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第145号『心休まる瞬間は“今”や無いっタイ?』

私は父親が建設業のサラリーマンだったこともあって、子供の時は転校が多かったです。

幼稚園も2回、小学校も2回、中学校も2回、変わっています。

そのせいか、自己紹介が上手くなったり早くクラスメイトと仲良くなったりするスキルが身に着いたようにも思います。

反面、卒業式で泣いたことがありません。

全くもって一度も無いです。

その学校に対する思い入れが薄いためなのか、もともとの性格なのか。

“なんで卒業式でみんな泣くんだろう?これから新しいステージに向かうのに何をそんなに悲しむんだろう?(友達ともう会えなくなるワケでもあるまいし)”

泣いてる女子や男子を横目にそんなことを思っていました。

そして、もうひとつ。

よく漫画の設定でも出てくる【幼馴染】という存在がひとりもいませんでした。転校するたびに新しい環境で新しい友達ができるのと、いくら前の学校で仲が良かった友達でもだんだん疎遠になっていく為“子供のころから一緒に大きくなったような幼馴染”という存在とは無縁でした。

*****

先日、高校の時の同級生から珍しく連絡がありました。

“最近どげん?”

同級生らしい短い文章で実に男らしいメッセージでした。

“相変わらずいっぱい仕事しよるよ”

と返すと

“忙しかろうけど、久しぶりに飲まんや?”

とお誘いを受けたので、スケジュールを確認して福岡で飲む日をセッティングしました。

彼は高校1年の時の同級生で、そのまま大学(九州産業大学)も一緒でした。(彼は中退しましたが)

こちらの記事でも書きましたが、私の時代はまだヤンキー系の人間が多くて彼も割と仲良くしていたその仲間の内のひとりです。

名前を“三善さん”といいます。

同級生なのになぜかみんな彼のことを“ミヨっさん”と呼んでました。

たぶんこの時代独特の感性なのかもしれませんが、なぜか彼だけは同級生から“さん付け”で呼ばれていました。『ろくでなしBLUES』で前田太尊が周り(同級生や先輩)から“前田さん”と呼ばれていたことと通じる部分かもしれません。

ともあれ、先日そんなミヨっさんと二人で飲んだ時のエピソードです。

*****

“あんま気ぃ使わんでいい焼鳥屋とかがよかね”

と言われたので焼鳥屋に行きました。

男二人で焼鳥屋のカウンターで鳥皮をツマみつつ、焼酎のお湯割りを飲みながら近況を語り合いました。

ミヨっさんの仕事はビルの窓ふき清掃を個人でやってる(フリーランスの)個人事業主。自分で仕事を取ってきて、高層ビルの外側にゴンドラでぶら下がって清掃するあの仕事です。

奥さんと子供ふたりを養っています。

私との付き合いも長くお互いの性格は理解しあってはいるものの、ミヨっさんはゲーム業界やエンターテインメント業界のことはさっぱりです。

私がゲーム開発会社サイバーコネクトツーの代表をやっていることはもちろん知っていますが、その仕事内容にはピンときていません。

“ゲームってどげんやって作りようとや?”

といつも聞いてきます。

簡単に説明しても、やはりピンとはきていないようです。

こういう時に私はいつも“ゲーム業界のことを一般の人に説明する時の難しさ・このハードルの高さをなんとかしないとな”と感じてしまいます。

“まぁ、ようわからんけど順調なら良かったタイ”

って言われて

“いや、やからミヨっさん、話聞いとった?順調やなくて毎日必死になんとかしよる毎日なんやって!結構意外と泥臭く仕事しよるばい、本当に必死なんやって!”

って返すと

“いや、まぁ、やっぱりようわからんけど、こげんして顔ば見ながら久しぶりに話すと、なんか松山が元気そうで安心したばい”

って言うので

“まぁ、元気っちゃ元気やね、元気やないと仕事できんけんね”

そういうとふとミヨっさんがこんなことを言い始めました。

“ばってんさ、松山ー、そげんいっぱい仕事しとって「お前自身が心休まる瞬間」ってあるとや?”

そう言われて、自分自身ふと考えてみました。

“「心休まる瞬間」?なんだろ?”

休みたいとも思わないし、休日も祝日も誰かと会ったりイベントに行ったり、会社に行って仕事したりしている普段の自分の生活を振り返ってみて考えてみました。

“一体いつなんだろう?”

そう考えた時にパッと頭に浮かんだ“答え”をミヨっさんに話しました。

“んー、やっぱり俺はなんだかんだ漫画を読んでいる瞬間かもしれんね、移動中とか寝る前のベッドの中とかで漫画を読んでる時は他のことを考えずに夢中になって読んでる気がするばい、やっぱなんだかんだ漫画やね、俺は”

そう伝えるとミヨっさんは

“ふーん”

“今オレと一緒におるこの瞬間」や無いっタイ?”

と言ってきたのでした。

“・・・・・・・・・・・・。”

一瞬考えた後に理解して、お互いに“ぷっ!”っと噴き出した後に大爆笑しました。

“全く油断のならない同級生やなぁ”

そんなことを思いながらも、実際に数えてみると高校一年生=16歳の頃からの付き合いなので、もう32年くらいの腐れ縁の関係だ。

“自分には幼馴染がいない”

そう考えていたけど、よくよく考えたら32年来の友人こそ“幼馴染”っていうんじゃあないのかな、としみじみ思いながらその日も遅くまで二人で酒を飲みましたよ。

お互いに年を取って“あの頃”とは環境だって立場だって抱えてる事情だって全然違うけど、どれだけ久しぶりに会っても瞬間的に当時と変わらない関係性と距離感が戻ってくる不思議な感覚です。

次に会うのはいつになるのかわかりませんが。

また、ミヨっさんに会う時までに“誰にでもわかるゲームのお仕事”を説明できるスキルを身につけておこうと思いました。

西中洲にある小さな焼鳥屋さんですが、丁寧に1本ずつ焼いて最適な頃合いで出してくれるすごく雰囲気が優しく、そして美味しい焼鳥屋さんです。

あとお酒も美味しいです。日本酒から焼酎まで色々と出してくれます。

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私もそんなあなたが大好きです!ありがとうございます。
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株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役 ゲームソフト開発タイトル代表作『.hack』シリーズ 『NARUTO -ナルト- 疾風伝 ナルティメット』シリーズ 『ジョジョの奇妙な冒険』 著書『エンターテインメントという薬』『熱狂する現場の作り方』漫画『チェイサーゲーム』

コメント2件

『バーバーハーバー』て小池田マヤセンセイのマンガ作品の中で、『男とか女とか関係なくこの先ずっと会わんでもアイツは俺のツレや』てセリフがあって多分松山さんにとって“ミヨっさん”はそういう存在なのかなぁと思いました。関係者ともファンとも違うそんな存在なんでしょうね。
そんな二人の前途に一曲
思えば遠くへ来たもんだ
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