LEONE #8 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第3話 4/4
「プハッ!」
大きな呼吸とともにセロンは目を覚ました。いまだに残っている痛みの記憶が彼を動かした。
同時に彼の胸元にかけていた布が下に落ちたが、そんなことに構っている暇はなかった。
「くそっ」
セロンは歯ぎしりをしながら、何回も周りの誰かを探していた。そうでもしないと、このまがまがしい感情を振り払えない。セロンは自分が怒っても当然だと思っていた。
そもそも麻酔をしたからって悪夢まで見るなんて聞いたことがなかった。普通はただ意識が消えて、起きたらすでに手術は終わっている。
しかしなぜか、手術室の中にはセロン以外の誰の姿も見えなかった。照明も、医療機器も、麻酔をする前と同じですべて電源が入ったままだった。
ただ一つ、執刀した医者、ボスコノビッチ博士だけがいなくなっていた。
(いったいヤツはどこに行ったんだ)
セロン・レオネは神経質に叫んだ。
「ドクター・ボスコ―!」
そして、セロンはそのまま口を閉じた。
代わりに彼はゆっくり、とてもゆっくりと自分の首を触るために手を上げた。
いや、上げようとした。
自分の手で首を触ることすら彼にはできなかった。
彼を凍り付かせたのは、以前よりももっと白くて細い自分の手、そしてもっと細くなった体の上から少しだけ膨らんでいる自分の胸だった。
彼は全身を震わせながら、かろうじて首だけ回した。彼の視線が向かった先には、手術をする前には存在しなかったものが一つ置かれていた。
いつ置いといたのか分からない全身鏡には、青白い顔で怯えている高校生にしか見えない少女が映っていた。
「ボス」
馴染みのある男の声が、幻聴のように手術室に響いた。
スピーカーの向こうの男、ボッシ・“ラッキー”・ルチアーノは少し間をおいて、残酷極まりのない声で宣告した。
「すべて終わった」
著者プロフィール チャン(CHYANG)。1990年、韓国、ソウル生まれ。大学在学中にこの作品を執筆。韓国ネット小説界で話題になる。
「公演、展示、フォーラムなど…忙しい人生を送りながら、暇を見つけて書いたのが『LEONE 〜どうか、レオネとお呼びください〜』です。私好みの想像の世界がこの中に込められています。読んでいただける皆様にも、どうか楽しい旅の時間にできたら嬉しいです。ありがとうございます」
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