まもるンち

お話を書くことが大好きです。カクヨムでも他の作品を連載中。そちらもご一読いただけたらと…

まもるンち

お話を書くことが大好きです。カクヨムでも他の作品を連載中。そちらもご一読いただけたらとてもとても嬉しいです。→X(Twitter)のリンクから飛べます。 ※無断転載はお断わりしています。

マガジン

  • レオンファミリー

    • 4,239本

    共同マガジン|レオンファミリーの誕生日は2024年5月19日。 参加者は200名以上。 目的は愛を届けること。この一点。 トップの表示の文言やタイトル画面は変更しないでほしい。 変更された場合、予告なくマガジンから追放することがあるから注意。 詳しくはこちらから。 https://note.com/leon0812/n/ne50160a3b856?magazine_key=mfb3685bde725

最近の記事

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恐怖の手触りをさぐる ~このコンテンツの主旨について~

怖い話が好きだ。 人に聞かせるのも、人から聞くのも好き。 ホラー小説もホラーマンガも読む。ホラー映画も観る。 では怖がるのが好きかというと、別にそうでもない。 僕はものすごく怖がりだ。 だからこそ、恐怖という感情の正体を暴いてしまいたいのかもしれない。 恐怖の正体を知りたい。 だから少しでも多くの恐怖に触れるため、色々な人から話を聞いた。 その人自身が経験した怖い出来事について。 その人の友人が経験した不思議な出来事について。 ここにはそういったお話を、できるだけ脚色しな

    • lullaby その5

      ドアを閉めているから聴こえないのではない。 確かに泣き止んでいる。 そして。 違う音が聴こえる。 違う声が聴こえる。 懐かしいメロディーが。 RとWさんしか知らないはずのメロディーが。 誰かが歌っている。 思わず哺乳瓶を取り落した。 幻聴かと疑った。 俺はこんなにこっぴどくアルコールにやられたのか、と。 だが、違った。 確かに聴こえる。 生まれてはじめて書いたオリジナルソングが。 その歌は、チャゲ&飛鳥のそれに似ていた。 まぎれもない。 Wさんの声だった。 (……幽

      • lullaby その4

        『覚悟していたこととはいえ、 彼の落ち込みは相当なものだったようです』 食事の量も減り、Rはげっそりと痩せた。 「しばらくウチに預けたらどう」 Rの母親はそう言った。 だが彼は断った。 昼間はずっと母親が赤ん坊を見に来てくれていたが、 夜、仕事が終わると必ず引き取ってアパートに帰った。 Wさんと二人で育てると誓ったのだ。 彼女が命を懸けて産んだ赤ん坊なのだ。 どんなに苦労しても、 必ず自分の手で立派に育ててみせる。 Rは心にそう言い聞かせた。 とはいえ、 若いRに単

        • lullaby その3

          『そうならないように二人とも気を付けていたんです。 ……でも』 その夜に限っては、 Wさんが愛しすぎたようだ。 愛し合っているからこそ避妊は徹底していた。 しかしその夜だけは、 たかだか0.03ミリの化学物質に互いの体温をほんの少しでも奪われたくはなかった。 それほどまでに、美しすぎる夜だったのだ。 その日は、Wさんの誕生日だった。 「俺と結婚してほしい」 Rは言った。 もし子供ができていなくても、 卒業したら絶対にプロポーズする気だった、と。 Wさんは大きな目で数秒間

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        記事

          lullaby その2

          Rはしばらくののち、 初めてのオリジナルソングを書くことになる。 “LOVE SONG”が何とか弾けるようになり、 自信をつけた彼は無謀にも作曲にチャレンジしたのだ。 たった一曲しか弾けないのにオリジナルなんて大丈夫? そうWさんは聞いたが、 Rは自信満々だった。 もうメロディーは思いついている、とのこと。 それから三日後。 彼は一枚のルーズリーフをWさんに見せた。 歌詞だった。 詞の一行上には詞に添わせるようにギターコードも付いている。 何度も消しゴムで消した跡があった

          lullaby その2

          lullaby その1

          『それは彼が、生まれて初めて書いたオリジナルソングなんです』 Rは十七歳でギターを買った。 それまで楽器など弾いたこともない。 音楽的なセンスがあったわけでもない。 そんな彼がギターを買った理由は一つ。 彼の幼馴染であり、また初恋の相手であり、 フォークデュオでボーカルとして歌ってみたいというWさんがそう望んだからだ。 WさんとRは仲が良かった。 幼馴染といって、 思春期の訪れとともにヘンに意識しあうようなこともなかった。 同じ高校に、毎日一緒に登下校していた。 周知のカ

          lullaby その1

          見ててくれ その2

          A君はオフィスの方を振り返ろうとして、やめた。 どうせ自分にしか見えていないのだ。 男はA君と目が合っている。 確実に、 男はA君が自分に気づいていることを認識していた。 男の口がぱくぱく、とかすかに動く。 「……え?」 A君が問うと、今度はなぜか、 かすかにだが男の声が聞こえた。ように思えた。 「――み・て・て・く・れ?」 瞬間、男は足場からダイブした。 A君が思わず息を呑んだ。 ――と。 17階の高さから下へ飛び降りたはずの男が、 なぜか上空から猛スピードで落下

          見ててくれ その2

          見ててくれ その1

          僕の周りに、自称〈見える人〉というのが何人かいる。 A君もその一人だ。 A君はいわゆる引き寄せ体質の持ち主で、 選ぶ遊び場、お気に入りの居酒屋、職場なども、 わりと高い確率で「一人は」見えるという。 見えるといっても、 はっきりと人の形をしていないことの方が圧倒的多数だ。 その多くは、嫌な感じを覚えるモヤのような姿だという。 それでも決していい気はしないし、 そうそういつも相手をしていられないとA君も思っているので、 A君から〈見えるもの〉について干渉することはほとんどな

          見ててくれ その1

          山妖

          僕の父は四国出身だ。 今より何十年も前、父がまだ少年だった頃は、 父の住む漁村はもはや隔離された感もある“超田舎”だった。 前は海。後ろは山。 その山を大きく隔てて隣町がある。 今はその山のど真ん中に大きなトンネルが掘られて、 かつて隔離されていた村は、 “次の町までの通路”みたいな扱いになっている。 もちろんアクセスは楽になった。 村の人は喜んでいるようだ。 子どもの頃は、 夏になると田舎に帰省した。 村の前にある海は水がきれいで、 磯には見たこともない不思議な生き物も

          押し入れ

          D君の部屋の押し入れは、 夜11時ちょうどから五分間、開かなくなる。 戸は微動だにしないのではなく、 ちょうど誰かが向こうから押さえているくらいの抵抗で動かないのだ。 5分経つと、すっと戸は動くようになる。 もちろん押し入れの中には誰もいない。

          何のために、の家 その3

          東西南北すべての面に大きなサッシがあり、 外に出られる。 そこも妙だった。 四人は靴を脱ぎ、廊下に上がった。 すぐにふすまがある。 G君はずかずか進み、ふすまを開けた。 と、中は四畳半の和室。 壁はなく、隣室とはまたふすまで仕切られている。 家具は一つもない。 「すごい。壁が全部ふすまなんて見たことねえよ」 S君がつぶやきを漏らした。 「俺、左から行くわ。S、お前は右から行けよ」 「OK」 G君は入った部屋の左側のふすまを開けた。 そこもまたふすまだけの和室。 S

          何のために、の家 その3

          何のために、の家 その2

          彼女が大学生の頃の話。 Eさんは合コンドライブのようなものに赴いた。 女の子はEさんともう一人Yさん。 そしてメンズが二人。 同じサークルのメンバーだ。 Yさんとは仲が良かったが、 メンズとはほとんど面識がなかった。 だからこそのドキドキがEさんには心地よかった。 向かった先は信州。 町からもそう遠くない山。 近くにキャンプ場のような場所もペンションもある、 割合にメジャーなところだったはずだ。 木々が車道にぐいっとせり出した、 自然のトンネルのような道を、 くねくねカー

          何のために、の家 その2

          何のために、の家 その1

          幽霊屋敷の話ではない、念のため。 僕は30年近く昔、 和歌山のとある山中で妙な家を見たことがある。 山中、といっても分譲されている場所だ。 緩やかな斜面を山の頂上に向かって車で走っていた。 友達と4人。僕は助手席に乗っていた。 道中にも“〇〇台”みたいな、 いかにも最近拓けましたという分譲地がちらほらあった。 しかしそこは、 そういった分譲地よりぐっと山の中にあったのだ。 鬱蒼と茂った木々の狭間に隠れるように、 その4戸だけの分譲住宅は存在していた。 どの家も新しい。

          何のために、の家 その1

          階下の住人

          K君はハイツの二階に住んでいる。 朝、ゴミを捨てた時に、 たまたま真下に住む住人を見た。 三十歳くらいの普通の女性だ。初めて見た。 ちょうど部屋に入るところだった。 背中から声をかけようとして、ぎくりとした。 四十センチほど開けられたドアの隙間から、 室内が見えたのだ。 中に老婆が数十人、 ひしめきあうように立っていた。 みな一様に黙り込み、 ゆらりゆらりと揺れていた。

          階下の住人

          悪夢的な記憶 その2

          悪夢か現実かわからない思い出、2つめ。 これは中学生の頃。たしか1年生だった。 その頃住んでいた家から、 電車で2駅ほど離れた場所に廃工場があった。 僕はその廃工場が好きでたまに見に行っていた。 といって厳然たるおこずかい制だった当時のこと、 余分なお金を持っていたわけでもないので、 その廃工場までは自転車で通っていた。 工場の周辺は空き地になっており、 身の丈を越えるほどの雑草が生い茂っていた。 空き地の外側には、 ぐるりと有刺鉄線が張りめぐらされており、 工場に入るこ

          悪夢的な記憶 その2

          悪夢的な記憶 その1

          このコラムではまるで悪夢のような出来事について書いているが、 これは僕自身が経験した、というか、 今でも実体験だったのか悪夢だったのか、 その境界線がいまいち不明瞭な過去の出来事の話だ。 したがって明確なオチ的要素はないが、 あしからず。 まず1つめ。 恐らく小学校低学年の頃。 たぶん8歳くらいの頃の記憶だ。 両親と、2歳年上の姉、そして僕の4人は、 父の生家がある徳島に帰省していた。 夏休みだ。昼間海でしこたま泳いだので、 夜8時には疲れ切って、 もうすぐにでも寝てしま

          悪夢的な記憶 その1