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あの波と同じように
僕はなにかを忘れている
それは大事なことのようでいて
きっとなんでもないただの戯れごとだろう

その日に僕らはお互いを愛しあった
そしてその日に僕らはコーヒーを飲みながら語り合った
これからのこと
これまでのこと
そして君を好きということ

あの波を見ていると
最初に波を描いた人の不思議さを思う
波はこの世界で
もっとも表し難いものの一つだ。

人の一生の謎
人の死ぬ謎
それらを考える青春に
僕らはお互いにシェイクスピアを語った。
人生という主題について
僕らの考えることは一致していたからだ。

繰り返し生きていけ
そして繰り返し死んでいけ
順繰りに毎日は更新される
その波の中で

僕らは戯れよう、と
そう、あの日に誓った夏は
その華奢な背を撫ぜる風のように
自由で傲慢だった。

波に遊ばれた僕らのその夏は
あの波と同じように
なにかを持ち去り
そして忘れ去られた。

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