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0.何ミリグラムの安心

0.4ミリグラムの安定剤を 半分に割る
これを飲めば かならず
0.2ミリグラムの安心が わたしを満たす

思うように割れなくて
半分よりも小さくなった 白い錠剤のかけら
これは一体 0.何ミリグラムの安心なのだろう


だれかに抱きしめられるとき
だれかの隣で眠りにつくとき
だれかの声に包まれるとき

その瞬間は一体 どれほどの安心で
わたしを満たしてくれるのだろう

きっと こんなにも小さな錠剤にすら
かなわないほどの ちっぽけなものだ

外から 他人から 与えられるものなんて
いつかは足らなくなる あっけなく消え去る
だからそれは
0.何ミリグラムにも満たない安心

わかりきっているものがいい
手に負えるものがいい
必要なときに 必要なだけの量を
このからだと こころに 与えられればそれでいい


あのひとは どれほどのものをくれたのだろう
わたしは どれほどのものを望んでいたのだろう

どんな量でも すぐに効き目が切れても
手に負えなくても なんでもいいから

こんなにも小さな錠剤とは
くらべものにならないほどの
あのひとがくれる 安心で
わたしを満たしていたかった

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