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〈おもしろさ〉の正体とは?

では反対に、〈わかった!〉ということ。
僕は、おもしろい話にはある程度、
常にこの〈わかった!〉がつきまとっていると考えている。
エンタメ要素の強い映画やマンガ・アニメなどは、

〈スムーズにわからせること〉

にいつもしのぎを削っている。


例えば小説の新人賞などは、
冒頭の2~3ページまでで主人公のセリフや語りが無い作品は、
無条件で落選させられるという話を聞いたことがある。

主人公が何を求めているか? 物語のゴールは?
といったところが、冒頭で読者に伝わらないからだ。
いや、もうちょい先まで読んでくれればわかりますよー、
というのが作者の言い分であることは百も承知だが、
現代の読者、つまり娯楽の選択肢を掃いて捨てるほど持つ読者は、
そこまで待てない・待ってくれないということだろう。

こと、スピード感を求められるエンタメの世界においては。


だからエンタメの主人公は、
自分がどんな課題やコンプレックスを持った上で、
この物語に参加しているか?
そしてどうなればその課題を克服でき、
目的を達成できるか?
ということを常に明確化し続ける必要がある。

代表例をあげよう。

「海賊王に、俺はなるッ‼」

実にわかりやすい。
ひょっとすると世界で一番有名な〈明確化〉ではないか。

そのわかりやすさが安心感につながり、
感情移入にもスムーズに連携してゆく。
よく言われる〈先の読めないストーリー〉とは、
荒唐無稽なストーリーという意味ではない。

〈先が予想できるけれど、裏切られるストーリー〉

という意味だ。


そして、
〈わかった!〉時にはどんな現象が起こるか。
脳内物質(快楽物質)の分泌、に他ならない。
そういえば物語中、巧みに張られていた伏線が、
最後に一つの結論へと収束する瞬間の、
あの気持ちよさ。
クロスワードパズルで、
えんえん横のワードを埋め続け、
最後に縦のワードが自然とあぶり出される気持ちよさに似ている。
つまりここで言うおもしろさとは、
〈スッキリ感・腑に落ちる感〉である。


もちろんおもしろさにも色々ある。
後味の悪さがおもしろさにつながっている作品もたくさんある。
わからなさの演出・余白の使い方の巧さが際立つ作品も、
それはもうものすごくたくさんある。

だが、そういった作品はいったん置いておいて。
もっとベタな話だ。

苦労して旅を続けた主人公が、
最後にラスボスを倒すという目的が達成された時。
読者のうちには喜びの感情が去来する(もちろんうまく感情移入させられていなければ去来しない。応援感情があってこそ成立する話だ)。

その喜びが「ああおもしろかった!」につながっているわけだが、
その中には成分として「スッキリした」がかなり多く含まれており、
「スッキリした」時に分泌されるのが脳内物質ということだ。
それが、
〈おもしろさ〉の正体なのではないだろうか。


もちろんこれは無学な僕の仮説であり、
疑いようもなく持論である。
〈恐怖の手触り〉の正体がわかり、
それにともない〈おもしろさ〉の正体がわかったので、
もうこの連載を終えてもいいのかもね、
と思った次第である。
<つづく>



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