![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/117308368/rectangle_large_type_2_cd364bcefb575e34ff19e14fc14f6eb2.png?width=800)
物語【絶望への秒読み】第九話
隕石が落ちる事を事前に知っていた父さん達は、家の地下にシェルターを作っていた。ただし、家族全員は避難できない。そこで夏陽の父親と相談し、僕と夏陽の二人をシェルターに避難させようと考えた。当然、僕と夏陽は納得できない。
「シェルターにはお前達二人が避難して、生き延びて欲しい。これが父さん達の願いだ。」
いや、いきなりそんなこと言われても。別にみんなで避難すれば。
「それが俺の手違いで、二人しか避難できない設計になってしまった。あとパールも頼む。もう年寄りだから。」「ワン!」「ほら、パールも喜んでるぞ。」
いや。絶対嘘だと僕は思った。父さんは最初から二人分しか準備していない。
「とりあえずご飯でも食べながら話そう!夏陽ちゃん手伝って!」「はい。」母さんは場の空気を変える天性の才能を持っていると僕は思った。
「じゃ男同士で話をするか。」母さんと夏陽がキッチンへ行くと父さんが言った。
伊賀咲のおじさんも知っていたんですか?
「うん。ごめん。家にも手紙が来たからね。君のお父さんに相談したら、俺の所にも手紙が来てるというから。」
それじゃなんでみんなでシェルターに。
「まず、隕石が落ちたとして、今いる場所に影響がないかも知れない。その逆にシェルター生活が長くなった時のために人数は少ない方がいい。お前たちの生存確率を上げたいんだよ。あとはお前も親になれば分かる。」
大人になれば分かる、親になれば分かる。よく聞く台詞だ。
僕はみんなで一緒に。
「なぁ、太洋、分かってくれ。」いつもふざけている父さんが真顔で言った。
困ったような少し寂しい笑顔。子供の頃からそうだ。父さんには敵わない。いつも優しく諭されてしまう。
「夏陽をよろしく頼むよ。」夏陽の父親に懇願される。僕は頷く事しかできなかった。
「それじゃ!久しぶりに"家族"が全員揃ったんだ!積もる話もあるし!夕飯にしよう!」父さんはいつになく大きな声で言った。
気づけばもうそんな時間か。
これからも書き続ける原動力としていきます!