朝野 窓辺

詩を書いたり、日常の中での思考を書きます。

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あの波と同じように 僕はなにかを忘れている それは大事なことのようでいて きっとなんでもないただの戯れごとだろう その日に僕らはお互いを愛しあった そしてその日に僕らはコーヒーを飲みながら語り合った これからのこと これまでのこと そして君を好きということ あの波を見ていると 最初に波を描いた人の不思議さを思う 波はこの世界で もっとも表し難いものの一つだ。 人の一生の謎 人の死ぬ謎 それらを考える青春に 僕らはお互いにシェイクスピアを語った。 人生という主題について

    • 雑感

      「人は生きる為に悲しむのだと思う。 でもなければこの悲しみの為に泣く自分があまりにも可哀想だ。」 そう、彼女は言った。 華奢な肩はいつにも増してその薄さに威厳を放っている。 僕はその折れそうな君を抱きしめてあげたいと思ったが、その威厳にあてられ、僕は一人の奴隷のように誇りを失い、君を抱きしめる腕を持たなかった。 持っているのはいつも言葉だけだ。 「人は生まれながらにして不平等であるとカミュは語った。 だから君の語る言葉は真実であるように僕は思う。 それはあまりにも人間的で

      • 「Untitled, For Observer」

        同じ悲しみを何度も味わっているの。 擦り切れた悲しみは、以前の悲しみと比べると人肌を感じて、 私は自分の弱さすら好きに思えてくるわ。 何故あなたの側にいるのか、私にはわからないの。 きっとそれは不幸なことなのに。 私の青いところをあなたに上げても、あなたは少しも喜ばないのに。 そうして私の心の表面にミミズができるの。 生きる事、なんて言い尽くされた言葉では、 ちくりとも私の人生を刺さない。 こうした弱い言葉がどんな風に見えるか知っているの。 また、こうしてメタ的にマトリョ

        • 「今から過去を知る旅」

          何かを知る度に、僕の知っている事は押し出されてしまい 自分の頭から溢れ出てしまうから 僕は近視になっていて 今は夜景を真ん丸にして楽しんでいる ただの深呼吸がまるで 煙草の一服のように感じられる今だから 自分の一挙手一投足が感情に置いていかれ まるで僕はダイダラボッチのように緩慢だ 生活を主人公のように生きれない いつでも肩の上のカッコウが僕の頭を叩いてくれるので 僕の言葉はまるで喃語のように今ぼんやり響いている いつぞやか夢にみた、布団にくるまる温い一時を引き出して

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        記事

          「World Order」

          僕が産まれて 世界がまだ赤ん坊だった頃 それは酷く曖昧で抽象画のようだった 花はまだ名前を持たなかったが 僕は色を知り、また香りを知った 世界はまだ幼稚で幻すら見せたが 僕はそんな世界に精一杯しがみついていた 僕が産まれて 世界の頬にニキビができ始めた頃 世界は知らぬ極彩色で溢れていた あらゆるものの名前を知り ケプラーの法則が僕の世界へのまじないであった 世界は自分の広さを誇り 僕は世界をこの掌に収めようと背筋を伸ばしていた 僕が産まれて 世界の眉間に皺ができ始めた頃

          「World Order」

          愛のかたち

          私があなたを愛していた あの雨の日に あなたはバラッドを歌った 旋律はどこか懐かしい けれども私はあなたの歌声が好きではない ただ、私の名前をそっと呼んでほしい 私の心臓の形に沿って あなたも私を愛でて欲しい 私はあなたの声が好き * ゆみこは夢の中にいるような女だった ゆみこはいつでもどこか白々しくて でもその白さはどこかの世界へ繋がっていて 僕の黒さを際立たせた様だった ゲーテが最初に人と色の関係を知ったが 僕は彼女の白さにいまでも浮気をしている ゆみこは僕の愛し

          愛のかたち

          フィルム・コラージュ

           気怠いベッドの上にいれば  雨はやさしく降ってくるから  手繰り寄せた布団の隣に  優しい君が眠っている  世界は未だに夜明け前でして  そんな語調を崩さぬ程に  世界はこんなにも豊かなので  愛の豊かさと親和している  いま未生の森の奥深くで  一杯の水を分かち合いたい  だれでもないあなたと。  そんな昨日の愛の語り合いは  いつぞやの8ミリフィルムの様に  沈黙ですら掻き消している

          フィルム・コラージュ

          クオリエ・クオリア

           夕焼けは何故  旅情を煽るのか    朝焼けは何故  希望に満ちるのか    世界をいくら解体しても  それは玉ねぎの皮  最後には何もない    平易な言葉で良いじゃないか  難儀な世界じゃあるまいし  少し生き  夜には死んだように眠り    僕のクオリアは  謎のまま、そのままに  ただこの漠々とした大地に  一場の夢を見て    僕は僕という現象を  この主観が終わるまで  愛そうと思った  

          クオリエ・クオリア

          こことそこ

           ここではないどこか  そこではないどこか  あおぞらのかなた?  うちゅうのそこ?    ここではないどこか  あちらでもないどこか  きぎのねっこ?  もしくはひがん?    じぶんをほりすすめて  やわさをもとめても  いずれかたいところにあたって  ここではないどこかをもとめて    それでもいきている  なにげないきょうは  たしかにここでありつづける

          こことそこ

          ミクロコスモスなわたし

          ポテトチップスを頬張るわたし コーヒーを飲むわたし おんぶ紐を編むわたし わたしはわたしが大好きなので 他の誰よりも大切にしてあげます 電車の中で席を譲るわたし 同僚に飴玉をあげるわたし 決して自己満足がないとは言わない けれどそれが人間の本領でしょう? わたしはわたしを愛しているので 世界がわたしを愛してくれる たった一度の人生ですもの 宇宙に歴史が無いように わたしはわたしを刻んでいく そう わたしって 宇宙だったのね

          ミクロコスモスなわたし

          生え際の向こう側

          「ひと目を憚らず言おうか 僕は実は君の事を 忘れているんだ。」 病室の窓は珍しい丸型で この部屋に宿る静寂は四角だ ゆっくりとラレタンドする心臓に まどろっこしい真実は要らない 爺様は世界のお隣で ゆっくりと植物に水をやっている 昔聞いた声色を 今の微かな声色が上塗りする 僕と貴方と婆様の それはそれは綺麗な三角形は 今はただ一筋の直線となりて 爺様の生え際の向こう側の 斜陽する未来を照らしている

          生え際の向こう側

          写真

          写真 写真はその瞬間を切り取る 写真は恥も外聞もなく ありのままにその時を 写し取って、色を補完する。 写真 写真に潜むアイロニーを ぼくは知らない 過去のなごりと未来の新鮮さの色は 写真の中の青空といっしょだ。 写真 写真はなおも切り取ってゆく。 つぎはぎだらけの世界が保管されてゆく。 襤褸といえば洒落っ気があるが その実、それはただ生々しい人類の発露だ。 写真 それは発明 写真 それは瞬き 時のなんたるかを知らぬ我々にとって 砂時計

          素敵な孤独

          なにを書こうか。 という時に限って 原稿用紙の余白が 漠々とした砂漠のように 広がって そこで僕は 一人で立っている ”ただゆっくりと眠れる夜が欲しい まどろみのうちに そのまま眠れる夜が欲しい” 原稿用紙の余白は 知らぬ間に文字の高層ビルにおののき 静寂から一歩ずつ尻込みしている ”世界はこれでよいのだ 完全さと不完全さの間で揺らぎ とこしえに眠る夜を探す これで世界はよいのだ” ついに原稿用紙にちいさい人々が住み始め ざわめき、疑い

          素敵な孤独

          詩の昼寝

          僕の詩には 血が宿っている 太陽に透かせば 真っ赤な血潮が 脈打っている どうにかして僕は この詩に悲しみを与えてやろうとする だのに僕の詩は なんにも言わない 詩は行間の間で ぐっすりと眠り 眠気まなこで 真理を欠伸するだけ 僕の詩には 血が宿っている 太陽に透かせば 真っ赤な血潮が 脈打っている 真っ青な空が嫉妬して 橙色に霞んできた だのに僕の詩は なんにも言わない なんにも語らず なんと行間で昼寝をしだした

          雪波電車

          かるいことばを握りつぶせば 灰が掌に跡を残す 隣には幼子が欠伸をし 母親の胸に顔を押し当てている ぬくもりと表すには程遠い 生命を顕現する営みのバトンと 車窓は雪波を額の様に彩る 不幸かどうかも分からぬ儘に 現在のこの瞬間はあぶくの様だ 楽しくない事が不幸であると 単純な思考は錆びて動かない 詩人ランボーの様だとは言わない 全ての感傷はまだらな電車の揺れに溢れる 到着地に降り立つと空は曇天だ 白い地面に私は初めての足跡をつける 家はないので家路もない だからこの足跡が

          「command S」

          赤銅色の錆が 僕の身体を覆い始め 橙色の夕焼けが その区別を曖昧にする 逢魔が時 生活の崩れ去る音が 耳の内で爆ぜ 標準時は君の笑顔だけ 夢で逢いましょう またいつかの日々の為 この時を保存して 夢で逢いましょう 善悪なんてままごとでしょう 三千世界のその内で

          「command S」