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LEONE

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この作品「LEONE 〜どうかレオネとお呼びください〜」は、韓国の小説投稿サイト「JOARA」で2015〜16年に掲載され、TS(トランスセクシャル)のジャンルで名作と評価されて…
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LEONE  #1 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第1話 1/2

LEONE  #1 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第1話 1/2

この作品は、韓国の小説投稿サイト「JOARA」で2015〜16年に掲載され、TS(トランスセクシャル)のジャンルで名作と評価されている作品です。今回、原作者のCHYANGさんの許可を得て日本語に翻訳し、ここに掲載することになりました。女性義体の中に閉じ込められた犯罪組職のボス「セロン・レオネ」と、その正体が分からないまま一攫千金を夢見る賞金稼ぎ。 危険なコンビの宇宙活劇が始まります。お楽しみくださ

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LEONE #2 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第1話 2/2

LEONE #2 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第1話 2/2

急ぎ足でボスが尋ねた。同じく急ぎ足で歩いていたルチアーノは、軽く肩をすくめた。

「義体技術の権威です。信用できる者には違いない。レンスキーが選びに選んだようだし、金で口封じもしているから」

レンスキーとは、レオネ家の執事長、レンスキー・モレッティのことである。

歩みを止めずにボスは鼻で笑った。

「何か起こった場合はレンスキーから殺せばってことだな。手術時間はどのくらいだ?」

「長ければ3

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LEONE #3 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第2話 1/2

LEONE #3 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第2話 1/2

序章:Running On Empty第2話:レディタリア 手術前

セロン・C・レオネ。

それが48の銀河系に悪名をはせている犯罪組織『アニキラシオン』のボスの名前だが、意外とそのフルネームを知っている者は多くなかった。

『SIS』の中でも『アニキラシオン』の追跡を担当しているチームたちだけがその名を知っているくらいだった。彼らもまた普通は彼のことを「リトルレオネ」もしくは「レオネジュニア」

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LEONE #4 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第2話 2/2

LEONE #4 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第2話 2/2

セロン・レオネは自分の腕時計で時間を確認した。ルチアーノから聞いた手術の時間までおよそ15分ほどだった。今彼とタリアが歩いてる3階のフロアーから手術室までは歩いて5分くらいだから、まだ10分程度の時間は残されていた。

しかし言い換えれば、彼女が自分をここに連れてきてから何の話もせずに、ただ歩いてるだけだったということでもあった。

結局セロンは我慢できずに口を開いた。

「レディータリア?」

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LEONE #5 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第3話 1/4

LEONE #5 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第3話 1/4

序章:Running On Empty
第3話  手術の後 目覚め

セロン・レオネとタリア。二人が階段を降りて、手術室があるフロアに着いたころには、すでに約束の時間を2分超えた後だった。もちろん、この旗艦内に遅刻を理由でセロンに文句を言える人は存在しなかったが、彼は自分自身が時間の約束を破る行為自体が嫌いだった。セロンは少し焦りを感じながら急いでタリアと別れようとした。

「あの、タリア」

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LEONE #6 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第3話 2/4

LEONE #6 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第3話 2/4

ドーン。

機械の起動音とともに目に刺さる光にセロンは顔をしかめた。

その光に目が慣れる前に人影がセロンの視界に入ってきた。その人影は軽く頭を下げ、彼に挨拶をした。

「ごきげんよう。Mr.レオネ」

「よろしくお願いします。ドクター?」

「ボスコノビッチ」

「ドクター・ボスコノビッチ」

すでに手術台に横たわっていたが、セロンはためらいなく博士に手を伸ばした。ボスコノビッチ博士は少し迷って

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LEONE #7 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第3話 3/4

LEONE #7 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第3話 3/4

(いや…)

セロンは頭を振った。

二人とも彼がよく知っている人だった。セロンは目を擦り良く見えないもう一人の顔を見るために頑張っていた。

しかし見えなかった。変だ。よく知っている人なのに。

その間、その人が先にセロンに声をかけてきた。

「挨拶しなさい。セロン・レオネ。彼がルチアーノだ」

「ボッシ・ルチアーノ、仲の良いやつらはボッシと呼びます。よろしくお願いします」

地面に付くくらい深

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LEONE #8 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第3話 4/4

LEONE #8 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第3話 4/4

「プハッ!」

大きな呼吸とともにセロンは目を覚ました。いまだに残っている痛みの記憶が彼を動かした。

同時に彼の胸元にかけていた布が下に落ちたが、そんなことに構っている暇はなかった。

「くそっ」

セロンは歯ぎしりをしながら、何回も周りの誰かを探していた。そうでもしないと、このまがまがしい感情を振り払えない。セロンは自分が怒っても当然だと思っていた。

そもそも麻酔をしたからって悪夢まで見るな

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LEONE #9 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第4話 1/2

LEONE #9 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第4話 1/2

序章:Running On Empty
第4話  セクサロイド セロン

鏡に映っている少女は愛らしかった。

肩まで伸ばした黒いロングヘアーにセロン・レオネと同じく、紫色の大きな目をしていた。肌は大理石のように白く艶々しており、鼻と唇ははっきりした形にも関わらず、愛らしさが際立っていた。

しかし体は細くて、胸も体も成人女性のものとは違って、成長期の真っ最中の少女のものだった。

その外見はセロ

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LEONE #10 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第4話 2/2

LEONE #10 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第4話 2/2

ルチアーノの最後の言葉が終わったとたん、セロン・レオネは手術台から立ち上がった。下半身を隠していた布もそのまま床に転がって、少女の真っ白な裸身が丸見えになったが気にしていなかった。

ただ一人ルチアーノだけが口笛を吹いただけだった。

「気が短いな。そんなに慌てなくても、今夜には処女じゃなくなるのに」

セロンは答えなかった。

セロンはおおまたに歩いて、手術が始まった時と同じように布に隠されてい

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LEONE #11 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第5話

LEONE #11 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第5話

序章:Running On Empty
第5話  手下の男たち に追い詰められる

その言葉を最後にスクリーンが消えた。

セロンは画面の中のルチアーノが完全に消えてから、やがてゆっくり視線を戻した。

彼はしばらくうつむいたあと、自分を囲んでいる組織員たちに目を向けた。

その中には何人か見慣れている顔もいた。しかし見慣れてはいるが名前すらよくわからないその数人以外は、見たことのない顔がほとんど

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LEONE #12 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第6話 1/2

LEONE #12 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第6話 1/2

序章:Running On Empty
第6話  ビル・クライド登場

「黙れ。下品なヤツが」

セロン・レオネは血が混ざった唾を、ペッと床に吐きだした。

「貴様の手に引きずられてルチアーノに犯されるくらいなら、ここで舌を噛んで死んだほうがましだ」

(機械の体だから舌を噛んでも死ねるかはわからないが)

言葉を飲み込んだセロンは拳を握って、両手を上げた。

外見はどうであれ、アンドロイドはアン

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LEONE #13 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第6話 2/2

LEONE #13 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第6話 2/2

「うあああああっ!」

「くああああっ!」

組織員たちが悲鳴を上げながら、一斉に床を転がった。男も何メートルを飛んでそのまま壁にぶつかった。

「ああああっ!」

そしてセロン・レオネもまた、壁にぶつかって床に転がった。

しかしセロンが彼らよりマシだったのは、少なくとも頭をぶつけて気を失わなかったことだった。セロンは床に転んだあとすぐに体を起こし、辺りを見回した。あっちこっちに壁、またはぶつか

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LEONE #14 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第7話 1/2

LEONE #14 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第7話 1/2

序章:Running On Empty
第7話  助けてくれたら2億

その一言を最後にクライドはセロン・レオネの顎から手を離した。手を離しただけでなく、後ろも振り向かずにそのままスタスタと歩いて行った。少しの迷いもない、正々堂々とした戦士の後ろ姿そのままだった。

しかしその勇ましい後ろ姿も、セロンにはなんの感情も与えなかった。

クライドの手から逃れたセロンは無言で床を見つめ、彼とクライドとの

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