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「きっと、大丈夫。悪いようにはなりません。いつか笑って話せます。あなたの寂しかった日々が、誰かを助ける日が来ます」【対岸の家事(朱野帰子 著)】中編

前回の続きになります。
対岸の家事(朱野帰子 著)についてです。

本書に描かれていたのは、専業主婦の苦悩だけではありません。
バリバリに働くママが、会社では迷惑がられ、家庭では誰にも感謝されず、常にギリギリの状態でなんとか毎日を生きている、という描写が描かれています。

「あなたのために予定を合わせて会議を設定しているんですよ」
と、言われ、すみません、と頭を下げるたびに自分が縮んでいく。
子供なんか産んですみませんと、口の中でつぶやく。
でも、これからの社会は誰の世話もしないでいい人たちを中心に回っていくのですか、という言葉も喉まで出ている。

対岸の家事(朱野帰子 著)

子供なんか産んですみません、じゃ、ないよおおおおおおお
そんなこと言わせんなよ!(これはフィクションです)
でも全然フィクションでも他人事でもない。
認められた制度であるにも関わらず、もし周りが非協力的だったり理解が無い場合、その制度を育てる側になってやろう、という姿勢が大切だと本書は訴えます。
リリースされたゲームを、ユーザーがレビューを重ねていくことでクソゲーを神ゲーへと鍛えていくのと同じ。
育休や産休という制度についていけないのであれば、どんどん社員が利用するべきなんだと。
そして、本当に限界な時は、ちゃんと周りに頼ること。
自分が一歩前進する時、自分の予想とは裏腹に、その姿勢は周りに影響を与えるから。

雨だ。
これは海の上に降る雨なのだ。
自分はそこに通りかかった船なのだ。
見る人がいなければなかったことになってしまう涙。
それを今、自分は見ている。
給水タンクの上で泣く礼子を見て、詩穂もこんな気分だったかもしれない。
だから助けてくれたのだろう。
会社でも、プライドも過去の栄光も捨てて弱音を吐くことができていたら、もっと助けてもらえたのかもしれない。
でも礼子は耐えてしまった。
強がってしまった。
だから、イマイも強がるしかなかった。
一人で泣くしかなかった。
雨を見てしまった以上はなんとかしなければ。

対岸の家事(朱野帰子 著)

誰かにパワーを与えたり、元気づけたり、いい栄養を与えるのって、キラキラした誰かの順調な毎日だけじゃない。
自分の苦しみを吐き出したり、「助けて」と言える正直さ、勇敢さが、物事を前進させる力を持つこともある。
だから、私のような子育て経験のないOLが出来ることは、まさに今子育てとキャリアに奮闘している人たちがSOSを発せる環境作りを目指すことだと思います。
その環境を作れたら、助け合いが当たり前になって、職場環境のせいで子供を諦める人が減るかもしれない。
案外、自分のSOSが回り回って自分を助けるもんなのかもしれませんね。

いや、ちょっとこの、キャリアと育児の両立でいっぱいいっぱいになってしまう礼子というキャラには心が入り込んでしまってほっとけないキャラなんです…。
元々バリバリに一流企業で活躍するようなポジションで、自分にだったら何でも出来ると思っていた礼子には、育児の大変さ、大人の常識の通じなさが衝撃だという描写がされています。
元々専業主婦の詩穂をバカにしていましたが、ある日熱を出した下の子のために激務の中なんとか早退&帰宅したところ、上の子に内鍵をかけられ、ベランダの柵によじ登っている子供を間一髪で詩穂に助けられ、仲良くなります。
その時、内鍵をかけられた礼子が「ゲームオーバー」とつぶやくシーンがあります。
その言葉がすごく重いよお…というのも、
毎日正気でいられないほど目まぐるしく、不安定で、頼れないから味方もおらず、「今日もなんとか子供を死なせなくて済んだ」の繰り返しをして、なんとか生きていた礼子から出た、心からの諦めの言葉なんです。
そのSOSを見てみぬふりしなかった詩穂、偉い!
そのSOSの拾いあい、そして発信しあいで、このクソゲーな世界をアップデートし続けたいものです…。
そう、そのために、SOSを発信する勇気が必要、そんな勇敢な人に、私はなりたい、と心から思うのです。

うーん…
まだまだ書き足りないので、次で最後にします!(爆泣

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