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朝野 窓辺
2020年8月11日 11:31
言葉を使役する事を教えた父は知識と知恵の差は教えはしなかった知識はあっても知恵にできないこの焦燥それらの苦悩を伝える事ばかりが達者だ社会人とは。等の強弁が相殺法の力を借りても看破できぬ時単純なものこそが力を持つ事に気づくでは複雑なものに力はない。訳ではない詭弁ばかり達者になって人生に於いてはままごとだ赤子の魂百までなので私は百一歳まで生きようと思う
2020年9月1日 10:30
そこでぼくはぽつねんと座っている漠々とした野原が広がっているゆうすげが辺りに咲いている夕焼けが橙に染めているいまここはどこだろう。遠くからぼくを呼ぶ声がする風にのって低い声でどこか聞き覚えのある声だぼくはいったいなんだろう。頭上には一羽の鳥がいる見るにあれは夜鷹だろう夜鷹はますます上昇し星になって消えていくここはどこでなんだろう問いに答える人はなしただこの僕
2020年9月14日 17:16
赤銅色の錆が僕の身体を覆い始め橙色の夕焼けがその区別を曖昧にする逢魔が時生活の崩れ去る音が耳の内で爆ぜ標準時は君の笑顔だけ夢で逢いましょうまたいつかの日々の為この時を保存して夢で逢いましょう善悪なんてままごとでしょう三千世界のその内で
2020年9月17日 15:03
かるいことばを握りつぶせば灰が掌に跡を残す隣には幼子が欠伸をし母親の胸に顔を押し当てているぬくもりと表すには程遠い生命を顕現する営みのバトンと車窓は雪波を額の様に彩る不幸かどうかも分からぬ儘に現在のこの瞬間はあぶくの様だ楽しくない事が不幸であると単純な思考は錆びて動かない詩人ランボーの様だとは言わない全ての感傷はまだらな電車の揺れに溢れる到着地に降り立つと空は曇天だ
2020年10月13日 17:34
なにを書こうか。という時に限って原稿用紙の余白が漠々とした砂漠のように広がってそこで僕は一人で立っている”ただゆっくりと眠れる夜が欲しいまどろみのうちにそのまま眠れる夜が欲しい”原稿用紙の余白は知らぬ間に文字の高層ビルにおののき静寂から一歩ずつ尻込みしている”世界はこれでよいのだ完全さと不完全さの間で揺らぎとこしえに眠る夜を探すこれで
2020年10月26日 08:35
写真写真はその瞬間を切り取る写真は恥も外聞もなくありのままにその時を写し取って、色を補完する。写真写真に潜むアイロニーをぼくは知らない過去のなごりと未来の新鮮さの色は写真の中の青空といっしょだ。写真写真はなおも切り取ってゆく。つぎはぎだらけの世界が保管されてゆく。襤褸といえば洒落っ気があるがその実、それはただ生々しい人類の発露だ。写真
2020年11月20日 23:11
「ひと目を憚らず言おうか僕は実は君の事を忘れているんだ。」病室の窓は珍しい丸型でこの部屋に宿る静寂は四角だゆっくりとラレタンドする心臓にまどろっこしい真実は要らない爺様は世界のお隣でゆっくりと植物に水をやっている昔聞いた声色を今の微かな声色が上塗りする僕と貴方と婆様のそれはそれは綺麗な三角形は今はただ一筋の直線となりて爺様の生え際の向こう側の斜陽する未来を
2021年1月22日 11:52
ポテトチップスを頬張るわたしコーヒーを飲むわたしおんぶ紐を編むわたしわたしはわたしが大好きなので他の誰よりも大切にしてあげます電車の中で席を譲るわたし同僚に飴玉をあげるわたし決して自己満足がないとは言わないけれどそれが人間の本領でしょう?わたしはわたしを愛しているので世界がわたしを愛してくれるたった一度の人生ですもの宇宙に歴史が無いようにわたしはわたしを刻んでい
2021年7月9日 16:07
夕焼けは何故 旅情を煽るのか 朝焼けは何故 希望に満ちるのか 世界をいくら解体しても それは玉ねぎの皮 最後には何もない 平易な言葉で良いじゃないか 難儀な世界じゃあるまいし 少し生き 夜には死んだように眠り 僕のクオリアは 謎のまま、そのままに ただこの漠々とした大地に 一場の夢を見て 僕は僕という現象を この主観が終わるまで 愛そ
2020年8月4日 13:57
あの波と同じように僕はなにかを忘れているそれは大事なことのようでいてきっとなんでもないただの戯れごとだろうその日に僕らはお互いを愛しあったそしてその日に僕らはコーヒーを飲みながら語り合ったこれからのことこれまでのことそして君を好きということあの波を見ていると最初に波を描いた人の不思議さを思う波はこの世界でもっとも表し難いものの一つだ。人の一生の謎人の死ぬ謎それら