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僕と貴女。 曇った寒空の下、並んで歩く。薄く色付いた秋の葉が、疎らに落ちている道をゆ…
雪が降り、街は白く、 貴女は眠っていた。 窓を開け、息を吐き、 貴女は目覚めた。 冬の朝に、…
諦めるな! その一言で、音を上げる人の口を封じられますか? 振り返るな! その一言で…
明かりをすべて消した薄暗い部屋の隅で、ヤマハの黒いアコースティックギターがほこりを被っ…
「僕は緋色が一等好きなんだ」 そんな謎めいた、不思議な短い言葉をあなたは発した。 まど…
ほんの数分ほどの通り雨が去ったあと、色濃く濡れたアスファルトは翼を広げたカラスの模様を…
ふと、あなたの顔が浮かんできました。あなたに会える(といっても、名も知らぬ他人同士ですから顔をお見かけするというほうが正しいでしょう。しかし、会える、と言わせてください)のは、水曜日の朝のバス。ずっと僕は春休みだったので今日、久しぶりに会えました。なのに意地悪ですね。いつものように、あなたは顔色一つ変えずに(あたりまえですが)、僕の目の前を通り過ぎ、いつものように、一番奥にすわってしまいました。僕が休みの間に通勤時間が変わったのではないか、まだ同じバスに乗れるのだろうか、休
零れ落ちるは重い音。 瞬く間、剣を横一線に一振り。刃を交えることなく、あっけなく目の…
夕方、いつも世話をしている、狭い庭に咲く、大切に育てた薔薇たちの中で一輪が欠けているこ…
ピンヒール、ロングブーツ、サンダル、スニーカー、ミュール、果てはロッキンホース等々。靴…
歌が聞こえる。 ――甘い 甘い ハチミツ とろけるような ハチミツ 夕焼けを映して わ…
わたしは毎晩、形のない睡眠と格闘している。 というのも、毎日仕事に疲れ果ててすとんと…
雨の数だけ恋したうさぎ。緑の草原を走り、大地に十色の虹を架ける。駆け抜けた先で疲れた体…
梅春。名古屋。午後一時。陽気はまだ遠かった。 母親と手を繋いでいた、Shirley Templeの赤いAラインのコートを着るあかりは、空いている左手で爪を立て、荒れた頬を無造作に掻いた。その様が視界に入った母親は、すぐ横にバス停に行列ができていて、また、少なくない人が往来する道の真ん中であるにも関わらず、あかりの手首を乱暴に掴んで叱責した。 「やめなさい!」 途端、硬直したあかりの顔に、一瞬にして涙が溢れ出した。泣いた。泣き喚いた。母親はさらに語気を荒らげた。 「泣かな