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第220号『ミリアッシュ竹谷彰人:オリジン』

最初に違和感を覚えたのは飲み会の最中だった。

その飲み会ってのは数年前でマンガ新聞の定例会の後の飲み会だったような記憶がある。

いつものように焼き鳥屋に集まってハイボールを飲みながら10人くらいのマンガ好きが最近読んだマンガの話やゲームや映画の話をしているような、本当にいつもの日常的な飲み会だった。

“いつもどおり”ってことはいつも通りという意味でほぼ毎月繰り返されるようなお互いの近況報告やくだらない話も含まれるということ。

酒が入った状態の大人の飲み会ってのは“あれが好きこれが好き”という話もあれば、中には“最近こんなことがあった・こんなムカつくことがあった”という話題も当然出てくるものだ。

その中に――その男・ミリアッシュ竹谷もいた。

ミリアッシュ竹谷の会社『株式会社ミリアッシュ』はイラスト制作会社。

ゲームアプリ用のカードイラストを大手メーカーから受託してそれを全国に点在するイラストレーターに発注してそのクオリティをコントロールしたりスケジュールを管理したりしてまとめて納品するような仕事をしている。

最初に違和感を覚えたのはそういった飲み会の席だった。

気になったのはミリアッシュ竹谷の言動だった。

「それはまるで〇〇ですね」

なんて何気ない相槌から

「それテストだったら0点ですよ」

というツッコミを含めてもやはり何か違和感がある。

“なんだ?”

最初はふと感じる程度の違和感だったがだんだんと確信に変わってくる。

どれだけ会話を重ねてもその相手が誰であってもミリアッシュ竹谷の言動には一定のルールのようなものがあることに気づいた。

それは――

“ミリアッシュ竹谷の発言は【誰も傷つけない】ということ”

最初は本当にただの違和感レベルだったけど途中から気にして観察しながら見るようになっていった。

“それ”はやはり正しかった。

何度話をしても聞いてもミリアッシュ竹谷から発せられる全ての言葉に“誰かを傷つけるようなニュアンス”が一切感じられない。

“なんだこれは?”

違和感が確信に変わってからはかなり気にするようになっていて、その後の別の飲み会の席でもミリアッシュ竹谷の会話を気にして観察するようになっていった。

しかし、どの現場・どんな飲み会でもミリアッシュ竹谷は変わらなかった。

決して言葉数が少ない訳でもない、なんなら割と会話の中心にいがちな私や小林琢磨にもバンバン突っ込んでくるし、かなり自分自身の意見も言うし、その場にいないような他人の話だってする。

それでも――やはりミリアッシュ竹谷の口から“人を傷つけるような言葉”や、いわゆる“人の悪口”が出てくるようなことは無かった。

別に“飲み会の席くらいもっとフランクにいこうぜ、ミリアッシュ竹谷よ”なんてことが言いたいわけではない。

私自身これだけ生きてきて今まで色んな人間と出会ってきた中で“違和感を覚えるほど人を傷つけない人間”に出会ったのが初めてだったので不思議だったという話だ。

(それほど特にゲーム業界の人間たちは集まればすぐ人の悪口を言うしょーもない連中だらけだったってことになるのだが)

先日ふとそういったことをミリアッシュ竹谷も知る共通の友人に話したところ、ミリアッシュ竹谷のルーツのようなエピソードを聞く機会があった。

その友人いわく

「私も実はそれが気になっていて。というかミリアッシュ竹谷さんっていっつもどんな飲み会にも顔を出されるじゃないですか?普通何度も会って一緒に飲んだりしてるとちょっと勢い余って失礼な発言だったり言葉のアヤだったり人の悪口だって飛び出してもおかしくないのにそれが全然ミリアッシュ竹谷さんからは出てこない。だから“なんでミリアッシュ竹谷さんってそんな暖かいというかみんなの調和を保つというか、ぶっちゃけ人の悪口とか言わないじゃないですか?なんなんですか?性格?”って聞いてみたんです。そしたら“昔はそうじゃなかった”って言ってましたよ」

「“昔はむしろ毒を吐くようなタイプで人の悪口なんかもバンバン言ってました。けどそれはもうやめたんです。ミリアッシュという会社を設立した時に私には部下が出来て。その時に誓ったんです。私は彼らの代表であり彼らが力を発揮して気持ちよく仕事をすることを阻害する行為は一切やめようって”っておっしゃってましたよ。昔のミリアッシュ竹谷さんがどんな人だったのかってことにも興味はありますけど、やっぱり素敵な人ですよね」

“本当にそうだね”

そのエピソードを聞いて私はそう答えた。

そして少し考える。

もちろん私自身も人の悪口陰口は言わない(意見は言う)ようにしてるけど、それにしても極端なほどの完成度だ、ミリアッシュ竹谷のそれは。

だからその友人が言うようにミリアッシュ竹谷はどの飲み会や集まりにいてもみんな居心地がいい感じがする。

まるでこの世で一番優しいスタンドのように。

たぶん今日もミリアッシュ竹谷はどこかの誰かと一緒にいるんだろうけど、誰も傷つけないんだろうな。

【ミリアッシュ竹谷彰人:オリジン】-ミリアッシュ竹谷は傷つけない-


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株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役 ゲームソフト開発タイトル代表作『.hack』シリーズ 『NARUTO -ナルト- 疾風伝 ナルティメット』シリーズ 『ジョジョの奇妙な冒険』 著書『エンターテインメントという薬』『熱狂する現場の作り方』漫画『チェイサーゲーム』
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