マガジンのカバー画像

「MEDLEY」近江マイコ作品集

31
近江マイコの掌編・短編小説、散文詩をまとめたものです。
運営しているクリエイター

記事一覧

agápē

「自分には、生きている『意味』が無い」だとか、 「自分には、生きている『価値』が無い」だ…

近江マイコ
2か月前

逆行

「信仰」  貴方の神様を侮辱しないから、どうか僕のことを放っておいてください。馬鹿にさ…

近江マイコ
9か月前
1

「夢に見る」

 僕と貴女。  曇った寒空の下、並んで歩く。薄く色付いた秋の葉が、疎らに落ちている道をゆ…

2

「雪のくちづけ」

雪が降り、街は白く、 貴女は眠っていた。 窓を開け、息を吐き、 貴女は目覚めた。 冬の朝に、…

1

「美意識過剰」

 諦めるな! その一言で、音を上げる人の口を封じられますか?  振り返るな! その一言で…

1

「ギターと約束と」

 明かりをすべて消した薄暗い部屋の隅で、ヤマハの黒いアコースティックギターがほこりを被っ…

2

「ドレスは燃えている」

「僕は緋色が一等好きなんだ」  そんな謎めいた、不思議な短い言葉をあなたは発した。  まどろむ眠たげな眼差し、暗く物憂げな声。けれども、夢を語るようなほがらかな面持ちで。  天は灰色の雲が色濃く占める。  漆黒の羽で飛び交うカラス。静寂をかき乱し鳴くハト。街が起き出す時間帯。  ここに、ふたりきり。ベッドの上、一睡もしないで寄り添った。部屋の中はたったひとつ、白熱灯のオレンジの明かりで小さく照らされていた。  困った。  あの日、あなたの望みは何でも叶えると約束したというのに

「青い瞳」

 ほんの数分ほどの通り雨が去ったあと、色濃く濡れたアスファルトは翼を広げたカラスの模様を…

2

「水曜日」

 ふと、あなたの顔が浮かんできました。あなたに会える(といっても、名も知らぬ他人同士です…

1

「ロマンスの亡霊」

 零れ落ちるは重い音。  瞬く間、剣を横一線に一振り。刃を交えることなく、あっけなく目の…

「赤い動機」

 夕方、いつも世話をしている、狭い庭に咲く、大切に育てた薔薇たちの中で一輪が欠けているこ…

「あまいくつ」

 ピンヒール、ロングブーツ、サンダル、スニーカー、ミュール、果てはロッキンホース等々。靴…

1

「シェリー」

 歌が聞こえる。 ――甘い 甘い ハチミツ とろけるような ハチミツ 夕焼けを映して わ…

1

「わたしは黒い夢を見る」

 わたしは毎晩、形のない睡眠と格闘している。  というのも、毎日仕事に疲れ果ててすとんと眠りに落ちるのはいいのだが、どうも眠りが浅いらしくたびたび目を覚ましてしまうのだ。そして、たいてい悪い夢がくっついてくる。  悪夢は手を変え品を変えわたしを襲う。断崖絶壁から突き落としたり、ジェットコースターの先がなかったり、とことんわたしを殺そうとする。そんなにわたしが憎いのか。わたしが夢に何をしたというのか。こちらからは手出しはできない、まな板の上の鯉だというのに。  昨夜もまた夢に殺