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ぺも短篇集

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エッセイや物語など
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【思い出】たけのこセンター

【思い出】たけのこセンター

僕が通っていた小学校の敷地内には、小高い山があった。
ごみで埋め立てて作った山にしてはそこそこ大きく、小学生30人くらいなら優に鬼ごっこなどで遊べる山だ。実際に、ケイドロが昼休みにしょっちゅう行われる場所だった。教育実習で母校に戻ったときもなお健在だった。3週間のあいだ、何度その山へ児童と行ったことか。相変わらず生き生きとした竹藪の生い茂り具合に苦笑すると同時に、ある思い出が蘇る。

小学一年生か

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【エッセイ】 「チビ」

【エッセイ】 「チビ」

 僕が小学1年生の頃、S君とF君と僕の3人で登校していた。親同士が小学1年生を単独で登校させることを危惧していたことや、互いが近所であることが重なった結果だろうと言える。話の内容はよく覚えていないが、登校中の20分間を飽きずに過ごすことができたのは紛れもない事実である。

 しかし、小学生1年生の1学期が終わる時、S君が引っ越した。引っ越すとはいえアパートから一軒家に変わるという目的のもので、どこ

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だから何だって話(徒競走 編)

小学3年生の頃のたまに思い出す話。
運動会があった。だって当時はコロナが無かったから。

徒競走が嫌いな生徒だった。
子供の頃から太っていて、走るのはクラスで一番遅かった。
体育の授業で2人ずつ走るとき、片方がゴールしてから俺がゴールするまでを秒読みしてる奴らのことが嫌いだった。それでも明日になれば一緒にそいつらと遊ばざるを得ない自分が、歯痒かった。

うちの学校では、走る速さが同じくらいになるよ

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最古の記憶

最古の記憶

僕は友人から最古の記憶を聞くのが好きだ。その人にとっての最も古い記憶は、その人の人格の形成する大きな潜在的キーポイントだと思う。
というのは単なるこじつけで、実際理屈無しに他人の古い記憶を教えてもらうことは僕にとってめちゃめちゃ楽しい事なのである。

そんな僕の最も古い記憶は、3歳、幼稚園の入園式のことである。
入園式が滞りなく終わり、先生方は保護者に対して、バス通園や食物アレルギーなどの大人の話

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山彦の社【エッセイ】

山彦の社【エッセイ】

 2018年の5月、私がそこの生徒であった頃、選択科目の美術の授業で、学校の校舎裏にある山彦の杜の風景画を描いた、正確には"描かせて頂いた"ことがある。
 山彦の杜は、私が通っていた学校の、中庭のような存在である。木々が生え、植生がほとんどそのままになっており、自然を直に楽しめる施設である。しかし中庭とは言うものの校舎の中心にある訳ではなく、意図的に向かわなければ辿り着くことのない場所である。存在

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サンカク[超短編小説]

サンカク[超短編小説]

 30年前のその日は、丁度今日のようなかんかん照りだった。正直言ってこんな茹だる暑さで行く気も失せていたが今更ドタキャンなど言い出せず、朝の7時きっかりに公園に集合した。今思えば彼らも同じ考えだったかもしれない。

公園に集合して、W君とT君と歩いて山へ向かう。特に会話もなく1時間程で予定通り山頂に着いたが、そこに感動は無い。お目当てはここから1時間先にいる。奴は山頂のような見晴らしの良い所を好ま

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蝉丸についての思い出

蝉丸についての思い出

これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関

私が最初に覚えた俳句である。百人一首にも記載される、蝉丸の句である。

「どの人もここで出会ってここで別れる、まさに大阪(逢う坂)の関だなぁ」という、恋愛の句が多い百人一首にしては少々異質な恋愛がらみでない一期一会を詠んだ句である。

私がこの句をどの俳句よりも最初に覚えたのには、とあるエピソードが関わっている。

幼稚園の年長の頃、

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鼠頭

鼠頭

私の高校生時代の思い出はこれと言って無いが、ただ一つだけ鮮明に記憶していることがある。
それは2年生の夏。7月の中旬、茹だる様な暑さであった。そんな炎天下を私は左耳に白いイヤフォンから流れるQueenの"Bycicle race"を、右耳に車の音を聞きながら、自転車でスカートを揺らしておっちら向かって行った。Queenが大好きな私は興味本位で動画投稿サイトでその曲のミュージックビデオを調べたことが

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鬼武者

「怖いんです」
彼はうつむいてそう告げた。男の隣では3m程もあろうかという鬼が目をギョロつかせ、舌なめずりして男を見つめる。両手にはナイフとホークを持っている。
「怖いって、その鬼が?」
「違いますよ」
少し語調を強めた男が答える。
男はずっとつむっていた目を開き震えた声で話し始めた。
「味噌まみれの赤ちゃんが、部屋の四隅から落ちてくるんです…慌てて受け止めるんですけど、既に遅いんです。落ちた赤ち

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小学校の回想-2021年5月16日-その25

小学校の回想-2021年5月16日-その25

書く事なし。課題やったyoutube見たモンストのリアルタイムのやつやった夕飯の餃子が美味かった。
なので今日は小学校の頃の回想を書こうと思う。

小学校低学年の頃のことはよく覚えていない。普通に幼稚園上がりの仲の良い友達とそれなりに仲良くやっていた気がする。あと初めて障がい者を見てびっくりした覚えがある。「怖いと感じるのは、違うからだ」とオウルも言っていた。幼い無知故の恐怖であるからどうか許して

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暗い話-2021年5月3日-その12

暗い話-2021年5月3日-その12

 実は俺が今通ってる大学は一番行きたかった大学ではない。第一志望の大学は今年の3月に落ちた。高2の秋から1年以上、指標として目指してひたむきに努力していった大学だ。落ちたときの落ち込みは激しかった。
 もう立ち直ったと思っていたけど、未だに夢で見たりする。起きた時は大抵嫌な気分になっている。いつも心の根底に「俺は第一志望でない」「理想的な人生を歩めていない」という負い目が淀んで沈んでいる気がする。

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