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第324号『幸福は創造の敵』

ネットフリックスで『全裸監督』のシーズン2の配信が始まりました。シーズン1も楽しく拝見させていただいたのですが、シーズン2は前シリーズ以上になかなか衝撃的です。恐らくは意図的に名セリフというかメッセージ性を高めるような言葉がたくさん使われている印象です。

「人生は喜ばせごっこ」

シーズン2の冒頭で主人公がこんな言葉を口にします。「だからもっとみんな男も女も自分を解放して性に奔放になろう」というAV業界を作ってきた男らしいストレートな言葉だと思います。

そしてちょっぴりユニークな言い回しです。このへんの親しみやすさも本作の主人公・村西とおるの魅力なのかもしれません。

『放送禁止のパイオニア』なんて異名は確かに村西とおるにしか形容されませんね。それが何であれやはりその時代を突き抜けることで駆け抜けた人を私は尊敬します。『全裸監督』というドラマは実在した人物をモチーフに作られてはいてもあくまで脚本があって演出がある物語となっています。

シーズン2で『全裸監督』という物語は完結します。最後まで観れば必ずシーズン1をもう一度観たくなる作りになっています。“一つのことを極める・登り詰める”というテーマには必ず代償があって、本作もその頂点からの転落と這い上がり方が見どころとなっています。

*****

現在公開中の劇場アニメ『映画大好きポンポさん』でも実は同様のテーマが描かれています。「何かを得るためには何かを失う」なんて言葉は今どきだとナンセンスになってしまうかもしれません。

しかし、やはり何かを背負って魂を込めて作品を生み出すことって狂気を孕んでいるんです。

それを『ポンポさん』ではポスターに堂々と謳っています。

「幸福は創造の敵」

なんてストレートで時代錯誤なメッセージなのでしょう。原作漫画の中でも同じメッセージを出しているので全く違和感は無いのですが、正直このコピーを見た時は驚きました。

いや、わかってるよ?『ポンポさん』だからね?そういう作品なんだから。けどかなりの覚悟が必要だったと思いますよ、このコピーを決定するのって。よく反感や否定的な意見を突破してこれたもんだと感心します。

さて、後半部分はそんな『ポンポさん』にまつわる裏話というか、私自身が思っていることも含めて言葉にしていこうと思います。

たぶん、「ゆっくりのんびり生きていきたい」とか思ってらっしゃる方は読まない方が良い領域の話ですのでお気を付けください。

『幸福は創造の敵』

私は劇場アニメ『映画大好きポンポさん』を世の中の人よりも少しだけ早く観ることが出来ました。関係者試写で観たからです。「え、関係者なの?」と言われるともちろん直接的な関係者ではありませんよ。

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