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LEONE #7 〜どうかレオネとお呼びください〜 序章 第3話 3/4


(いや…)

セロンは頭を振った。

二人とも彼がよく知っている人だった。セロンは目を擦り良く見えないもう一人の顔を見るために頑張っていた。

しかし見えなかった。変だ。よく知っている人なのに。

その間、その人が先にセロンに声をかけてきた。

「挨拶しなさい。セロン・レオネ。彼がルチアーノだ」

「ボッシ・ルチアーノ、仲の良いやつらはボッシと呼びます。よろしくお願いします」

地面に付くくらい深々と頭を下げ、ルチアーノはなぜか頬を赤らめていた。彼は時間が経ってから、初対面の時、自分を女だと勘違いしていたと告白した。

とにかくあの時自分は作り笑顔とともに彼に手を差し伸べた。

「よろしく、ルチアーノ」

そして、視界がゆがんだ。

……

……

……

少しのめまいとともに、セロンはまた目を開けた。

今回はとても暗かった。窓の外からは月の光が入っていたが、ただそれだけだった。周りはとても静かで……彼は光のない部屋の中で、ただ立っていた。

しかし、一人ではなかった。

「セロン・レオネ」

セロンはびっくりして顔を上げた、月明かりがかすかに彼の前に立っている女性の顔をさらしだしていた。タリアはとても薄いシルクのネグリジェ姿で自分を見つめていた。

タリアは悲しい顔で話した。

「セロン、知ってる? 私があなたのお父様のカルロにさっきあなたが言ったことをそのまま伝えたら、あなたはそのまま……」

「知ってます。レディータリア」

セロンは無意識に声が出るのを感じた。彼はとても低くて、甘くて、だけど力強く残酷な声で言っていた。

それに比べて、タリアはすぐにでも消えてしまいそうなか細い声で言った。

「わかってるなら、なぜ……!」

「レディータリア」

セロンは首を振った。

「私が知っているのは、あなたが彼に……何も言わないという事実。それだけです」

タリアの顔が月明かりよりも白く変わっていった。

セロンはそれでも話をつづけた。

「あなたも知っているんじゃないですか、レディータリア。このままだと、私もあなたも死ぬだけだということを」

セロンは、もっと冷たい声でとどめを刺した。

「もう残った手段は、こちらから先手を打つことだけです」

そしてまた、視界が歪んだ。

鼓膜が破れそうな悲鳴とともに。

……

……

……

「手術を受けないの?セロン・レオネ」

「えっ?」

セロンは思わず質問に質問で答えてから、自分の口を封じた。

いや、封じようとした。

声が出た。

(なぜだ? いや、当然か?)

頭の中が混乱していてまともな判断ができなかった。さらに関節まできしむようだった。

セロンはよろめいた。よろけて、のたうち回り、最後には座り込んでしまった。

めまいがひどい。

「もう何度も発作を起こしたわ。これ以上は無理よ」

タリアの声が聞こえた。セロンは必死に頭を上げて彼女の顔を見つめようとした。彼女に向かって助けを求めようとした。

しかし視界にはまるでノイズのようにゆがんだ世界しか入ってこなかった。見えるのは、椅子に座ってこっちを見ているタリアの輪郭だけだった。

「タリア様の言うとおりにしてください。ボス」

同時に、後ろからはルチアーノの声が聞こえてきた。

「くそっ、ルチアーノ、助けて! 助けてくれ! 立ち上がれない!」

セロンは叫んだ。しかしついに耳にまで異常が来たのか、自分の声はまるで小娘にように聞こえた。やがてひどい耳鳴りがし、セロンは頭を抱えて床を転げまわった。

「お願い、セロン・レオネ」

またタリアの声が聞こえた。頭が割れそうな耳鳴りの中でも、彼女の声だけははっきりと聞こえてきた。

「今回だけ、私の言うことを聞いて。手術を受けなさい。そうすれば……」

その瞬間。

全ての痛みが消えた。

いや、正確には意識が遠のいていく感覚だった。耳鳴りも、めまいも、手足の痛みも、すべてが消えた。視界が真っ暗になっていく。

その闇の中で、タリアの最後の声が聞こえた。

「……すべてがうまくいくわ」

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著者プロフィール チャン(CHYANG)。1990年、韓国、ソウル生まれ。大学在学中にこの作品を執筆。韓国ネット小説界で話題になる。
「公演、展示、フォーラムなど…忙しい人生を送りながら、暇を見つけて書いたのが『LEONE 〜どうか、レオネとお呼びください〜』です。私好みの想像の世界がこの中に込められています。読んでいただける皆様にも、どうか楽しい旅の時間にできたら嬉しいです。ありがとうございます」

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