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黒影紳士 ZERO 01:00 〜双炎の陣〜第九章 逃亡者

今回の時幕ラストスパートです。
スキ🖤の推し活お願い致します🎩🌹

第九章 逃亡者

「どうした?サダノブ」
黒影は息を切らして出て来たサダノブに、一先ず落ち着いて貰うようにそう言った。

「先輩!勲さんっ!……獄中の高梨 光輝(たかなし こうき)が!……高梨 光輝がっ!!」

 サダノブは息も整えず其の名を伝える。
「おいっ、サダノブ!高梨 光輝が如何したんだ!!」
 寄子の周辺を過去にする技を掛けた、憎き張本人の名を聞き、勲はいても立ってもいられず、サダノブに掛けより肩を両手で揺さぶった。


「……先輩……!先輩……!!」
 サダノブは苦しそうに黒影を呼ぶ。
 黒影は只事では無いと、勲と同様にサダノブに駆け寄る。
「如何したんだ。冷静さを欠く場面にこそ、落ち着け」
 と、黒影はサダノブの息が上がったままの背を摩った。
 如何やら軽度の過呼吸を起こしているらしい。
 それ程にも、何かのショックがあったと言う事だ。
「高梨……高梨 光輝が脱獄しました!」
 サダノブは確かにそう言った。
 黒影はゆっくり顔を上げて勲を見る。
 勲は時を止めたかの様に、瞬きもせずに其の事実を受け入れる困難さを表情に現す。
 勲が理解すると共に、じわりじわりと強い怒りの殺気にロングコートが靡いた。
「待て!……待つんだ、勲さんっ!」
 黒影は怒り任せに高梨 光輝がいた筈の能力者刑務所へ向かうであろう勲を止める。
「何故だ!……私しはお前を手に掛けてでも、高梨 光輝に術を解かせる為だけに此の時代に潜り込んだんだ!……未だ若い黒影紳士の書すら脅してなっ!もう引き返す事は出来ないんだ!何もかも……全ての目的の逃亡を前に、この私しの「影」に黙っていろとでも言うのかっ!?……そんな権利……黒影には無い……。私しを誰だと思っているんだ……」
 勲は、本物の主人公として、正しい事をしていると言いたい様だ。
 邪魔をすれば……きっと黒影すらタダでは済まされない事は分かっていた。
 勲の全身を纏う蒼い炎……その立ち昇る先には何かが燃やされた灰の様な真っ黒な燃えカスがヒラヒラと舞うのだ。

懐かしい影絵に似ておりますね。


 其れは……追跡に一斉に向かう前の影の欠片。
 何れか一つにでも接触すれば、其の追跡からは逃れられないと言う。
 逃げる犯罪者からすれば、まさに死の灰の様に見えたに違いない。
「分かっている!……否、分かっていないと思われても構わない!待てと言っているんだ!……勲さんは追跡は早いが状況より単調な感情に走り過ぎる。例え、仮の主人公であれ、僕だから分かるんだ!僕が過去の己を知っているのは至極当然の事。……サダノブは未だ全てを話していない。ましてや、我が探偵社ならば、行く宛ても無く探すより、より有益な情報を集め追跡の手助けが出来る!……そう直ぐに他人を信じないからと、諦めるのが早過ぎですよ。……僕は……協力すると言っているんです。能力者刑務所は完全に能力が使えない環境だ。なのに脱獄したんです。ただの脱獄と違うんですよ!……此の脱獄は最早、此の時代を変える由々しき事態だ。僕にとっても此の脱獄の解明は、此の時代を守る為に必要な事何ですよ。理由があり……概念が一致している……それでも、僕を信じられませんかっ!?」
 黒影は勲を引き留める為、必死に言った。
 凄まじい殺気を受け乍ら、其れに負けない赤い鳳凰の炎を漆黒のロングコートに纏わせ燃え上がらせる。

 平和と平等に……間違いが無い様……。
 勲さんを説得する僕が、僕であります様に……。
 他の何にも捉われず、ただ真っ直ぐに……彼を止められます様に……。
 正義の揺らぎを攻めず……理解出来ます様に……。

「先輩……親父……親父が!」
 サダノブがそう言って黒影の顔を見た時、黒影は何が言いたいのか知り、ゾッとした。
「……佐田……佐田 明仁(さだ あきひと※服役中だったサダノブの父)を使ったと言うのか?!佐田さんは?!……佐田さんは無事なのかっ?!」
 黒影はサダノブの肩を掴み問う。
 サダノブが余りに慌てていたのは、勲さんが追っている事件に関するからだけでは無かったのだ。
 脱獄する際に利用したのは、サダノブなど比にならない程高い思考操作を人質にしたか、利用し殺害したからに違い無かった。
 罪を感じ、己の能力は誰にも如何にもならないと、自ら贖罪と共に刑務所を出られるにも関わらず出なかった佐田 明仁。
 サダノブの成長に素直を喜べるようになった父は、此の「黒影紳士」の世界を一時脱獄して罪が増えるのを覚悟で救いに現れた。
 鸞が……彼の罪を減刑にしようと裁判官になり、司法取引を考えている様だった。
 ……なのに……。こんな所に来て、其の強過ぎた脳操作の力が利用されるとは……。

 サダノブだけではない……。
 黒影は悔しくて、拳を強く握り締めた。

 余りにも強い二つの能力が再び野放しにされたのだ。

「……分からない……。分からないんですよ、先輩!!」
 サダノブの目には涙が溢れていた。


 高梨 光輝と共に能力者刑務所を脱獄した佐田 明仁の消息………………

 …………不明。
 生存確認…………出来ず。

「分からなければ調べるんだ!そして知るのが探偵だ。どんな「真実」でも此の目で見るまで、僕は佐田さんが生きているとも過信しないし何一つ信じない!サダノブ……泣いている暇があれば何が起きたか知るのが先だ!……勲さん……気を鎮めて……。僕も此の調査の邪魔は勲さんでも決して許しません。例え、本物の主人公を倒す事になっても、です!如何しますか?僕等は情報収集はお得意だ。……さぁ……」
 黒影は一瞬……誰にも邪魔されないと言う言葉に相応しい殺気を大きくしたが、最後の言葉と共に殺気を消すと優しい笑顔で、勲にサッと手を差し出した。



 ……もう……独りなんかじゃない……君は……。
 もう一度やり直せるならば、君にとって僕は……そんな存在に成りたかったんだ。

「已むを得ない選択肢ではあるが……目的は同じようだ。利害関係の一致だな……」

 何故こんなにも自然に手を取れるのか……。
 信じる、信じないも無いのは己だからか……。
 こんな風に、誰かを信じる事が出来ればと思った日はある。
 猜疑心ばかりの己は愚かしく、虚しかった。

 今更に素直に言えるならば……探していたのだ。
 信じても良い人間を……。

 信じるとは恋愛の様に永遠に見付からず死ぬ事もある。
 信じるとは己の無防備な背中を見せる様で誰だって怖い。
 ただ、裏切られても良いと思えたのは、黒影が鳳凰だから裏切らないと思った訳では無い。
 黒影もまた人間の闇……「影」を持つ。

 理由を探せばキリが無い。
 其れこそ、「夢探偵社」にでも依頼するしかなさそうだ。   

 足りない物を見付けたんだ……。
 己であり、己で無い者の中に。
 人は其れを……

「記憶」
 と、云ふ。
ーーー

 孤独と孤独
 二人でも孤独
 それでも形が違う月ならば
 飛び去る鶴さえ笑う
 あのよろし(あかよろし※明らかに宜しい)
 真実と事実
 光に照らし また次の時刻む

ー――――

此処で一先ず終わりですがぁ〜…
「黒影紳士」なのでやっぱり続いちゃいます。
次回は他の更新もあるので更新日未定です。
🆙しましたら、此方と、サイトマップ🗺️新着にてお知らせ致します。

ご高読、誠に有難う御座います🎩🌹
また月が巡ります頃、お逢い致しましょう🌕

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お賽銭箱と言う名の実は骸骨の手が出てくるびっくり箱。 著者の執筆の酒代か当てになる。若しくは珈琲代。 なんてなぁ〜要らないよ。大事なお金なんだ。自分の為に投資しなね。 今を良くする為、未来を良くする為に…てな。 如何してもなら、薔薇買って写メって皆で癒されるかな。