マガジンのカバー画像

物語

15
運営しているクリエイター

#隕石

物語【絶望への秒読み】第十ニ話

物語【絶望への秒読み】第十ニ話

僕と夏陽がシェルターに入った直後、父さんとの通話が途切れ、ドアは開かなくなった。

外で何か起きたのか。ただの通信障害なのか。隕石の衝突が早まった?僕の脳裏に不安がよぎる。

「大丈夫。明日になればドアが開くよ。」夏陽が言った。

そうだな。そうだけど。

「さすがに隕石が落ちたら、音とか衝撃とかあると思わない?」

確かに、そうか。

しばらく沈黙が続いたあと夏陽が話し始めた。

「お母さんが病

もっとみる
物語【絶望への秒読み】第九話

物語【絶望への秒読み】第九話

隕石が落ちる事を事前に知っていた父さん達は、家の地下にシェルターを作っていた。ただし、家族全員は避難できない。そこで夏陽の父親と相談し、僕と夏陽の二人をシェルターに避難させようと考えた。当然、僕と夏陽は納得できない。

「シェルターにはお前達二人が避難して、生き延びて欲しい。これが父さん達の願いだ。」

いや、いきなりそんなこと言われても。別にみんなで避難すれば。

「それが俺の手違いで、二人しか

もっとみる
物語【絶望への秒読み】第八話

物語【絶望への秒読み】第八話

去年おばあちゃんの告別式で、久しぶりに夏陽を見かけたが、おばあちゃんを失った喪失感もあり声もかけられなかった。喪服姿の父さんと母さん、伊賀咲家の二人が集まって話をしている。

「おばあさんには僕らも大変お世話になりました。小さい頃から夏陽もよく面倒を見てもらって。。生前にきちんとお礼ができなくて申し訳なかったです。。一言でもありがとうと言いたかった。。。」と夏陽の父親が涙ぐみ父さんに頭を下げている

もっとみる
物語【絶望への秒読み】第七話

物語【絶望への秒読み】第七話

伊賀咲夏陽。僕が連絡を取ろうとしていた相手だ。同じ年の幼馴染。小中高と同じ学校に通っていた。高校を卒業して別々の進路へ進み、最近は連絡も取っていなかった。この終末が迫った今、なぜ脳裏に彼女の姿が浮かんだのか。その理由は明らかだ。僕は彼女の事が好きなんだ。

小学生の時はよく一緒に遊んでいた。中学になるとそれぞれ別の友達ができて、少しずつ距離ができた。高校生になった僕は夏陽の事が好きだと気づいたが、

もっとみる
物語【絶望への秒読み】第六話

物語【絶望への秒読み】第六話

明日、隕石が落ちることを父さんはかなり前から知っていた。

「厳密に言うと正確な日時、どの辺りに落ちるかまでは分からなかった。」

それから聞いた父さんの話は信じられない内容で、まるで作り話のように聞こえた

十数年前のある日、世界中の一部の家庭にある手紙が届いた。そこには「数年後、地球に隕石が衝突する」と書かれていた。最初は信じていなかったが、その後手紙の中に書かれていた災害や紛争が現実に起きた

もっとみる
物語【絶望への秒読み】第五話

物語【絶望への秒読み】第五話

"パール"は13歳になる雌のトイプードルで、人間で言ったら70歳くらいかな。おばあちゃんによく懐いていて、今では本当のおばあちゃんみたいに家族を見守っている。おばあちゃんが亡くなった時も僕はパールに慰められて、最近やっと立ち直ることができた。

少し面食らってリビングへ行くと、ふだんと変わらない母さんがそこにいた。

「おかえりー。」

父さんは?

「いるよ。」

何してるの?

「これからコー

もっとみる
物語【絶望への秒読み】第二話

物語【絶望への秒読み】第二話

「今日会えて良かったよ。」と友人は笑った。

その笑顔に僕はとても嬉しい気持ちになる。

「ありがとうな。生きてたらまた会おう。」僕も大きく頷き返す。

友人との別れと終末の恐ろしさが重なり、自然と涙が溢れてくる。

「泣いてんの?」

泣いてねぇ!こっちこそ!

強がりを言いつつも涙が溢れることもある。

「ん?」

ありがとうございます!

「なんで敬語?やっぱ、お前はおもろい。」友人は腹を抱

もっとみる
物語【絶望への秒読み】第一話

物語【絶望への秒読み】第一話

「明日地球に隕石が落ちる可能性があるみたいだけど、備えとか覚悟はできてる?」

はっ?何言ってんの?

「これ見て、地球が滅びる可能性があるって。科学的に裏付けもあって、非常に高い精度で予測されてる。」

最初は理解できなかったが、友人が言っていることにはかなりの信憑性があるようだった。

昔、ノストラなんとかが言っていたのとは違う。科学が進歩した現代の観測技術はかなり優れていて、その精度にはわず

もっとみる