見出し画像

第328号『ゲームの開発中止が決まる時』

1本のゲームソフトの開発には膨大な時間とお金がかかります。

モノにもよりますが現在だと、開発は数百人規模で3年~4年以上の時間をかけて制作されることも少なくありません。お金(開発費)にするとそれだけでも数十億円もの予算が必要だったりもします。

そうやって生み出されるはずだったゲームソフトが開発中止になることだってあります。

一般の方からすると「ええっ!?あのゲーム開発中止なの!?急になんで!?」と思われることでしょう。

それが有名なIPタイトルのシリーズ最新作なんかだったりすると尚更かと思います。

こうした開発中止はいったいなぜ起きてしまうのでしょう?

*****

場合によっては、世の中に対して発表してその存在を明らかにしていたにも関わらず開発中止になることだってあります。

このケースの場合は単純に『制作して完成間近で予約&受注を取ったけど全然注文が集まらなかったから販売そのものを中止しました』という事情が多いです。

あまりにも注文が集まらなかったために『売る前から赤字が確定してしまった』というケースですね。

素人目に考えると「いくらそれが少なくてもちょっとでも売ってお金にして回収したほうがいいんじゃないか?」と思われがちですが、モノを売るのにも体力と時間と労力=お金がかかるものなのです。

極論になりますが『これ以上赤字を膨らませない』ために売らない選択をするケースが存在するということですね。

こういったケースは大手企業に多く見られるパターンで、そういう企業は他にも売るべきタイトルがあって『売る前から赤字確定のタイトル』に時間と労力=お金を費やすくらいならちゃんと売れるタイトルにその労力を正しく割くことを考えよう!という前向きな考えだったりするのです。

*****

そもそも冒頭でお伝えした通り、ゲームソフトの開発にはとんでもない予算と時間と労力を要するので始める前に物凄く入念にチェックや検討が行われるものです。

誰が作るのか?どんなゲームなのか?その商品に市場性はあるのか?売ったとしたらどれくらいの利益が出るのか?それを商品として完成出来る実現性はどれくらいあるのか?

こういったことを何度も何度も議論して検討を重ねた上で契約を結んでようやく開発はスタートするのです。

この検討や議論にかける時間は(内容や規模にもよりますが)6か月から1年ほどかかるケースだってあります。

そういった議論を重ねた上でようやくゲーム開発がスタートしてもなお、それでも開発中止という判断が下されてしまうケースがあります。

そしてそういったタイトルはだいたい開発の途中段階(未発表)であることが多いのでまだ世の中にも発表されていない段階で人知れず消えていくケースが多いのです。

では、なぜそういった開発中止は起きてしまうのでしょうか?

契約前に何度も議論を重ねてようやくスタートしたはずなのに?

いったいどんな事象が起きると開発中止という判断が下されてしまうのか?

*****

これまでにサイバーコネクトツーが手掛けてきたゲームソフトは一つ残らず開発中止になったことが無くて、全てのプロジェクトがちゃんと完成して発売しています、……と言いたいところですがやはりそんなに現実は甘くはありません。

サイバーコネクトツーでも過去に開発中止になった案件があります。

「え、そうなの!?あるの!?」と思われるかもしれませんが、それは仕方が無いと思います。

だって言ってませんから。

今回は記事のテーマに則して、サイバーコネクトツーにおける過去のそういった開発中止案件についてお話したいと思います。

過去25年間の歴史の中で開発中止(もしくはそれと同等)の案件は3つほどありました。

3つのプロジェクトはそれぞれ時代も異なりますし、なんの共通点もありません。全部バラバラの案件であり中止となった理由も全部異なります。

機密保持の観点からなるだけ違反にならない表現でお伝えしますので、どちらかというと『そうならないために何をすれば良いのか』を知っていただく学びの材料になれば幸いです。

たぶん書いているこっちも読んでいる側もかなり気分がよろしくならない内容だと思いますので、張り切らずにいきましょう。

ゲームの開発中止が決まる時

一口に開発中止といっても少しずつケースが異なります。①完全に開発中止となるパターン、②途中まで開発したけどここから先は開発会社が変更となるパターン、③途中まで開発したけど契約内容を変更してまるで違うものに作り直すパターン、などに分けられます。

ここから先は

2,564字

¥ 300

この記事が参加している募集

業界あるある

良かったらサポートいただけると嬉しいです。創作の励みになります。