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「黒影紳士kk」season4-5幕〜帰ろう…黒影〜 蒼と赤、炎の旋律編🎩第四章 幻視と影

――第四章 幻視と黒影――

「本気のぉおー、ちょっと待ったぁああーー!」
 サダノブが流石にそりゃないと、歩き始めた黒影の後ろをダッシュして腕を取り止める。
「えっ、困んですけどぉー…………。本気は止めて。僕、妻子持ちなんで。――って言うかぁ……サダノブ、やっぱり馬鹿っぽいしぃー、変態犬だしぃー、いびき五月蝿いしぃー、たまにうざぃくらいしつこいしぃー、よぉーく考えても、無理。……よって、今回も当然、これからもお断りだ。」
 と、黒影は笑いながら、毎度の昭和の告白番組遊びをした。
「いや、合ってるんですよ……合ってるけど!その、「しぃ……」も、昭和ギャルなんですけど!流石に遊びでも言い過ぎ最近!傷付く!遊びの度じゃないっしょ。」
 と、サダノブは言うので、黒影は考え直し、
「えー、じゃあ……生理的に無理です。無理なものは無理なんですっ!御免なさいっ!」
 と、一礼するなり声高めに言って、ニヤリと笑うとプイッと帰り道に向き直し、猛ダッシュし始めた。
「あーっ!本気で、証拠品置いて逃げるの!?……あり得ないでしょう?!しかも、「お断りだ」の方がまだマシだったー!……逃げないでよぉー!先輩っー!社長ぉお――!」
 と、サダノブは追いかけるのだが、黒影は大笑いしながら意気揚々と走り帰るのだった。
 ――――――――――――――――――――

「風柳さん、聞いて下さいよぉー。サダノブの奴、馬鹿だから昨晩、能力者案件の証拠品……現場に忘れたって言うんですよ。……折角見つけた証拠だったのにぃ……はぁ。この件、ウチ(夢探偵社)で預かろうとは思っているんですがね。その証拠品だけ、そっち(警察)で探して貰えませんかねぇ……。場所は大体分かっているんです。しかし、僕らは取り急ぎその件で今日は走り回らなくてはならないようです。」
 と、黒影は朝食のクロックムッシュを食べる途中……元気無さそうに溜め息を吐き手を止め、テーブルの隅に落胆し肘を置き手を組むと、かくんとその上に頭を乗せて、そう話した。
何時も事件の話は食後なのに、風柳も珍しい事もあったものだと黒影を心配している。
「先輩、それっ!」
 サダノブが人の所為にしてと言おうすらると、黒影はサダノブからだけ見える角度でサダノブを睨みゆっくり、にやーっと悪魔の様な薄ら笑みを浮かべた。
そのあまりの、あの証拠品を触りたくない執念の悍ましさと、目で黙らないと殺すと脅され、サダノブはフリーズした。
……潔癖、恐るべしっ!……サダノブは仕方無く黙って聞く事にした。
「何だ、珍しい事もあったんだな。そんなに気を落とすな。証拠品の一つや二つ、直ぐに取り戻してやるさ。それはこっちに任せて、さぁ……勲(黒影の本名)は、余計な事を考えずに、事件を追えるようにちゃんと食べなさい。」
 と、風柳は弟の黒影に元気になって欲しくて快諾する。
「……有難う、お兄ちゃん。」
 と、黒影は「お兄ちゃん」と呼ぶと風柳が喜ぶのを知ってわざとそう言ったが、小さく肩を振るわせた。
「泣くなよ……兄弟じゃないか。」
 と、風柳はうるっとしている。……が、そんな筈もなく、黒影は勝利の笑いを抑えているのだ。
「良かった。本当に頼り甲斐のある兄がいて、僕は幸せ者だっ!」
 と、無い涙を拭くフリをしてケロッと、笑顔になって美味しそうに残りのクロックムッシュを食べた。
「良かったわね、黒影。」
 と、にっこり笑って白雪が黒影に珈琲を出して、サダノブにも緑茶を出してくれた。少し立ち止まると、白雪はサダノブにこっそり、
「分かっているわよ。お疲れ様。」
 と、言ってくれた。白雪は気付いていたのだ。何の悪さも考えずに、黒影が風柳を滅多に「お兄ちゃん」と、呼ばない事ぐらい。
「何時も何か、すみません。」
 と、サダノブは相変わらず気遣いの優しい白雪に、何か言いたくてそう言った。

「……そうだ、鸞は今日休みだったね。予定はあるか?」
 黒影は鸞が朝食を作り座ると聞いた。
「いや、ないよ。捜査?」
 と、鸞は黒影に早く一人前の探偵になりたくて、そう聞いた。
「違うけど、探偵になるなら会わせておきたい人がいる。」
 と、黒影は言った。

 ――――――――――――――――――――――――
「こんにちは。今日はSVIP連れてきましたよ。トップシークレットでお願いします。此処に連れてくるのも大変だったんですから。」
黒影は佐田 博信(さだ ひろのぶ)……つまるところのサダノブの父、佐田 明仁(さた あきひと)に、面会で来ている。佐田 明仁は服役中だが、その話は鸞も知っている。
「おや、それは珍しい……。黒影さんからの紹介なんて。」
 と、佐田はわくわくしているようだ。
「自然な笑顔……ですね。随分練習された様だ。サダノブも連れて来ていますよ。」
 と、黒影はサダノブと鸞を中に入れた。
「僕の息子で鸞と言います。……まだ駆け出しだから、今日は見学。……で、先日幻視の能力者に僕とサダノブが引っ掛かりましてね。僕はサダノブが治してくれたのですが、サダノブのは僕には治せない。それでお願いに伺ったのですよ。」
 と、黒影は佐田に経緯を話す。
「そんな事が……。どれ……とりあえず読んでみましょう。」
 佐田はサダノブの頭をジーッと見上げた。
「はあ……それ程でもない。幻視の残りっカスだ。……本人か物質を見破れば夢みたいなものです。」
 と、佐田はサダノブより思考読みが桁違いに強いので、サダノブの様に手を翳すまでも無く、まるで映画を見ながら説明するように話した。
「その言葉は信じられるの?」
 と、鸞は佐田に聞いた。
「……ははっ、そうか。探偵ならそれで良い。読んだ思考に嘘を乗せれば、あっという間にこうやってこの壁内側の人間さ。」
 と、佐田は答える。
「すみませんね、まだ物知らずで。」
 と、黒影は苦笑いをするしかなかった。
「……構わないさ。素直なんだね、この修羅は。今の私の言葉を聞いても、サダノブに疑いも恐怖も一つも持たない。鸞さんが小さい頃から一緒にいたんだ。二人で遊んだ記憶……私が此処や地下にいて見れなかった景色……それを見せに来てくれたんですね、黒影さん。」
 と、佐田は微笑んで黒影にゆっくり浅い礼をしたので、黒影は帽子の先を軽く摘み会釈し、微笑み返した。
「……僕らは幻視を良く理解していない。能力者で出会ったのは佐田さんぐらいです。つまり幻視の素を見破れば幻視は消える。サダノブがいたから良かったものの、幻視はどうやって作っているものなのですか?思考読み独特のものであれば、サダノブと鉢合わせたくない。」
 と、黒影は率直に聞く。
「確かに思考読み同士は脳死に繋がる。会わないに越した事はない。……けれど、低レベルな幻視のみならば、黒影さんの「真実の目」さえ目覚めれば容易く見破る事は出来る。この幻視は思考読みのそれとは違う。幻視能力者としても、サダノブで治せたならばまだまだ。思考読みと同じ方法か分かりませんが、幻視を見せる時私ならば視神経にイメージを脳を経由し伝える。幻視のみとなるとイメージを視神経そのものに当てるか、目の網膜にイメージのフィルムを貼ればどうでしょう?」
 と、佐田は想像出来る範囲で答えてくれた。
「……成る程……そう聞くと幻視のシステムは単純だ。サダノブも練習するといい。……空間内関係なく幻視したのは他にも何か出来そうだ。案外、一つの能力ではないし、二人かも知れない。弱い幻視と物質……。有難う、非常に参考になった。」
 と、黒影は礼を言う。
「……幻視かぁ。流石にもう他に出来る事ないよなぁ?」
 と、サダノブは佐田に聞いた。
「ああ、無いよ。在っても言わんがな……お前には。」
 と、佐田はサダノブに笑って言った。
「じゃあ先輩には言うのかよぉー。」
 と、サダノブが詰まらなさそうに聞くと、
「黒影さんになら聞かれたら答える。それだけ、打ち明けるに相応しい相手だからな。サダノブも早くそうなって欲しいものだ。」
 そう言って、黒影の方を見る。
「もう、対決なら結構ですよ。僕の脳は商売道具ですから。」
 と、黒影は帽子を深々と被り、終了時間だと聞くとそそくさと部屋をでる。
「……君の記憶の黒揚羽。……とても綺麗だった。生きる活力に溢れている。」
 と、去り際に佐田が鸞に行った。
 ……そうか……。ただ、そんな単純な事で……あの日、僕は生きようと思えた……。
「有難う、教えてくれて。」
 鸞はにっこりわらって部屋をでた。
 ――――――――――――――――――――――

「こんにちはー……あのぉ……鸞さん、いらっしゃいますか?」
 そう言った彼女は、声はか細くブルーの膝下丈のタイトの裾がマーメイドのワンピース。黒のパンプス靴に、ワンピースより少し長めの黒のトレンチコートを、格好良く袖を折り、襟を立て着こなす。そのトレンチコートの襟には青い薔薇のブローチ。頭には青いベレー帽に黒のレザーのラインが入り、スタイリッシュなスタイルのモデルさんみたいだ。
「……あっ、えっと……いますよ。こっち事務所なんです。呼ぶから、そこのソファーに掛けて待っていて下さい。」
 と、言ってサダノブは慌てて鸞の部屋のある2階へ駆け上がる。
「おい、鸞!鸞っ!」
 ノックをしまくり早く早くと急かす。
「何だよ、今……毒作ってたのにっ!危なかったじなないかぁー。」
 と、言いながら鸞が出てくる。
「事務所!事務所に来てる!……ブルーローズっ!」
 と、サダノブは早く行けと階段を指差した。
「……えっ!あつ……もうっ!身嗜みがっ!」
 と、鸞は髪の毛を気にしながら階段を走って降りて行った。

「あっ、来てくれたんだね。今、飲み物は?」
 と、鸞は気を遣ったのだが、
「はーい。 ブラック珈琲お待たせ、お口に合うかわかりませんけど、ゆっくりして行ってね。わざわざ来てくれて有難う。鸞はジンジャエールでしょう?」
 と、白雪は言った。
……あっ……「ちゃん」付け封印してるし。母さん、気を遣ってくれてる……。
「あ、母さん有難う。」
 僕がそう言って笑うと、ブルーローズは少し驚いていた。
「え?お母様?」
 と。
「ああ、そうなんだよ。ロリータだから良く姉か妹に間違えられるんだよね。考えられないでしょう?黒影の趣味だから何とも言えないけどぉー。」
 と、鸞は話す。
「人の趣味やら妻が何だって、鸞?……どうもお久しぶりです。鸞がお世話なっている様で……。まだ犯人前にもならないけれど、仲良くしてやって下さいね。……ごゆっくり。」
 と、黒影は、軽く父親らしい挨拶だけして、白雪を連れて逃げる様にリビングに戻って言った。
 ……父親らしい事、黒影は苦手そうだからな。あれでも頑張ってるから……いっか。鸞は黒影の性格を考えると微笑ましくなり、クスッと小さく笑った。
「……何か良い事でも?」
 ブルーローズが聞いてきた。
「慣れない事をして、頑張っている人って、不器用だけど応援したくなっちゃいますよね……。」
 と、鸞はにっこり笑って話した。
「ふふっ……私、探偵じゃなくても分かります。……黒影さんでしょう?」
 と、ブルーローズは見破ったり!の顔で自信満々に言うので、二人で顔を見合わせてクスクス笑う。
「……あ、あの絵のブルーも綺麗……。」
 探偵社に飾られた一枚の絵画を見てブルーローズが言った。
 鸞は小声で、
「それ、本物のピカソの青の時代です。」
 と、こっそり教える。
「えっ?本物?!」
 流石に幻と言われた名画にブルーローズは固まる。
「あのぉ……、鸞さん。私はえらい所に嫁ぐつもりなのでしょうか?」
 と、不安になってブルーローズが聞くと、
「それは皆が保険に入れないからって……そもそも、事件の謝礼なんだって。……君はお目が高いなぁ……。僕にはまだ良さが分からないよ。君の青に勝る青を、まだ見た事がない。」
 と、鸞はあの青の時代を前に言うではないか。
「やっぱり鸞さんは、絵画より愛の詩人なのですねっ。」
 と、ブルーローズは少し照れて小さく笑った。そして、
「鸞さん……あのう……。私がお誘いするのも変ですが、私が尊敬するシャンソン歌手のRAIN(レイン)さんのライブがあるの。……鸞さんも、色んな曲、覚えてきたでしょう?是非、その師匠の唄を一緒に聞きたくて。それに……鸞さんの事も紹介したいです。……駄目でしょうか?」
 と、今日来た理由を話す。
「……えっと……じゃあ、少しお洒落しないとだね。父に礼節は大事って何時も言われているんだ。カジュアルフォーマルかい?それともフォーマル?」
 と、鸞は慌てて聞いた。
「……ふふっ、鸞さん……私はカジュアルですが?」
 と、コートを開いて見せる。
「はははっ!探偵らまだまだ生半可以下だ。……それじゃあ、少しだけ待っていてね。」
 鸞は階段を昇ってバタバタ着替えをすると、リビングに行くなり黒影に聞いた。
「……どう?!今日はカジュアル!」
 と、息を切らしている。
「まあ、合格点だ。ブルーローズがお洒落さんだから、自然につうるのかな?ブローチちゃんと付けたね。シャツの遊びカラーが入っているのもさり気ない。……良し!後は自信を胸に、優しさをのコートを纏って行けば完璧だ。」
 と、黒影は肩の埃をブラシで落としてやりながら微笑み言った。
「黒影は服の詩人だ……有難う。行ってきまーす!」と、鸞は元気よく手を振り爽やかな笑顔で、ブルーローズと腕を組んで出掛けていく。
 ブルーローズは振り向いて深々一礼をし、
「どうも……お邪魔しました。」
 と、言うので黒影はにっこり笑い、帽子を上げると、
「君ならいつでもウェルカムだよ!また気楽においで。」
 そう、親しみ易く帽子を振った。

「はあ……。アレで良かったのかなぁー。」
 と、二人の姿が見えなくなると、黒影はぐったり椅子に座りだらんとした。
「良く、頑張りました。」
 と、白雪が愛情たっぷり珈琲を出してくれる。
「最初はあのくらいで良いんですよ。お父さんも大変ですね、先輩っ。」
 と、サダノブは黒影を見て笑った。
 ――――――――――――――――――――――

「……さぁ、幸せを分けて貰ったし、こっちはまた忙殺されるな。……サダノブ、親父さんが言う話さぁ……簡単な能力が二つを独りが持っているんじゃないか説を提案したい。極めなくても、付属して便利な能力が存在する時もある。
 僕の影に鳳、サダノブに狛犬とクロセル、佐田さんには思考読みと幻視……そう考えると、補助能力の付属は何ら特別じゃない。
 今まで能力者案件で戦ったが、一つだけと言うのは少なくて、力が強大だったりするんだ。

 例えば体の一部、爪はただの追跡と運搬を担っている。
 そして犯人からターゲットを見える様にもしているから追ってくるスピードも確実性もあって当たり前なんだ。

 それに簡単な幻視能力を乗せただけだ。まんまと引っ掛かった。コイツは探すのが厄介だ。この件は一度保留とする。特にまだ被害はないし、僕を狙っているならまた来る。せめて年明けにして欲しいものだなっ。」
 と、黒影は既に犯人のほぼ全ての能力を把握して、緊急ではないと後回しにした。

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🔸次の↓「黒影紳士kk」season4-5幕 第五章へ↓(此処からお急ぎ引っ越しの為、校正後日ゆっくりにつき、⚠️誤字脱字オンパレード注意報発令中ですが、この著者読み返さないで筆走らす癖が御座います。気の所為だと思って、面白い間違いなら笑って過ぎて下さい。皆んなそうします。そう言う微笑ましさで出来ている物語で御座います^ ^)

お賽銭箱と言う名の実は骸骨の手が出てくるびっくり箱。 著者の執筆の酒代か当てになる。若しくは珈琲代。 なんてなぁ〜要らないよ。大事なお金なんだ。自分の為に投資しなね。 今を良くする為、未来を良くする為に…てな。 如何してもなら、薔薇買って写メって皆で癒されるかな。