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物語【絶望への秒読み】第八話

去年おばあちゃんの告別式で、久しぶりに夏陽を見かけたが、おばあちゃんを失った喪失感もあり声もかけられなかった。喪服姿の父さんと母さん、伊賀咲家の二人が集まって話をしている。


「おばあさんには僕らも大変お世話になりました。小さい頃から夏陽もよく面倒を見てもらって。。生前にきちんとお礼ができなくて申し訳なかったです。。一言でもありがとうと言いたかった。。。」と夏陽の父親が涙ぐみ父さんに頭を下げている。

隣で夏陽も涙ぐんでいた。

夏陽には母親がいなかった。そんな伊賀咲家のことをおばあちゃんと母さんは何かと気にかけていた。


小学生の頃はおばあちゃんと夏陽と僕の三人でよく遊んだり、勉強したりして、本当の家族のように過ごしていた。運動会のお弁当もおばあちゃんと母さんが伊賀咲家の分も当たり前のように作っていた。

伊賀咲家にとっておばあちゃんは家族同然になっていたんだ。



「二人ともこれから話すことをよく聞いて理解して欲しい。」父さんがいきなり切り出したので沈黙する。


「まぁ、とりあえずコーヒーでも飲みながら。」すかさず母さんがフォローする。

「伊賀咲さんブラック?」「はい。」「夏陽ちゃんは?」「砂糖とミルクを少し。」「オッケー!」少し場の空気が和んだような気がした。


「明日隕石が地球に衝突する。それはほぼ間違いない。しかし、地球にどう影響が出るかは分からない。」

父さんの話は、隕石が落ちるのは間違いないが、正確な時間、どの辺に落ちるのか地球にどう影響するかは分からないといった内容だった。手紙にも"地球に隕石が衝突する"とは書かれていたが、"滅亡"という言葉は書かれていなかった。


「まぁ、人類が滅亡することはないだろう!」父さんはそう言って陽気に笑っている。父さんのこういう所に母さんは惹かれたのかもしれない。


僕は少し安心した。


しかし、その後の話の内容は僕も夏陽も受け入れがたいものだった。


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