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珈琲屋に入った銀之助は、猫のように奥のテーブル席に進んでいく譲の肉付き寂しい背中に目をや…
銀之助と譲の姿は細い路地にあった。道の左右には小さなベランダに花火のような折鶴蘭を飾った…
「よければ珈琲でも飲みにいきませんか」 銀之助は譲に誘われて街の珈琲屋に向かった。譲の姉…
「そういえば、あの宿はどうやって見つけたんですか?」 宮本譲の声は炎の周りに巨大な虹の環…
銀之助が宮本の顔に眼をやると彼は妙にぎこちなく「こちらは、姉です。僕より小さいですけど」…
湖岸に伸びる遊歩道は綺麗な砂色に舗装され銀之助のいる広場を東西に突き抜ける。西に七百メー…
宿の前の細い道を抜け大通りに出る。冬の軽い風に道の枯れ葉が哀しくもどこか健気にカラカラとその骸の音を淡い空の奥へと響かせる。無数の細胞の生の名残りが巨大な炎の星へ、永劫的なエネルギーが浮薄な風に乗って、千態万状なる容器を乗り継ぎ、循環してゆく。銀、黒、青、白、赤、黒、ギラギラした目つきの自動車と気怠そうな眼をした操縦者が大通りに一定のリズムの動静を刻んで流れてゆく。その横を銀之助はきわめて緩慢な速度で歩き進む。 次から次に自分を抜き去る機械の振動は進化のレールを全速前進する
冬の太陽が昨夜の灰色雲を洗い終え、つるりとした水色空に栄華を極める光の中を冷たく軽快な風…
銀之助はいつの日か生物学者が「人間というのはすぐ“同じ”にくくりたがる」とため息混じりに…
「なんだかわくわくするね」と銀之助は言った。 彼はなんとなく窓の外の未知なる光に自分の大…
銀之助が泊まる部屋は装飾を排した四.五畳の和室であった。現代の輝きになにか憎しみを覚える…
銀之助は彼に自分の二つの眼の奥を深く静かに覗かれこの空間に不適切なものを隠し持っていない…
宿は頑丈そうな石塀で囲われどこか大きな寺のようだった。銀之助はぐるりと周囲をまわってみた…
地元の山間部に雪が降ったとテレビが言っていた。 十二月の初め、銀之助が濃密な光に装飾された街を歩いていると小さな人だかりが目に入った。わずかな好奇心で近寄ると一人の若い青年が真新しいアコースティックギターを抱えていた。まわりに並んだ光り輝く観衆の眼は餌を静かに待つ動物の眼のようであった。 銀之助の好奇心の芽は地を這う黒い土にすでに枯れ落ち、足は自然、群衆から離れていた。すぐに背後から希望に満ちた明るい声が湧き起こった。若者の人懐っこい歌声と観衆の生ぬるい手拍子との間に、銀