた。 「キミ、キャベツの並べ方を教えよう。こうして芯を縦に揃えて積み

            【Love Rescue】ドーナツ①

            18歳で初めて1人で暮らし始めた部屋には、電話がなかった。 携帯電話もポケベルもある時代じゃない。固定電話しかない時代で、固定電話の回線を引くためには高額な加入権が必要だった。そんなもの青森から出てきた金のない18歳には贅沢品でしかなく。 俺は東京の片隅のアパートで、テレビも電話もない生活を始めた。当たり前だけど俺を訪ねてくる人は誰もいない。音がするものはヘッドホンで聞いている音楽だけ。それと、隣の部屋から聞こえてくる女の子の喘ぎ声。隣に住んでいるのは大学生風のカップルだ

            他人と自分の許し方

            長い夢を見た。 23時にベッドに入り、寝転んで本を読んでいたがいつのまにか寝てしまった。 暖房をつけっぱなしで、ベッドわきの読書灯も消していなかったらしい。 古いビジネスホテルのような生ぬるい空気の部屋で、俺は寝苦しさを感じながら長い夢を見ていた。 夢に出てきたのは、何年も前に別れた古い恋人だった。 別れる時に遺恨を残した関係だった。 恋人は20歳以上も年が離れていたけれど、頭が良く、天真爛漫でお喋り上手。そんな人だった。 当時は寝る前に1時間ほど電話をしていた。毎日、

            モテとは信仰である

            Twitterなどでよく見かけるのは、「人間なんて信用できない!」「謝っても許さない!」という言葉だ。人間なんて人間なんてと随分と幼稚な悲鳴をあげている。 いつまでも何を言っているんだと、俺は白目を剝いてしまう。 何を当たり前のことを吠えているのだと。いつまでそこにいるつもりなのだと。 人間なんて信用できるものではないし、謝ろうが許したくない人間などごまんといるものだ。 当たり前の話だ。 しかし、問題はそこからである。 俺は人間を信じているし、謝る人間を許そうとしている