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生え際の向こう側

「ひと目を憚らず言おうか
僕は実は君の事を
忘れているんだ。」

病室の窓は珍しい丸型で
この部屋に宿る静寂は四角だ

ゆっくりとラレタンドする心臓に
まどろっこしい真実は要らない

爺様は世界のお隣で
ゆっくりと植物に水をやっている

昔聞いた声色を
今の微かな声色が上塗りする

僕と貴方と婆様の
それはそれは綺麗な三角形は

今はただ一筋の直線となりて
爺様の生え際の向こう側の
斜陽する未来を照らしている



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