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深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

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散文詩/自由詩まとめ。
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2021年3月の記事一覧

魚のしっぽは不等号

目を見て話しなさいと叱られたときから誰の目も見れなくなって、 昼夜、波の音ばかりが聴こえている。海のちかくで暮らしてみたかった、(ほんとうはどこだって良かった)、魚だったのかもしれないと、小さな小さな蟹にだけ相談したかった、潮風を吸って、吐いて、呼吸する、蟹は波にさらわれていく。どこででも、生きにくいと絶望を抱きしめることは、どこででも、生きていけるほど絶望とうまくやれるってことだ。
すこしだけ眠

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0326今すぐ見つけてくれ

こんなに光ってんだから見つけろよ、って、思うたび光を失うような気がしちゃう、犬はかわいいからずるくて、じゃあわたしもかわいいからずるいんだけど、いまのとこ、目に見える得なんて君にかわいいって言ってもらえることくらいで、割に合わない。
窓の外、沈んでいく太陽がやけにおっきい、空に穴が空いたみたい、昔読んだ漫画に描いた魔法陣の外側をみんなみんな包んでしまう魔法があって、そういう気持ちになった、わたした

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スケープ・ゴートの王国

 
小さくて臆病な犬の
吠え声が今日もどうして怖い
そんなに喉を枯らしてまで
追い立てるものがあるのかい
 
夢の中じゃ誰も彼も
幸せになれなくて
目が覚めても泣いてるそれだけの一日
 
犬に会いたくないから外へ出るのやめよう
 
羊がいっぴき羊がにひき
柵を飛び越えて自由になれば
今夜は深く眠れるのかしら
羊がさんびき羊がよんひき
明日は明日の羊が鳴く
 
 
小さくて臆病な人の
笑い声がいつ

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折れた体温計のエチュード

かみさまに名前をつけるのが日に日に下手になって、つめたいものはつめたいまま燃えていく。恒温動物、愛情を食べなければ体温を保っていられなくて、快晴、陽に当てたぬいぐるみのやわらかなあたたかさが気高く見える、彼らをできそこないにしたのはわたしだけれど、わたしはけしてそれを謝らない。
できそこないの方がかわいい。
ちょうどよく、必要なところだけに綿を詰めて、そんでちょうどよく、ずれていたほうがかわいい。

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不便なものばかり愛するのやめたい0312

 
わたしときみと詩以外ほんとうに好きなものなんてない気がする、あの子ほど必要じゃない音楽、あの子ほど必要じゃないアイドル、あの子ほど必要じゃないワンピース、あの子ほど必要じゃない、物語。
質量がないとこの星では浮遊してしまうから、必死にかき集めてしがみついてみる、身体はこんなに重たいのに感性がこんなに軽くて、そんなんで詩を書いてごめんなさい、って、謝るポーズ、そんなこと微塵も思ってなくてごめんな

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パラダイム・バレット

 
やわらかい鋭角の銃弾でてあしを順番に撃たれて、ぼくたちは整列した液晶におなじかたちに縫い合わせられる。
Hey Siri、ぼくは今、かなしいのでしょうか。どうせ整えるなら感情まで手にかけてほしい。
胸のおくの痛みや、腹のそこの疼きは、取るに足らない詩になって街を歩く、彼らみたいに自由になりたかった、ぼくたちをただの集合体に変えたひとたちは詩を読まない、銃弾をこめるあいだの鼻唄には、歌詞がない、

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