マガジンのカバー画像

ひらがな

5
ひらがなのような詩
運営しているクリエイター

記事一覧

愛のかたち

愛のかたち

私があなたを愛していた
あの雨の日に
あなたはバラッドを歌った
旋律はどこか懐かしい

けれども私はあなたの歌声が好きではない
ただ、私の名前をそっと呼んでほしい
私の心臓の形に沿って
あなたも私を愛でて欲しい
私はあなたの声が好き



ゆみこは夢の中にいるような女だった
ゆみこはいつでもどこか白々しくて
でもその白さはどこかの世界へ繋がっていて
僕の黒さを際立たせた様だった

ゲーテが最初に

もっとみる
フィルム・コラージュ

フィルム・コラージュ

 気怠いベッドの上にいれば
 雨はやさしく降ってくるから
 手繰り寄せた布団の隣に
 優しい君が眠っている

 世界は未だに夜明け前でして
 そんな語調を崩さぬ程に
 世界はこんなにも豊かなので
 愛の豊かさと親和している

 いま未生の森の奥深くで
 一杯の水を分かち合いたい
 だれでもないあなたと。

 そんな昨日の愛の語り合いは
 いつぞやの8ミリフィルムの様に
 沈黙ですら掻き消している

親子のリレー

親子のリレー



そういえば雪

白雪が降っていた

空の奥から溢れる様に

まるで神様の落とし物みたいと

息子は溢れるように笑った

夕焼けは嫌いだった

一瞬、刹那に瞬いて

こんな文みたいに

破綻していても

夕焼けはその橙で

皆の視線を掠め取るだけ



父の書斎が好きだった

本の香りとインクの香り

なんだか高そうな万年筆

成長してそれは安物だと知ったけど

”小さい背中”と題された

もっとみる
生きるという事

生きるという事

 私が私という形をして

 三十余年が経つ

 幸せと呼ぶには程遠く

 不幸せにもなりきれない日々が

 私という形を作り

 人に微笑んだりする。

こことそこ

こことそこ

 ここではないどこか
 そこではないどこか

 あおぞらのかなた?
 うちゅうのそこ?
 

 ここではないどこか
 あちらでもないどこか

 きぎのねっこ?
 もしくはひがん?
 

 じぶんをほりすすめて
 やわさをもとめても
 いずれかたいところにあたって
 ここではないどこかをもとめて
 

 それでもいきている
 なにげないきょうは

 たしかにここでありつづける