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人間は作品だと思ったあの日から

人間は作品だという考えを持ったとき、私は17歳だった。
考え事をするために、私はよく新宿東口の広場に行っていた。ちょうど人が待ち合わせなんかをするスポット。地元だとどうも落ち着かなくて、わざわざひと駅電車に乗って新宿に行った。このためだけに新宿に行くっていうも不思議だけれど、それだけ地元の街の中では一人になれる場所がないように感じていた。それと、新宿のあの汚さと何かしらの欲を満たすために来た人々の雰囲気がザラザラと心地良かった。地元は新宿をすごく小さくした感じで、夜になると酔っ払いや喧嘩だらけなんだけれど、新宿に行くと地元を大きな世界にした場所という感覚が広がって、それが社会というものを想像するのにちょうど良かったんだと思う。とにかく私は新宿で、一人でぼーっと考え事をする高校生だった。

その東口の広場で、じっと人々を見ながら自分の将来を考えていた。そろそろ親友から連絡が来てしまう、それまでの時間しか自分だけの時間はない。そういう集中力の中で、うじゃうじゃいる人々を見つめていたら、その人間たちが急に固まった。動かないオブジェのようになってしまって、私は人間たちを観察した。この一体一体に人生があってストーリーがあって、必死に生きている人も、何も思わず生きている人も、もうすぐ死んでしまう人もいて、その人生がストーリーがつまらないものであるわけなんかなくて、人が生きるってのは複雑で、誰かと誰かのストーリーの果ての存在で、各々が抱えている背景っていうのは生きた証で、苦しみも喜びも作品としての自己であって、人生っていうのはこうやって一人一人が自分という作品を作っているってことなんだって、そう一気に心が答えを出した。

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