物語【絶望への秒読み】第十ニ話
僕と夏陽がシェルターに入った直後、父さんとの通話が途切れ、ドアは開かなくなった。
外で何か起きたのか。ただの通信障害なのか。隕石の衝突が早まった?僕の脳裏に不安がよぎる。
「大丈夫。明日になればドアが開くよ。」夏陽が言った。
そうだな。そうだけど。
「さすがに隕石が落ちたら、音とか衝撃とかあると思わない?」
確かに、そうか。
しばらく沈黙が続いたあと夏陽が話し始めた。
「お母さんが病気で死んじゃって、私すごく落ち込んで、お父さんともろくに口を聞かなくなった。学校にも行かなくなって、塞ぎ込んでる時にこの町に引っ越してきたんだ。」僕は夏陽の母親がいない理由をこの時始めて知った。
「太洋の家に遊びに来るようになって、おばあさんやおじさん、おばさん、みんな底抜けに明るいじゃない?それとパール。」「ワン!」パールが自分が呼ばれたと思い鳴いた。
まぁ明るいっていうか単純というか。
夏陽は少し笑いながら話し続ける「それでも私は全然打ち解けられなくて。」
初対面はそうだなぁ。この子まったく喋らないし、表情ないし、何考えてんのって感じだったかな。
「だよね。」
まぁ、今なら分かるよ。僕もおばあちゃんが死んじゃって、相当落ち込んだから。
「ある日、おばあさんに言われたの。お母さんが天国で見てるよって。そんな悲しい顔してたら天国のお母さんも悲しくなるって。それからかな。少しずつ話せるようになったの。」
おばあちゃん世話やきだからな。そういうこと言いそう。
夏陽は笑っている。
「なんか、太洋とひさしぶりに話した気がする。」
そうだな。
その後、数日経ってもドアは開かなかった。
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