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武道や武術の技を身につけるには?

武道や武術には、いくつもの技があります。技のレパートリーを増やすことで、目の前の人を効果的に対峙することができます。それでは、私たちは技をどのように身につけているのでしょうか?

今回は、Fitts(1964)の研究を参考に解説します。

Fitts(1964)の運動スキルに関する研究

Fitts(1964)は、人間の運動に対して重要な研究成果です。この論文では、

人間に対して2つの目標地点(A地点からB地点まで)の間を移動するように指示し、その移動時間を測定しました。目標地点の大きさと距離を変化させることで、動作の難易度を調べたという研究です。研究結果からは、人間がある動作を行うためにかかる時間は動作の距離と目標地点の大きさによって決まるそうです。この研究結果は、例えば、スマートフォンのタッチスクリーン上でのアイコンの大きさや配置、コンピュータのユーザーインターフェースにおけるボタンの大きさと位置など、ユーザーが素早くかつ正確に操作できるようにデザインすることに役立ちます。

技の習得は動きを意識するところから始める

Fitts(1964)によると、意識は、自分の身体の動きをどのくらい言葉にしたり、頭でイメージすることができるかだそうです。

運動スキルを習得するためには3段階あると考えられています。

この記事では、それぞれの段階を順に、意識化、結合化、自動化と考えます。

意識化の段階

この段階では、身体のどこを、いつ、どうやって動かすのかを知ります。武道や武術において技を習得する場合は、技の手順をひとつずつ覚える段階と言えます。この段階では、自分の動作を言葉にしながら意識することができます。つまり、ひとつずつの手順を踏み、ゆっくりと動くような段階であり、あまり正確には動くことができません。

結合化の段階

この段階では、認識の段階で学習したことに従い、試行錯誤して動作を繰り返します。武道や武術においては、型稽古や打ち込みによって、技を身体で覚えていく段階です。練習を繰り返すと、無駄な動きを修正でき、動作がスムーズになってきます。技に対する修正は、この段階で行うのが効率的でしょう。認識の段階は、技を覚える段階であり、動作に慣れていないので、細かすぎる修正は避けた方が良いと考えられます。また、認識の段階よりも、結合の段階の方が、学習に長い時間がかかると考えられます。

自動化の段階

この段階になると、意識しなくともスムーズに動くことができます。身体が自然に動くようになり、個々の動作に意識を払う必要がなくなります。武道や武術においては、技が適切に出せる段階です。つまり、状況によって適切な技をタイミング良く使えるようになります。

初心者であれば動きはぎこちなくて当たり前

何事も初心者であれば、最初は動きがぎこちなくなると思います。それでも練習を積み重ねていけば、自動化の段階へ到達し、技を習得することができます。自動化の段階に効率的に行くためには、一つ一つの動作を言語化し丁寧に行ったり、周囲の人から動作を修正するためのフィードバックを適切にもらったりすることが重要なのではないかと思います。

参考文献

Fitts, P. M. (1964). Perceptual-motor skill learning. In Categories of human learning (pp. 243-285). Academic Press.

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